新説魔法少女

(執筆:2024/02/23~2/27)

製作

信じた馬鹿が俺だった。
(SRPGゲームを中心に出している、同人(恐らく個人)サークル。)

属性

発売時期:2018年2月
ジャンル:SRPG
用途:ゲーム、読み物
舞台:現代の日本の街
顕著な性属性:露出の多いコスチューム
プレイのきっかけ:当サイト訪問者のお一人に紹介していただいて。(プレイ前の期待得点…6点)
プレイ進捗状況:一通りエンディングまで(難易度リアルのみクリア)

基本情報

本作「新説魔法少女」(2018年公開)は、「魔法少女」(2012年公開)のリメイク作品です。
いずれもフリーゲームであり、現在も入手可能です。
加えて、本作をベースとした「新説魔法少女+」(2019年発売)という有料版もDLsiteにて販売されています。「+」は、本作に加えて外伝がプレイできるという部分のみが異なります。外伝からでもプレイできるため、本作プレイ後に「+」を買うということもできます。

テキスト:5

あらすじ: 不器用で真っ直ぐ過ぎる上に暗いため、孤立した学校生活を過ごす中学2年生の「千代子」と、そんな千代子の幼馴染で唯一の友達、そして大親友の「遥」。
ある日千代子と遥は、猫型宇宙人「フィー」から、この街を襲うモンスターからこの街を守るため、脊髄に人体組成改造の注射を打ち「マジカロイド」と呼ばれる超能力者になってくれと頼まれる。モンスター達(「バイオモンスター」と呼ばれる)は、人間とは比較にならないほどの肉体性能と超高速移動能力(人間には目視もできない)を持つのだが、このマジカロイドもそれと同等以上の力を持つため、バイオモンスターへのほぼ唯一の対抗策となる。
ただし、後から後から大量に出現するバイオモンスターに対抗するためには、マジカロイドも数を揃えなくては勝てない。
こうして千代子と遥は、自分達の街を守るため、マジカロイドとして戦いながら、他のマジカロイド候補者達を探すことになるのだった。

とにかく、少女達を主人公としたシリアスでシビアでストレートで王道なシナリオ展開が繰り広げられますので、そういうのがお好みの人には十分ご満足いただけるシナリオだと思います。

「魔法少女」という名ではあるのですが、その名に反して割とSFです。SFではあるのですが、マジカロイドとして適合する者がほぼ思春期頃の少女達ばかりのため、どんどん増えてくる仲間達もほとんどが女子中学生、女子高生、女子小学生です。ですので、SFのマニアックな用語がバンバン飛び交うわけではなく、これまで普通に暮らしてきた女子小~高校生が、突如「マジカロイド」という超人戦士となり戦いに巻き込まれる、という、少女版戦隊モノの色合いを含むのですが、なにせ基本的に渋々この「マジカロイド」になって化物と戦っているわけなので、年端も行かぬ少女達が理不尽に翻弄され傷つき恐怖する様子も堪能・・・もとい、少なからず描かれます。

本作はSRPGゲームパートがメインなのですが、そのゲームパートにドラマチックな彩りを与え、ゲームパートの魅力とそれをプレイする気をグッと引き上げてくれるシナリオが絶妙なのもまた、本作の大きな特徴です。
序中盤はまだそれほどでもないですが、段々とシナリオもグッと進み始めます。そういうマクロ視点でも魅力的ですが、エピソード一つ一つで少しずつ展開されるシナリオを切り取ってみても、よくできています。

深い世界観であるとかメッセージ性などというのは無いですし、シナリオ単体で手放しで絶賛できるというほどではないにせよ、シナリオに没頭してしまうことも何度もあるでしょうし、本作の魅力を語る上でテキストが果たしている役割は極めて大きいです。というより、この後でも繰り返し述べますが、シナリオ・キャラ・ゲーム性の相乗効果が凄い。


ゲーム性:7

ターン制で、毎ターン自陣営のユニットの行動を一つ一つ指定したらその通りに動くという、オーソドックスでトラディショナルな2DのSRPGです。
本作には、2種類の属性があります。1つ目は、「魔法少女」というファンタジックなタイトルに則った、「闇」「光」「炎」「風」「剣」「水」といった属性で、これは各マジカロイドにつき原則一つです。例えば千代子は「闇」のマジカロイド、遥は「光」のマジカロイドというように。
しかしこれらは、その属性マジカロイドが使える技の大雑把な傾向が掴めるだけで、ゲームパートで重要になるのは、各マジカロイドの使える技の属性、そして各マジカロイド(ユニット)の弱点属性です。これが、「物理」「内部損傷」「化学損傷」「冷気損傷」「熱損傷」の5属性で、各攻撃と被攻撃ユニットの属性がマッチしていたらダメージ増加(耐性持ちには減少)という仕様です。

ユニットロストが無い仕様であるため、ゲームーパートでいくら味方ユニットが撃墜されても「死亡」ではなく「戦闘不能」扱いとなり、次ステージ以降であればまたペナルティ無しに普通に使えます。
そう聞くとヌルゲーのような印象もあるやも知れませんが、そこはかなり絶妙な難易度で、むしろ割とシビアです。というのも、本SRPG、通常攻撃(格闘)で与えられるダメージは知れたもので、しかも攻撃に対しては原則、敵からの反撃を受けます。
しかし、MP回復手段は無く、HP回復にも貴重なMPやアイテム・行動を消費します。
よって、原則、MPを消費するスキルを有効駆使して、極力反撃を受けない(きっちり撃破する)ようなユニット・スキル運用が求められます。MP管理が本作ゲームパートでは極めて重要になります。単にMP節約すればいいわけではなく、使い所を見極めて有効なスキルを集中投入していくことが重要なわけです。
味方ユニットを失うということは、そのステージ自体がそれだけ難化し、クリアがそれだけ遠のくということなのです。

きちんとプレイしていれば「あ、これ詰んだわ」みたいな状況にはそうそうならないでしょうが、よほど緻密に考えて動いてでもいない限り、1ターンを何度もやり直すなんてことはしょっちゅう生じるでしょう。私は2,3回、「これは本気でクリアが危ぶまれるのでは」と絶望感数歩手前の危機感に襲われました。

で、優れたゲームというのはたいていそうでしょうが、そのゲームパートでの難易度が、シナリオと絶妙にマッチしているのですよね。
SRPGが好きな人にはもちろんお勧めなのですが、そうでない人も、SRPGが嫌いという人でなければ楽しめるかとは思います。
ただ、ボリュームがすごいので、うんざりすることは覚悟した方がいいです。じっくり腰を据えてかからないと、プレイ放棄必至です。
とは言え、ステージごとに難易度を「ドラマ」「リアル」の2段階変えられますので、SRPGは苦手だけどシナリオを楽しみたいという人にもプレイはできるようになっています。(ゲームパート自体がカットされるわけではないので、プレイ自体は必要です。)

ゲームという面で見るなら、やはりキャラ(ユニット)が育って強くなっていくのが嬉しいしその強いキャラを使うのがSRPGでの楽しみだと思うし、本作もまぁご多分に漏れないのですが、1点の強みと2点の弱みがあります。
まず強みですが、シナリオ進行とゲームパートのキャラ能力が割と連動する(例えばシナリオでの重要なイベントを通してゲームパートで特定ユニットが強力な技を覚える等)ため、シナリオの良さとゲームパートの面白さの相乗効果が表れている。これは良作SRPGなら本作に限らないかと思います。
弱みの部分は、まず本作は、特定ユニットだけを集中的に育成しているとどんどん攻略が行き詰まると思います。できるだけ全キャラをむらなく育成していくのが正道(公式サイトでもそう書かれています)。であるため、育成面ではあまりユーザーの個性は出にくい。(後述するようにある程度は出せるようになったのですが。)
もう一つは、たとえそれでユニットが大幅強化されても(あるいは強力な味方ユニットが投入されても)、それでヌルゲーになったり無双できたりしません。敵もそれに見合うだけの強化がされてくることが多いので。
つまり本作は、接待ゲーでプレイヤーを気持ちよくさせるゲームではなく、常に割と厳しい難易度の中でのシビアな判断を迫り続けてくるという方向性のゲームです。
「弱み」とは書きましたが、実際のところこれらの特徴がマイナスに働くかプラスに働くかはプレイヤー次第です。(例えば私は、全キャラ満遍なくレベル上げる戦略が性に合っているので、本作はピタリでした。)
つまり育成要素はあくまで添え物であり、やはり本作はど真ん中のSRPGなのです。

実用性:3

本作は、無印「魔法少女」から立ち絵の美麗さが大幅にグレードアップしています。とにかく全ヒロイン(魔法少女達)の戦闘コスチュームがピッチリスーツで露出大なので大変なのですが、その上本作では、ゲームパートで瀕死状態(HPが0近く)になるとそのコスチュームもズタボロになり少女達の表情も固く強張ったものに変わるという至れり尽くせり仕様(?)。
けれど別に18禁じゃないですからね。(DLsiteではR-15指定です。)
(元々半ば脱いでるけど、)脱ぎません。そもそも作中で年齢明記されてるのを脱がしたら、さすがに言い逃れできないでしょう。

ただその・・・
・・・「その他」項にて後述します。

音楽:8

全曲フリー配布されているBGM。
実は私は無印「魔法少女」BGMとして採用されていたある曲が大好きだったのですが(当サイト2024/01/08日記参照)、無印版と本作とでは、BGMも大幅に差し替えられています。
正直、フリー楽曲といえば煉獄庭園で時間が止まっている私なのですが、昨今のフリーBGMってこんなにクオリティ高いのもあるのねとびっくり。良質な楽曲陣が、特にゲームパートを大いに盛り上げてくれます。
お気に入りBGMがだいぶ増えた。特にまんぼう二等兵氏・ISAo氏の楽曲陣は凄いです。

ボーカル曲:無

キャラ:6

本作、エロゲのような男主人公はいません。一応千代子が主人公ですが、群像劇に近いです。
そして本作、「群像劇」と呼ぶように、登場キャラが多いのです。主要キャラ(ユニット)30人以上。
けれどそれぞれ個性強めに描かれているため、これだけいるにも関わらず「これ誰だっけ」ってことにはあまりなりません。(これには、ゲームパートでのユニット個性・性能も随分寄与していると思います。)
本作、シナリオも良いのですが、キャラゲーとしてよく出来ていると思います。

シナリオ項で述べたように、少女達は別に進んで正義の味方をやっているわけではなく、マジカロイドという超人になって戦うことをそれぞれの状況に流されて強いられ渋々戦っている(本当は怖くて痛い思いをして戦いたくなんかない)というのが大半ですし、何よりそれぞれ個性豊かでありながらもその大半は精神的に成熟しているわけでもなく正義感たっぷりなわけでもないため、不平も弱音もしょっちゅう漏らすし、喧嘩になったりもするし、恐ろしい目にあったり死にそうになったりすると、もうバイオモンスターが来襲してきてもマジカロイドに変身すらせず現場にも駆けつけず戦闘自体をボイコットするのもザラなのです。
そのように、割と人間臭さもあるキャラ達ですので、特に序盤は多くのキャラに小憎たらしさを感じるのではないでしょうか。その印象も、中盤以降は段々と変わってくるでしょうが。
一方で、美少女ものとしてキャラ立ちはしているし、また、そんな少女達の掛け合いは基本的に明るくコミカル、ユーモアラスなものであり、緩急がきっちり付いているのが本作が高く評価される所以の一つでしょう。くすりと笑ってしまうような掛け合いがシナリオ随所に散りばめられており、それが重い作風を適度に軽くし、またキャラ達の魅力を引き上げています。この辺り、やはり作者の手腕が光っていると思いますね。

適度にリアリティがあり、適度に創作キャラらしいキャラ達が、シナリオ進行とともに様々な姿を見せてくれます。これが、本作への印象をグッと引き上げていると思います。ゲームパートを通して愛着も湧いてきますので、お気に入りのキャラもきっとできると思います。

声:無

声は無く、いかにもフリー素材(というか往年のツクール素材)というチープなSEのみ。ここだけは無印から変わってないんですねぇ…。

時間:6

3ヶ月間、平均1時間弱くらいずつやってようやくクリアできたので、私は80時間くらいやっていたと思う。
一本道で、やりこみ要素は特に無し。
なお、未プレイですが有料版ではこれに加えて外伝がこれに近いくらいのボリュームあるとかなんとか。

その他

システム:無印から、大幅に改良されて遊びやすくなっています。
というか、プレイ感は半ば別ゲー。システムはほぼ一緒のはずなんですが、なんか別ゲー。多分、一番はキャラ性能が調整されたからだと思う。二番に、キャラのプレイヤーオリジナル育成要素が追加されたから。ゲームパートで稼げるポイントを消費して、ステータス強化したいキャラを強化できるのです。そしてその過程で、時々技も覚えるのです。これだけやったら、そりゃ同じゲームでもプレイ感はだいぶ異なるわ。
作品通して取り立てて粗もなかったと思うのですが、一点だけ難を挙げさせていただくと、エンディングの最後の最後でCG1枚が無音で表示されて終わりというのは、ちょっといただけなかった。せめてBGM入れてほしかったし、CGにはちゃんと「THE END」って書いておいてほしかった。「あら?バグか?」と思ってロードして再確認してしまった。

演出:上述しましたが、瀕死キャラの立ち絵が露出さらに増して顔が恐怖に引きつってるのはさすがに笑った。王道ぶってるけど隠しきれない製作者の嗜好よ。いや、良い演出です。素晴らしいと言って良い。
(関係ないですけど本作キャラ達に愛着あるなら作者のPIXIV FANBOXは絶対に見てはいけないし、逆に本作が18禁でないことだけが惜しい、もっと少女達がズタボロになってほしいというサディスティックな人はぜひご確認ください。プレイ後の余韻に浸りながらこのレビュー読んでいる人は、少なくとも今だけは見るな。後日にしろ。)

お勧め度:8

なにせ、フリーゲームですから!!フリーゲームほどお勧めの敷居が低いものはない。
しかも、お布施もできますから!!生真面目なプレイヤーさんには、「フリゲだけど、機能強化版の有料版もあるよ」という選択肢はありがたい。だって、「まずは無料版をプレイして、気に入ったら有料版を買う」なんてことだってできるんですよ。
その上、買い切りですから!!ソシャゲやスパチャのように、お布施と称する無限集金機関となっていたりしません。廉価買い切り。DLsiteで定価1320円(2024年現在)、DLsiteってことは当然クーポン対象ですし、しばしばセールの対象にもなっています。安い!

とにかく、シリアスでシビアで王道なシナリオがお好みの人には、どストライクでしょうから、ぜひ一度プレイいただきたい。
逆に、そういうのはちょっと求めてないんだよという人には本作の魅力はかえって欠点と映りかねないので、そういうのに食指が動くまで普通にスルーで良いと思います。
あと、「ゲーム性」項でも述べたとおり、本作はど真ん中のSRPGですので、SRPGを多少なりとも楽しめること、これは最低条件です。


気に入り度:7

思いっきり私好みなんですよね、このシリアスシナリオ。ゲームパートを半ば義務感でプレイしていたというのが本音ですのでお勧め度に比べると1点低いですが、十分に気に入っております。
なんか、ゲームパートプレイ中「楽しいぃぃ~~!!」って感じじゃないんですよ。少しでもぬるい立ち回りしていたら速攻で敵ユニット達にボックスされますので、毎ターン毎ターンベストな立ち回りのため下手したら仕事の時より頭使って、疲れるんですよ。ステージクリア後も「や・・・やっと今回の戦闘も乗り切ったぜ・・・(ハァハァ)」(これが延々続く)って感じなんですよ。
でもまぁ、SRPGってそういうゲームだと思うんですよね。なのでこれは単純に私が老化でゲームを十分に楽しめないっていう私個人の問題であり、そんな私でもシナリオとキャラの魅力のおかげで必死こいて執念でエンディングまで迎えられたという作品です。
実は私は有料版(新説魔法少女+)買ってプレイしているのでいつでも外伝もプレイできるのですが、ちょ、ちょっと当分はいいかな・・・。いつかまたプレイして外伝単体でレビューできたらいいな・・・という心境。

もちろん、そんな苦行のような想いばかり感じていたわけではなく、やっぱり、幾多の戦闘をくぐり抜けていくことでキャラ達が育っていき各々個性的で強力な技が使えるようになっていくのがとても気持ち良かったですね。シナリオも相まって、どのキャラ達へも否応なしに愛着が湧いてくる、それが本作の大きな魅力でしょう。
本作全体通してプレイ中に感じていた楽しさを踏まえるとこの「気に入り度」も点数が伸び悩みますが、正直、終盤以降のキャラ達への愛着とかクリアした後の余韻とか、並々じゃないですよ。
それもこれも、シナリオ・キャラ・ゲーム性の相乗効果で見事にガツンとやられたからなのですが・・・

・・・エロゲ業界が「紙芝居から何も進歩がない」と廃れた一因には、ゲームとしてシナリオ・キャラ・ゲーム性の相乗効果が発揮されるような作品の乏しさもあるのかも知れない、などとふと考えてしまいました。




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