家族計画~追憶~(絆箱)

(執筆:2024/11/16-12/16)


攻略順に寸感をば。

春花

意外や意外、キャラがなんだか半分くらいは地に足着いてる。食いしん坊とかぽわっとしているとか子供っぽくて犬のように懐いてくるとか空腹になると凶暴化するとか、ベタでいかにも安い創作キャラっぽい設定の一方で、いつも浮かべている笑顔は、笑顔というペルソナを被り続けられる強さの裏返しで、本当は会ったこともない媽媽(マーマ)に焦がれている一方で媽媽に振り向いてもらえない不安に常に囚われていて(しばしば「媽媽」と呟きながら悪夢を見る描写が根拠)、実は打算的でもあり、他者の顔色もきっちり把握しており、自分には体でお返しすることしかできないと認識しており男の性処理だってやってしまう。
終盤になると、この「笑顔」の裏に春花の多彩な感情と人格が読み取れるようになるのが、このルートの見どころだなと思います。
特に、マフィアの抗争が本格化しつつある裏で、春花の実の母を巡っての春花の行動には、一つ一つ胸を突くものがありました。
あれほど焦がれていた母を、ただそっと遠くから見守るだけという強さを見せつつも、誕生日プレゼントだけでも渡したいという、いわば言い訳を理由に、結果としてそれを何度も繰り返してしまう。
司の計らいにより手料理を食べさせるところも、自分が名乗り出ることが母を苦しめるだけだと分かっているから決して一線は越えないものの、母からの温かい(しかし赤の他人に対する)声掛けに、思い溢れる感情は止められない。
そしてそれが、強制送還時の司への態度への伏線として現れる巧みさ。
ここでは春花は、ただ司に笑顔を浮かべ「そんなに好きでもなかった」といった言葉を投げかけるだけなのですよね。しかし、既に春花の二面性を最も身近で見てきた司(そしてプレイヤー)には、バレバレすぎる嘘なのです。


話は変わって、これは共通ルートなのではないかと思いますが、1ルート目だし、やっぱり原因は春花にあるとも言えるのでここで書きますが、高屋敷家が本格的にマフィアの暴力に狙われるようになり、寛が家族計画の終了を宣言した時に司が荒れ狂ったところ、すごく良かったですね。
親に捨てられた司がこれ以上傷つかないようにと纏ってきた甲冑が、家族計画での偽装家族生活を通して他者との絆が芽生え、それと共に甲冑が剥がれ、ようやく得かけた安息と絆が、突如また喪われるという残酷な様子が、とても分かりやすく描かれていますね。
まさにここに本作「家族計画」で描きたいであろう、狭い意味ならば「家族」、広い意味ならば「絆」という主題が浮き上がっています。
本ルートでは、中でも、春花との絆を最も形成した司は、春花との絆のため、遥々中国まで旅立って春花を迎えに行きフィニッシュ。
このエンディングだけは、あと一歩踏み込めただろうと思うんですよね。
司が、ほとんどあてもない中で広大な中国へと春花を探しに行くという決断は、実は物語開始直前の春花とシンクロするんです。春花もまた、ただひと目母に会いたいという想いだけで、ほとんど何のあてもない中で日本へと渡ってきたのですから。
なんかエンディングでは唐突に司が春花との再会を果たしていますが、ここはもうちょっとねちっこくやってくれても良かったなぁと思わなくはない。

しかし春花ルート(実の母の居所が判明して以降をそう呼んでいます)。実に良かった。本サイト基準で8点。

青葉

準ルートにいくつもりだったのだけど、気がつけば青葉に。理由は分かっている。青葉のフラグを全部立てたから。

で、青葉ですが、個人的にはこの人あまり好きではないですね。多分少なからずの人がそうなんじゃないかと思いますが。
ただ、ルートを進めるにつれ明らかになってきた青葉の過去・・・特に、祖父にすら無視されていたという悲惨な生い立ちには、さすがに同情。
現代社会に生きる我々には想像しづらいですが、中世の武家における父と子の関係(全てではないでしょうが)なんかが、割と青葉の生い立ちとしては近いものがあるんじゃないかと思います。武家よりも悲惨なのは、父母ではなく父が2人いるような環境だったようであることですが。

なんというか、青葉ルートは、あくまで私判定ですが、ぎりぎりのラインでリアリティが保たれているんですよね。青葉の人格、その生い立ち、そして過去の改竄。どれにも、明らかな粗が見つけられない。これも山田一の手腕だなぁと思います。

そしてこのルートは、司自身の過去にも迫ります。やはり、終盤戦に突入してから面白くなってくる。
そして、青葉の祖父が、実の息子に裏切られたことからの恐れと、自分の余命の短さ故に、青葉を受け入れられず、また青葉に表立った愛情を注げなかったと見抜く司。いやぁ上手いなぁ。答えを知ってしまえばベタなんだけど、私、情けないことにこの展開全く読めませんでしたわ。
しみじみと読み耽ってしまいましたね。
青葉が、そんな祖父の秘めたる想いを聞かされ心外だというように「私、一度だってお祖父様を裏切ろうなんてっ…!」と口走るのが、とても良い。
青葉の祖父も自分達と同じだったと司が言ったように、この祖父の態度は、まさにこれまでこの家族計画で青葉自身が家族達に取ってきた態度そのものなのです。
茉莉は青葉を裏切ろうなんて思ったことがあったでしょうか?
春香は? 青葉に声をかけてくれていた、他の皆は?
直接語られることはないけれど、自身が「家族」達にした仕打ちと同じことを、祖父もまたしていただけ、弱さ故にせざるを得なかっただけだということを、青葉は薄々悟ったのでしょう。
青葉と祖父の関係と写し鏡のように、司が、両親に捨てられたと思い込んでいたけれど実はそうでなかったという司の吐露も、青葉が、一度は完全に諦めていた「祖父からの愛情」という幻想をもう一度信じる後押しとなったでしょう。
青葉にとって、自身を取り巻く世界の見え方は本ルートで二転したわけです。

少し進んで、司に生涯一緒にいることを誓わせてからの性交。腕の良いライターはHシーンも読ませるというのはどこかでも書きましたけど、本Hシーンもそんな感じ。
なんだろう、優れたシナリオというのは、キャラが架空のキャラに過ぎないと分かっているにも関わらずそのキャラの裏の心情が手に取るように分かってしまう(のだけど当然ながら架空のキャラだからそれは錯覚に過ぎない)という体験をさせるんだなぁなどと考えていました。これまでの司の言動を見ていれば最初からほぼ答えは分かってはいたでしょうが、それでも、司が自分と生涯一緒にいることを迷いなく誓った時の青葉の心の内を想像すればもう!
それを踏まえてのHシーンですから、そりゃこちらも食い入るようにテキストを追うわ。
それでいて、プレイヤーからしたら待望のご褒美Hでもあるので、割とエロい。
行為後、

青葉「実は私、とても嫉妬深いわよ」
司「……いや、わかるわかる」

うん、手に取るように分かる。
そして今ようやく気づいたわ。
青葉って、オールド・トラディショナルなツンデレキャラだったんだ・・・。
・・・いや、少しヤンデレも入ってるから、ドストレートなツンデレでもないか・・・。

司達がマフィアの襲撃から身を隠すため屋根裏に避難したらそこには茉莉が。(これは割と予想通り。途中から存在忘れてたけど)
けれどその後、「家族」全員集合はさすがに予想外。
私、この家計のFD設定的にも茉莉のキャラ的にも、茉莉ルートが本作的TRUEルートだって思ってプレイしていますが、この青葉ルートも、きっちりTRUEルートの風格を持ってるなぁ。青葉祖父手紙からの最後の締めはあっさりでしたが。
いやぁ面白かったな。本サイト基準で8点。
本作、個別ルートに入った途端に面白さ跳ね上がるなぁ。

真純

準ルートにいくつもりだったのだけど、結果として真純ルートに。
・・・準ルートだけ、入るの難しくない・・・?お金すぐ返したら駄目なの?電話があったこと伝えたら駄目なの?

真純さん、歳と見た目の割に喋り方がおばさんっぽいんだよなぁという感想を持つのは私が中年だからか。
それと少し関連するけど真純さん、お酒とか飲む系の夜の店で働いたら普通に大人気のエースになると思う。
まぁつまり、この家族計画メンバーの中では社交性の高さが飛び抜けていると。社"会"性には若干難ありかもですが、それは他のメンバーも負けてないんで。
茉莉は、良い子ですが、なんだろう、その社会性の高さの後ろにある必死感と余裕の無さ感と空元気感と不幸属性がモロ見えだっていう。

添田「俺はこの一週間、ほとんど毎日真純を抱いたぜ」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!←懐かしい
改めて、キター 案の定、NTRルートだったー!!
いやぁすごいな、きっちりNTRシナリオだったな! 司が真純さんに入れ込んでないからNTR通の皆さんにとっては全然NTRとしてなっちゃいないかも知れませんが、一部のマニアの意見ばかり聞いていると業界が滅びますからね。きっちりプレイヤー的にNTRルートでしたよこれは。
何が良いって、NTRと予告無しでその気配だけ匂わせておきながらのNTR!
これですよ。DLsiteとかで「NTR」とかでタグ検索して高評価作品買い漁るタイプのプレイイングでは決して味わえないNTRがここにあるんです!

いやぁ、つくづく、山田一やるなぁ。NTRが流行ったの、本作発売からから確か10年以上は後でしょ。NTRもあるけど、真純ルートではきっちりアダルティなドロドロ昼ドラ系ヒューマンドラマを展開してくるあたりが、やるなぁと感心しているのです。なんか前置き長くなったけど、これ。
ただの美少女ゲーもいけるけど、返す刀でアダルティなドロドロヒューマンドラマも展開する!切れ味が光るなぁ。
まぁどれだけ光るかはこの後のプレイをお楽しみに、と。

真純の現彼である添田(もうちょっとイケメンでオラついててほしかったけど、まぁ一応ギリギリオラオラクズ系彼氏)を無言でぶん殴って追い払った司に、

寛「君に、彼女が守れるのか?」
(中略)
司「俺はただ見過ごせないから、だから、あいつのやり方とか考え方とか……」
寛「だとしても、真純君が決めるべきことだ」
寛「君はそれを阻害した」


正気寛格好いいw
そして、司のしどろもどろテキスト上手いなぁ山田一・・・。

で、その場に最後に残った真純と司との会話。

司「寝るなら、好きな相手と寝ろ!」
司「そうでないと……幸せになんてなれないよ」
(中略)
真純「でも好きな相手に、拒絶されたら?」
司「それは……当人同士の問題だから」
卑怯な逃げ方。
真純「相手を好きになることが、相手の負担になるとしたら?」

うまいーーー!!!
うまいうまいばっかり言ってますけど、うまいーー!!
ケツの青い若造の薄っぺらい正論と、地に足ついた現実論。
何が良いって、これはもう非モテの王道だってことなんですよね。
非モテは、誰かを好きになっても、その誰かと結ばれることはないのです。それで結ばれていたら非モテではない。だから非モテにとっては、自分が誰かを好きになるということは、相手の負担にしかならないだろうという痛烈な未来予測が常にちらついている。
それでも誰かに愛されたい。そう思ったら?
非モテの自分でも愛してくれそうな相手を探しますよね。ある者は二次元に、ある者はアイドルに、ある者は自分の理想から遥か下の、自分の周りの人間の中で自分がギリギリ妥協できる、そして自分にも好意を向けてくれそうな人間に。

真純にとってそれが添田であり、真純はエロゲなので美人で気立てもいいですが、自尊感情に乏しく自信もなく変に気を遣うあたり、リアリティたっぷりだと思いますね。
そして、そんな現実論は現実論として、司の正論はやはり現実としても正論であるのが、人生の難しさですね。

真純「誰かに、必要とされたい」
真純「それが一番、幸せでしょ?」

真純「必要とされて、わたしもその人のこと好きになって、幸せになる」

 
その相手がたとえ駄目男であっても、その必要とする言葉が空虚であっても、自尊感情が低ければその駄目さ・偽りも受け容れ、あるいては目を逸らし、相手を好きになってしまう。
残念ながら美少女ゲーなので真純も美少女ゲー基準ではおばさんでモテない世界観でしょうが、十分美人で気立てもいいですから、その辺のリアリティはあれですけど、リアルだなぁ。
いや、こういう思考回路の人、実はブサメン・ブサイクでなくて美人でも多いと睨んでいるのですよ。ただそういう美人は、その前の「モテ度選別」というプロセスがよりシビアな傾向がありそうだなくらいには思いますが。
つまり、何らかの基準により「こいつならまぁOKかも」認定が下りれば、後は完全に上記思考ですよ。たとえ駄目男であってもクズ男であっても、自分を必要としてくれる(一定水準以上の)相手だから好きになっちゃう。
リアルじゃないのは、乗り換え対象である司に、自分からそんな露骨なアプローチはせんだろうなという点ですかね。十分に色目は使ったとしても、乗り換え対象への直接的好意を含む言葉は自分からは言わないんじゃないかなと。
「待ち」ですよ。
何の語りだこれ。

などと愚にもつかないことを考えていたら家が燃え、真純が、自身が大怪我するのも厭わず司を助け、青葉は入院先で本当に一人ぼっちにになり(青葉ルート後回しにすればよかった…)、そして未だに真純に対して好意を向けることを恐れる司。しかし。

彼女が俺のために不幸になった。そう思うなら、今度は俺が彼女のために不幸になってやればいい。
けど仮にそうなったとしても、俺は不幸だとは思わないだろう。
人と繋がるというのは、そういうことだ。きっと。


山田一~~!
締めるねぇ・・・ きっちり・・・。

・・・しかしそんな綺麗事だけでなく、普通に真純の介護生活が展開されて、やっぱり山田一は一味も二味も違うなと・・・。
・・・まさか美少女ゲーで下の世話まで描写されるとは思わなんだ。性的な意味ではなく下の世話ですからね。具体的に言うなら介護対象者の排泄後の一連の作業ですからね。

そして最後。添田に対して真純は言います。

真純「もっと人と触れることを慎重に考えられる人になってよ!」

真純「真剣に真剣に考えたら……そう簡単に愛してるなんて言えない」
真純「自分に、相手を幸せにする力も資格もないって、そういう悩み方ができる人もいるんだから!」


良いなぁ…。でも辛いなぁ…。
多分だけど、エロゲなんかやっている人達にとってこの言葉は福音なのだろうけど、人類の多くは、そんな慎重にも真剣に考えず、人生を前に進めているんじゃないでしょうか。
私含め、世の中クズだらけだと思うんですよね。自己弁護のようだけど、人は皆大なり小なりクズなのだと思う。クズじゃない面も間違いなくあるのだけど。
そのクズさは、時に人生の活力となることもあるし、慎重で真剣な姿勢は、臆病の裏返しでもあれば停滞や機会損失をも容易に引き起こすと思うのです。
真純のこの言葉は、眼の前の添田ではなく司への愛を叫んでいるに過ぎないのだから、こんなこと書いてても仕方ないんですが。

そして真純とのH描写。あー惜しいなぁ…。真純の火傷痕はきっちり描いてほしかったなぁ…。ここ、本当に勿体ない…。

しかしエンディング・・・。
いや・・・ 色々ネタバレしたししかも大団円エンドだったぞ・・・?
茉莉は、両親亡くしてるのか。(これは一回も明言されていなかったので、捨て子など別の可能性も考えていた)
準と久美の養護施設の園長は他界したのか。(これ、絶対準ルートで重要なシナリオ要素でしょう)
しかも、春花ルートでも青葉ルートでもなかった、家族計画再始動の大団円エンド。
いやぁ・・・ 真純ルート、到達が早すぎたんじゃないか・・・?
制作者的には、つまり山田一的には、「・・・いや・・・普通は茉莉か春花ルート行くでしょ・・・」って感じだったのでは・・・。

色々書いたけど普通に面白かった、普通に面白かったけどまぁ7.5点ってとこですかね。
慎重に真剣に考えることと、相手に必要とされて好きになること、好きな相手と寝ること。この3つが、繋がりそうで繋がらない、ここはシナリオで押し切ったルートだと思うんですよね。
それが駄目ってわけではないし、上でも似たようなこと書いたけど人生そんなふうに、繋がりそうで繋がらないまま進めたり進めなかったりするもんだと思うし、これはこれでいいのだろうけど、でもやっぱり、こうやって作中の名言抜粋なんかやっちゃうと、ちょっともやつくのですよね。

ようやく到達した準ルート。敗因は他のヒロインの好感度上げすぎたこと。この辺はThe シナリオ系エロゲって感じですよね。要は、普通にしていたら美少女達がワサワサ寄って来て勝手に主人公の好感度上がっていくの。

で、準ルートはちょっと評価が低くなる。施設が経営難で閉鎖の憂き目というのは、恐らく現実的には相当なレアケースのようです。児童養護施設は公的な財政的保護を受けていますし、閉鎖するとしたら原因は、施設の老朽化や人員確保の困難、入所児童数減少などが主な原因となるようです。そういうケースは突発的・急激に発生するのではなく年単位で徐々に進行していくものですので、仮に閉鎖するとしても、突然閉鎖するのではなく、規模縮小であったり、他施設との統合などという手もある場合がありますし、なにより、児童相談所と連携しながら入所児童の移転先を確保しつつ計画的に進めていくというプロセスが取られるようです。
というわけで、ちょっと「経営難のため急にまとまったお金が」というのは「う~ん・・・?」となる。
それと、準達の父親も、はっきりと「義父」と書いてあればリアリティと説得力が大きかったなと。実の父から娘達への性加害も少なくないという大変残念な現実がありますが、そのケースでの母親の振る舞いが、準の語りと合致しない。母が子に嫉妬し虐待するのは、母が義父(母にとっての新しい恋人)に惚れ込んでおり、前夫との間にできた子を疎ましく感じるケースが多いと思いますので、準達のようなケースももちろんゼロではないでしょうが、物語として読むなら違和感を覚える。
ただ、司が人を思いやれる格好良い男になったというのは巧みに描写されていて、ここは良かった。
あと、家族計画終了後の家族達の描写が、これまでの中で一番濃くて丁寧だな。その描写内容での各ヒロインのネタバレ程度からも、春花の次に攻略推奨って感じですね。
家族計画終了後は、「崩壊後」っていう台無し感が実によく伝わってくる。じりじりとした気だるい日常に漂う閉塞感と絶望感。この感じも、るーすぼーいっぽい。(どこかで書いた気がするけど、るーすぼーいはこの「家族計画」に影響受けたか参考にしたかしたと思う。)
あと、家族計画終了前から準はずっと不在で、準ルートって感じじゃないなーと思っていたら、まさかの、準不在のままエンディング突入。
とんでもないな、山田一。
そうかー・・・ ヒロイン不在のヒロインルート・・・。「良い子の諸君!」って否定されそうなアイデアだけど、本当にそういうことやってしまうのが山田一なんですねー・・・。 ヒロイン不在のヒロインルートって、すごくロマンチックですよね。この例はあまり良くないけれど「母をたずねて三千里」もその類型ですね。それをヒロインでやるってのは、なんだろう、すごくピュアな感じがして良い。実現は難しいでしょうが。
この準ルートは、司が準に一途というよりも家族計画の崩壊とその後の、同じく崩壊した孤児院関連との描写が中心なので、残念ながらそういうピュア感はあまりない(実現可能なラインとして、久美というサブヒロインを用意したのかも知れない)。けれど、いやぁエロゲは広大だなぁと改めて思い知らされました。こないだプレイした装甲悪鬼村正も、掟破りの嵐で相当でしたが、本作は何年発売よっていうね。

あ、準の拒食や行動原理は、きれいに説明されていましたね。繰り返し、実の父母って部分は若干引っかかるけど。
そして最後、拒食からの、この偽りの家族こそが、真の家族だっていう絆エンド。
あれ、最後に強烈な寄り切りで持っていかれたぞ。

本作プレイする前から、私家族については持論があるのです。
家族は、他人同士で作るものだっていう、当たり前のこと。
親子は、普通血縁関係にあります。家系図もそう。基本的に血縁関係であり、「親戚」の定義とは、ニアリーイコール血縁(近親)者です。
だから、ついつい家族とは血縁関係とニアリーイコールのように捉えてしまいがちですが、家族とは、夫婦(現代的言い方ならパートナー)こそがそのコアにあるのです。そして夫婦とは、ほぼ例外なく、赤の他人です。
他人同士が家族を作り、血縁関係者を生み出す。その連鎖が血縁関係ではありますが、血縁関係者を生み出すことは家族を定義する上での必要要件はありません。
なので、本作「家族計画」の家族は、やっぱり、ちょっと変わってるけど、兄弟や親子間で全然血縁関係はない他人だけど、でもやっぱり家族なんですよね。
そして定義や法律や損得はどうあれ、人として家族に求めるのは、絆であり、居場所なんですよね。
でも他人同士って、そう簡単に打ち解けられないじゃないですか。遠慮もするし。
親友にはなれても、家族になるのは相当難しい。
でも、当人達が、自分達の関係を「家族」なんだって、互いに認め合い、受け入れることができたなら。
それは、家族ですよ。

準は、実の家族、実の肉親からの愛情を失い、憎まれ、家族を失いました。たった一人心を許せるはずだった久美とも、その不器用な生き方から、関係はこじれ、家族というものから足を遠ざけるだけの人生でした。
準だけでなく、司も、他のメンバーも、似たりよったりです。実の家族には、恵まれない。
それを強引一つにつなげたのは敏腕な寛の狂気でしたが、各人の境遇が、その狂気に後押しされ、家族を構築したのです。
それを一番感じさせるエンディングだったと思いますね。
ただ最後、準が手料理を食べられたの、準が心を許した真の家族だっていうのを示す描写で、確かに感動的なのだけど、どうしてもリアルに考えてしまうと、「そこで食べられないからといってその人が真に心を許していないわけではない(真に心を許していても、精神症等により食べられないものは食べられないということも多分にある)」ってのを思ってしまって、本作はただの感動演出なのだからそこに目くじら立てるつもりはないのだけどほんの少しだけ引っかかり感じるってところがある。しかし、感動のラストだったのは間違いない。
いやぁどうしよう。当サイト基準で6~7点くらいかなと思ってたけど、7.5点。
本ルートだけでなく、山田一の手腕に延々と舌を巻きながらプレイし続けている。この、手腕に延々と舌を巻きながらプレイってのは、「暁の護衛」3部作プレイしている感にも似ている。「星ぷら」を経て腕を上げすぎでしょう。


茉莉

あっかーーーーーーん!!!!

私の脳内警報がけたたましく音を鳴らしている!!!
これ、あかんルートやで!!!
よりによって一番最後の、正史ルートで!!!!


・・・すみません、今、茉莉が養われていた家族に300万突き付けて茉莉を高屋敷家で引き取ったところです。いや、周囲の多大な助力を得ながらほぼ司が引き取ったようなものですね。

だからこそあかん・・・。
この、性的虐待を受けていた未成年っぽい子を引き取ったというシナリオが、ことエロゲで展開されるというのはあかん・・・!!!

こんなん、司と茉莉のHシーンは濃厚な家庭内DVっすよ。被害児童っぽいの(茉莉)の弱みに付け込んでいる分、よりたちが悪い。許されるものではない。
どうするんだ山田一。信じていいのか?信じるぞ?山田一ならその辺も当然重々に踏まえているって信じるからな!
よし、脳内警報停止!! えいままよ!


・・・久美が準CGをかぶって準のふりして高屋敷家に潜入するという斜め上シナリオが展開された。
さ・・・さすが山田一・・・。
あと司が茉莉への情欲をいじられて「妹にそんな感情は抱かない」的な返しをしていたので、上記警報はやはり誤報だという確信を固めました。
全ヒロイン、シーン1回ずつしかないのに茉莉だけシーン回想が4つもある(現時点で全て未開放)のだけど気にしない。
ヒロイン不在のヒロインルートに定評ある山田一ですから、茉莉のシーンとカテゴライズされつつもきっと実質は茉莉をほったらかして残りヒロイン達とのハーレムHなんです、そうに違いない。

さて。その後割と進んで、まず(久美と入れ替わりで1日だけ戻ってきた)準がいなくなり、続いて春花が、そして真純がいなくなり、家族計画終了宣言の日まで来ましたが。
・・・いやぁこのルート、正史と呼ぶには微妙すぎるな。
このルートを軸にシナリオを作ったわけではないようですね。プロットの段階ではそうだったかも知れないけど、少なくとも実際の作業工程では違う。
だって時系列やらが割と間違っているんですよこのルート。他ルートで読んだエピソード集の、できの悪いパッチワークになってる。
ひょっとしたら私が最初の頃に攻略した春花や青葉ルートもそうだったのかも知れない・・・というか思い返せばそういう小さな違和感はあった。なんか整合性が変だぞっていう。
そういう意味で、一番完成度が高かったのは準ルートですね。あれの後だから、余計できの悪さが目につく。
特に目に付く一番の理由は、他ルートと全く同じテキストなのに、既読スキップできないことです。なので否応なしに目についてしまう。
つまり、このルートが微妙というよりは、5ルートが混在するという本作の複雑な構造を処理しきれなかった、本作全体の問題ですね。

あと、山田一的には別にこの茉莉ルートをことさら正史だとも思っていないのだろうなというのが、このルートをプレイしていて感じ取れました。上記のような粗さもそうですが、家族計画終了宣言という、本作の中でも特にドラマチックで象徴的なシーンに、このルートでは3人しか残されていない。そのためシナリオが微加筆されてはいるものの、思えば本作はずっとそうでした。
各シナリオで、少しずつ、共有エピソードに微加筆がされている。
これまでのルートの盛り上がりや完成度を見ても、山田一は、どのヒロインルートにも平等に力を入れ、どのヒロインルートも平等にTrue Endだと捉えているんじゃないかと思った次第です。

ただ、このルートは、春花が「家族ごっこはできるけど家族にはなれない」と言ったり、寛が自分の真の家族を「そここそが私の真の家庭なのだ」と言ったり、そして、残り3人になった後に青葉がとどめを差すように「こんなの家族じゃない。ただの寄合世帯よ」と言ったり、家族計画に対する否定が強い。
それを機に、司自身が、茉莉を連れて高屋敷家を出る決意をします。
この決意は実に良い。何が良いって、至極合理的だからです。この判断は、遅すぎたくらいだと言ってもいい。そして、決してそう「上手く」は事が運ばないのも、行動に移す前から目に見えていますが。

「 こうして、俺は沢村司に戻った。

いいなぁ。

俺は、どうして、あいつを異性として意識してしまったのだろう?
紆余曲折を経て、家族になってもいいと思えた相手。
できたばかりのかけがえのない存在に対して、一瞬とはいえ邪な気持ちを抱いた。
ひどく、汚した気がした。
内心で俺がずっと望んでいたものを、自分の迂闊さで汚した。
許せなかった。
だから、茉莉はたぶんついて来ないと思いつつ、俺は家を出た。
はたと気づく。
俺は、俺を捨てた親と、同じ行為をしてしまったことに。

良いなぁ!!
いや本当に良いな。上手いなぁ。前段の茉莉300万円高屋敷家買い取り事件を経て、茉莉は司の妹、家族になったのです。
上で述べたように、家族相手のH、ましてや未成年らしき相手へのそれは、深刻で洒落にならんDVです。
そして上で述べたように、すでに構成員の多くが自分達「家族」を「家族」であるとは捉えていない中、茉莉だけ連れて危険な高屋敷家を出るのは合理的です。一方で、茉莉だけは家族計画を頑迷に信じています。そんな茉莉を置いて出てしまったのは、本当に家族であるなら迂闊な判断なのですが、司は茉莉の自由意志を尊重したとも言えるのです。
けれど、どこかがおかしい。 当然の帰結のように皆が離れ離れになったけど、何か歯車がズレている。

そしたら家が火事になって、何故か青葉がやたら良い奴になってて(他ルートでも思ったけど、どこかで空っぽの宝箱を見つけて青葉ルートとは違うけれど自分なりに答え見つけるんですかね?)、んで、とりあえず茉莉と2人生活することに。

で、どうなるんかなーと思っていたけど、いやぁ司はインポ・・・もとい、なんて聖人君子レベルで我慢強いことでしょう!!美少女と二人きりで同じ部屋で毎日過ごして半年間、ついに一度も手を出さないとは!!
念願?のHでも、挿入しようとしただけで気絶する茉莉相手に、「ごめん茉莉・・・俺、もう我慢できないよ」などと無理やり突き進むこともなく、一人トイレで自己処理!!コイツ神か!!!
いやいやいやいや、茉莉もおかしいけど司も大概ですよこれ!!準とはもっと勢いで流れてただろ!!
つまりここですよ!!! ここはさすがに、ちょっとロリ描写をやりすぎてしまった茉莉ルートにおける、山田一のご都合主人公ってやつです。シナリオの都合上、主人公のキャラがブレざるを得ない。いきなり聖人君子にならざるを得ない。
このシナリオ都合上の主人公キャラのブレまでは見習なくて良かったんですよ、るーすぼーい・・・。

で、さらっと言ったけど茉莉も大概変なのですよね。有り体に言って全キャラで一番リアリティが無い。
虐待寸前の荒れた家庭サバイバーの割に、口調が丁寧で良い子で健気すぎる!!完全に往年のエロゲヒロインやないか!いや一文字一句そのとおりだから今更いいんだけどさ!!
観鈴ちんといい茉莉といい、この頃のエロゲヒロインって、割とこんな感じだったよなー、「AIR」と「家計」という二大名作エロゲへの反動もあってか、その後のエロゲヒロインも実にユニーク千差万別になったよなーって改めて歴史を感じさせられました。
家計のすごいところは、すでに上で触れたように、全く同一作品内でありながら、真純さん(NTR)とか準(ヒロイン不在)とか青葉(強烈なツンヤンデレ)とかが描かれている点なんですけど。思えば春花は健気系の正統派ヒロインだった。顔で笑って背中で泣く、男の美学。

なので、エンディングまで終わらせましたが、正直このルート評価はあまり高くないです。半ばネタなのは分かっていても、エピローグで茉莉が実の子供達を他ヒロインっぽく育てようとしているのにも軽く引いた。これは虐待の連鎖ではないのか(マジ顔)

一番グッときたのは司の両親描写ですね。ただまぁこれはベタベタだし、なにより青葉ルートでの父親描写の方に軍配が上がるんですね・・・。
というわけで6点です。
これが正史かー。茉莉との間に普通に、かつて寛が家族計画を否定するため言った「真の家族」を作っておきつつ、また元の高屋敷家で全員集合っていうエンドは、なんか釈然としないなぁ。
この展開ならば真純エンドは完璧だったし、真の「家族計画」エンドと言えるのは準エンドだと私には思えますね。青葉エンドも、メインには据えたくないけど好きだし。(ベタベタな純愛の春花エンドも嫌いではないけど青葉シナリオが強すぎてな・・・)

なんかすっきりしない終わり方になってしまって、ファンの方がこれ読まれていたら(逆に、ファン以外の誰が読むんだって思うけど)大変申し訳ない。特に茉莉ファンの方には申し訳ない。
準・青葉・真純シナリオが強すぎてな・・・。

しかしトータルで見て、やはり名作は名作だったし、前半共通パートはともかく、後半の個別ルートは2024年暮れの現在プレイしても十二分に鑑賞に足るレベルだと改めて感じさせられました。
これは蛇足なのだけど、このことについて、
「名作は色褪せない」「時間を超える」
なんて意のことがよく言われますよね。本当の名作は、作者の死後遥か先まで生き続けると。時の試練を超えるというか。
思ったのが、そのためには、多くのファンの人達による支持の声、そして購買行動に代表されるアクションが必須なのだなぁということ。
名作であれば、無条件に時の試練を超えるわけではないのです。時代を超えて後世に伝わるには、それを伝える多くのファン達の支えが不可欠なのだとなと。
2024年暮れに私が2001年発売の作品を楽しくプレイできたのも、「家族計画」の2001年発売から長年、「家族計画」・そのリメイク「絆箱」・リメイクの廉価版「追憶」を購入して名作だという声を挙げてくださった皆様のおかげであり、またそのおかげで「山田一アーカイブス」なんていう作品がダウンロード販売され、手軽に入手できたおかげなのです。
本作をプレイして、創作とは、それを支えるファンあってこそ時の試練を超えられるのだという当たり前のことに、今更ながら思い至ったのでした。


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 いただいたコメントには後日日記にてありがたくレスさせていただいております。


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