(執筆:2024/12/20)
D.O.
注:「家族計画」は2001年発売、音声・CG追加版の「家族計画~絆箱~」は2002年発売で、2005年発売で本レビュー対象である「家族計画~追憶~」は「絆箱」の廉価版で、ゲーム内容自体は「絆箱」と同じだそうです。
発売時期:2002年
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:2000年頃の日本
顕著な性属性:無
プレイのきっかけ:往年の名作と名高く長らく気にはなっていたから。(プレイ前の期待得点…7点)
プレイ進捗状況:全ルート終わり
あらすじ:
中国料理店でバイトしつつ一人暮らしをしていた(主人公)司は、ある夜、母に会うため日本にやってきて、その密航手引をしたマフィアから逃げてきた春花を匿うことに。またそのすぐ後、事業に失敗し着の身着のまま彷徨っていた元ビジネスマン寛も司のアパートに転がり込んでくる。
しかしマフィアに狙われ、3人はアパートを追われ住む場所も無くなる。その後、同じく身寄りのないヒロイン達と出会い、ある一軒家に皆で居候することにする。寛はこれを「家族計画」と命名し、司達は偽装の家族としてその家での共同生活を始めるのだが・・・。
とにかく中盤までがタルい。上のあらすじ読むとそれなりに波乱万丈な感じがしますが、その後の共同生活パートがタルい。何度もプレイを投げ出しそうになりました。
これは、私には間延びしていると感じられるシナリオもエロゲでは至って普通ですし、本作発売の2002年当時はまだ「こんなにたっぷり読めてお得!」と捉えられていた節すらあります。(私の記憶する限り、LeafVisual Novel三部作以前と以後でシナリオ総量は全然違う)
加えて、当時ならバカウケだったギャグもさすがに20年以上経つと鮮度は落ちますから(*特にライターの山田一は割と時事ネタを盛り込んでくる)、現在プレイすると厳しいギャグも目に付く。
ともあれ、中盤までは正直プレイも進みませんでした。山田一の才気も全く感じられなかった。
その後各ヒロインルートへと緩やかに分岐していくのですが、化けるのはルート分岐後。特に終盤。
本作は、とにかく、面白さが等加速度的に上昇するのです。
しかも、どのルートも割と粒ぞろい。個人的には一応「正史」と呼べるルート(そのルートの続編が「そしてまた家族計画を」という作品で発売される)が一番評価低くて本サイト基準で6点、残りは全部7~8点という感でした。
涙で前が見えないというほどの感動があるわけではないですが、感動しますね。
これといったメッセージ性があるわけではないですが、シナリオの裏に込められたライターの想いはほのかに、それでいてはっきりと伝わってきます。
後半は、軽さといい重さといい、これぞエロゲシナリオだなぁというエンターテイメント性。読ませるシナリオ、先が気になる急展開、時として鬱展開、そして感動のフィナーレ。
2024年にプレイしても、普通に大満足でした。
「で、どのヒロインルート行きますか?」って明白に聞いてくるような、ユーザーフレンドリーだろうけど無味乾燥なADVではなく、割とそれなりにしっかりと選択させてくるADVゲームです。
それでいて難易度もそう高くないので、それほどストレスも無いかと思います。
とは言え、選択肢が多くどの選択肢がルート分岐に影響したのか分かりづらくはあるので、良くも悪くも「ADVゲーム」だなっていう感かと。
うーん、一応エロいんですよ。エロいんですけど、2001年発売という時代を感じさせる、シーンの短さ。何よりも、シーン数の少なさ。
「最低限のエロさえあれば成人向け良質な18禁ゲームとして成立するんだ!」っていう当時の興奮を思い出してしまうようなエロの少なさ。
ただ、少ないし短いけれど、どのシーンもしっかりシナリオに噛ませてくるし、読ませるHシーン。このあたりは、さすが山田一だなと改めて感じさせられました。
ED曲「philosophy」も当時人気だったようですが、やっぱり本作の音楽を語るならOP曲にして主題歌の「同じ空の下で」に尽きると個人的には思います。
シナリオの一番の盛り上がりではこの主題歌のノンボーカルバージョンが流れるんだから、もはや何をか言わん。
このあたりも、ザ・オールドトラディショナルエロゲって感じですね。(あとI've sound黄金期の始まりですよね。)
とにかく耳に残る系の「同じ空の下で」の印象が強すぎるのもあって、その他のBGMは良くも悪くも全然印象に残っていません。
ボーカル曲:2曲
主人公:司(名前変更不可),典型的な、一匹狼系エロゲ主人公。他者との深い関わりを避けて生きているが実は情に厚く、ヒロイン達が司を慕って寄ってくる謎の魅力がある系の。学園生ではなく、アルバイトで生計立てているフリーターです。相互扶助計画「家族計画」における長男役。
春花:母に会うため日本にやってきた中国人少女。司に日本語を教わる。大陸系らしい独特のペースを感じさせつつもいつも笑顔で人懐っこい。相互扶助計画「家族計画」における三女役。
茉莉:作中では頑として明言を避けているものの、まぁ一番「歳が若い」。健気系・犬系で基本ですます口調のまっすぐヒロイン。相互扶助計画「家族計画」におけ四女役。
準:薬物の売人をやっている、司の元同級生。司と同じく人間関係を避けている。無口で眼鏡で拒食傾向。過去に司との男女関係有り。相互扶助計画「家族計画」における次女役。
真純:割と年上の、社交性は高いけれど打たれ弱く誰かに頼らずには生きられない系の、おばさん臭いお姉さん。相互扶助計画「家族計画」における母親役。
青葉:相互扶助計画「家族計画」の高屋敷家の一応の持ち主。司達とは比較にならないくらいの人嫌い・関係拒絶・冷徹冷酷・唯我独尊系ヒロイン。長女役。
どのヒロインも、良いですよ。
この「キャラ」項目の点数って、要は「キャラ萌え」の強さなんですが、本作は、なかなか良い。実に良い。粒ぞろいと言って良い。
私この項目でそんなに高得点付けないんですが、本作ヒロイン達は、胸に来るものがある。誰がというとネタバレになるから避けますが、個人的には特に1人かなぁ。残りも良いんですが。
あと、ヒロインでも主人公でもありませんが、家族計画の立案者であり家族計画における父親役の「寛」というぶっ飛んだ父親役が主要キャラとしています。
このキャラも、良い。
「絆箱」(追憶)ではフルボイスです。無印は知らん。
これは、フルボイスの価値有りですね。
特に寛ですね。
寛ですね。ええ。
エロゲ業界ではすっかりお馴染みのあの御方ですが、今回も、実に良い仕事。プロは違うわ。
他のヒロイン達についても、不満は微塵もなかった。絶賛というわけではないけれど普通に完璧。
当時のシナリオ系エロゲとしては割と長めでは。でも正直現代の感覚では中盤までが冗長すぎると思う。
システム:共通ルートから徐々に各ヒロインルートのシナリオが混じる構成になっているのですが、それが制作陣のキャパをちょっと超えたんですよね。一部でシナリオの辻褄が合わなくなっている。例えば、ある件で非常に塞ぎ込んでいたはずのヒロインが次のエピソードでは普通に明るく振る舞っていたり。
あと、ほぼ同じ共通シナリオでありながらヒロインルートごとに少しずつ展開が違うから、ほぼ全く同じシナリオを未読シナリオとして読まないといけなかったり。
そういう細かい粗は幾つかありました。
その他は特に語ることもなし。セーブポイントも多いです。
本作は、重厚なメッセージ性や重度の鬱・泣き展開が埋まっているわけではなく、それでいて(後半は)夢中でプレイできる良質シナリオが待っている、ライトヒューマンドラマという感です。
(なので、田中ロミオのガツンとくる重いシナリオを期待するのは止めたほうがいいです)
良い意味でエロゲらしい、それでいて部分部分ではきっちり王道を外してもきて個性も発揮している、安定感ある作品です。後半は。
問題は前半で、繰り返しになりますけど2001年発売ということでギャグが古い上に些か冗長なんですね。私は何度もプレイ挫折しかけた。
なので、後半まで辿り着ければ手放しでお勧めできる良作。前後半含めるなら、「前半は無心で進めて!」とお願いしながら勧められる条件付き良作というところですね。
少年ジャンプの「鬼滅の刃」って漫画(ないしそのアニメ)は、特段明確なメッセージ性があるわけではないただの王道ジャンプ系バトルものなのだけど、作者の思想や信条、そしてメッセージというのが大変よく伝わってくるし、それが少なくとも私には大変心地よいのです。ジャンプお馴染みのキャラ人気投票で作者先生に少なかぬ票が入るのも無理はない。
本作も、そういうところがある。直接的メッセージ性こそないものの、よく伝わってくるものがあるのです。
前半は本当にきつくて山田一に対する信頼も地に落ちていたのですが、後半まで進めてようやく、やっぱり凡百ライターとは一味も二味も違う、エロゲ業界を代表するライターの一人だなと感じさせられました。
また、2001年のエロゲを2024年にプレイしても(後半は)十分に楽しめたことは嬉しい驚きでした。
(この作品については、簡易攻略、ネタバレ有りプレイ後用レビューページにても触れております。)
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