虜囚 -RYOSYU-

(2010/01/06執筆 2010/01/07加筆修正)




いや別に大した話はしないのですけどね。


まずは真面目な話。
作品メッセージみたいなの、読み取れそうで読み取りきれなかったような…。悔しいので、この場で頑張って考えてみます。

「人の関係とは、実はシンプルなものである。誰かの都合が自分の都合となり、その都合の輪からはみ出してしまうと、自分の存在理由が無くなる。」(本編冒頭を意訳)
これ、考察の端緒として適当だと思うのですよ。分かりやすく例が出てましたし。主人公は、これまでの夢を懸けて自分なりのデザインで車の設計を行うのだけど(主人公の都合)、それは上司、ひいては社会の都合が求めないものだった。そして、そのまま会社の都合が求める存在になれないまま、リストラ。恋人の都合が求める存在でもなかったようで、失恋。誰からも求められない、誰の都合にも自分の都合を重ねることができない男、完成。
こうでしょう。
普通は、例えば恋人なら、お互いの都合が(利害が)一致するからこそ付き合うわけでしょう。友人関係だってそうではないでしょうか。雇用関係も同じく。その質はどうあれ、確かにあらゆる人間関係は、お互いの都合の突き合わせで出来ている気がする。

で、ですよ。主人公は、誰の悪意を受けることもないままにただ誰からの都合も満足させられない人間になってしまった。そして自殺を考える。
で、ヒロインの詩織は、仲の良かった、そして周りから虐められていた友人に対し、積極的に救うということしなかったため、「傍観した→裏切られた」と受け取られ、友人を自殺させてしまう。つまり、(主人公もエンディングで言ってますが)悪意を持たないまま誰かを自殺に追い込んだわけです。
つまり、強引ながらもこの解釈でレッテルを貼ると、詩織が加害者、主人公が被害者なわけですね。だからこそ、主人公は詩織に悪意を認めなくてもその罪を咎める。

えーと…。で、次に拉致監禁調教の3点セットの話ですね。あぁそうそう、主人公は誰からの都合からも外れてしまったわけでなく、幸運にもただ一人の都合に引っかかりましたね。美央です。(美央の審査その1) そして、詩織を見て詩織を自分のものにしたいという欲望を抱く(美央の審査その2)。そして、山荘の地下という、人間関係が極めてシンプルな異世界を与えられる。ここでは、世間の複雑な都合は全て意味を持ちません。 存在する都合は、ただ1つ。自分の都合(主人公→詩織)のみです。そして彼が作ろうとしたのが、相手の都合(詩織→主人公)ですね。その手段は調教という非社会的なものでありますが、そもそもが自殺を考えていた2人です。社会的・非社会的などは生死の前では無力ですし、また山荘という隔離空間(別社会)ではほとんど意味を持たないものです。
山荘での生活は、彼らにとって生まれ変わりの意味を持っていたのでしょう。そして3週間の調教後、元の社会に戻っても、お互いの都合は他の数多の都合よりも大きいものだった(TRUE ENDでは)と……。 うーん…

…まだ足りないですね…。
詩織は、最後まで死にたがってましたね。責任感の強い彼女は、友人を死に追い込んでのうのうと楽しい日々を送る、そんな人生を受け入れることができなかったのでしょう(詩織の「死にたい」都合)。それを無視し、ただ詩織を求める主人公(主人公の都合)。あーこう考えると、詩織は、最後まで主人公を求めることはなかったのですね。詩織は最後に、主人公に自殺薬を渡し、「貴方が私を殺して下さい」と頼みます。自分の都合よりも、主人公の都合を優先させる。だから、自分の身体を主人公に差し出す。が、自分は主人公を求めていない(「詩織→主人公」は存在しない)から、主人公にとって詩織が用済みになった(「主人公→詩織」が存在しなくなる)時点で詩織の「死にたい」都合のみが残る、と。

んで、では何で詩織が自分よりも主人公の都合を優先したのか。それは、自分の身を襲った一連の拉致・監禁・調教というものを、自分への罰として考えていたのですね。だからこそ、調教などという野蛮なことをする主人公を容赦なく非難しますが、一方でそれを自分が受けることは罰として甘んじている。おぉぉ、ということは、無意識に詩織の都合が発生しているわけか?おぉおぉ、分かりました分かりました、つまり、詩織は、自殺するか、罰として調教を受けるか、二つの都合を持っていたわけですね。だから、一度家に返された後も、主人公による"罰"を受け続けるという選択肢があった。なるほど、彼女の都合は、主人公に向いているわけではなく、主人公が与える罰にあったわけか。

でも思うわけですよ。「調教調教って言っても、実際調教の終盤ともなるとお尻叩いたら被虐値だけでなく快楽値も上がるし主人公への好意値も上がるし、全然罰になってないよねこれむしろ悦んでるよねこれ」って。
その答えが、美央の母なんですね。
恐らく美央の母もまた詩織と同じ境遇であり(美央も詩織を「似ていた」と言いました)、確か、最期は自殺ですよね?そこまでは言ってなかったかな?まぁ自殺と仮定します。 つまり、これまでの調教が自分の中で罰として機能しなくなるわけですよ。で、残る都合は自殺だけだから、自殺、と。

ただ、これだけだと、詩織の変化が全く不要になってしまう。だから前言撤回ですが、 「詩織→主人公」の都合も、詩織が気づいてないだけで調教を通して発生したのでしょうね。ただここを強調しちまうと(あるいはこればっかりだと)倫理委員だかなんだかに叱られるか発禁にされるから、あまり触れてはいけないのかもしれませんね。

つまり本作は、人の都合の輪から外れてしまった主人公と、自分の都合が大きくなりすぎて人の都合の輪から自分から外れた詩織、2人の生存を賭けたシナリオだったということですね。実際問題として彼らの命を救えたのはお互い(と美央)しかおらず、たとえその手段が非社会的であろうがそのことについて第三者である他人がどうこう言えるものではない。…と、そこまでは深読みしすぎかも知れませんが、そういう背景があるのでしょう。詩織にとって主人公の調教は罰だったのですが、それは罪の意識に苛まれる彼女にとって、実は救いでもあったわけです。

私が一番気に入ってるのは、広崎氏の作品で一貫していると思うのですが、社会の価値観とはまた別の価値観にてらせば存在しうる人間関係、という点だと思うのですね。既存の良識溢れる価値観の絶対性に楔を打つ、小気味のいいテーマです。人の営みは、画一的でもなければ綺麗事が常に至高ってわけでもないですよね。
本作もそのテーマから全く前に出るものではないのですが、ただ、人の関係についてよりつっこんだ作品なのですね。あと、昨今の規制問題への配慮もうまいことしている。というか良い切り返しじゃないでしょうか。

おいおい、やってみたらそれらしい考察ができちまいましたよ。さすが広崎氏。調教SLGバンザイ。


ってわけで、調教SLGパートの話しましょうか。
やっぱり真面目な話なのですが、他の調教SLGと比較して本作の特徴として挙げられるのが、時間の使い方ですよね。24時間(×21日)を完全自分の好きなように予定を組め、時間の流れが体感できるような作りになっていますね。この辺、一人しかヒロインがいないというデメリット(ヒロインが一人だと通常時間管理が容易になりすぎる)をうまく相殺した良いシステムだと思います。
で、私のプレイ法はというと、まず鉄則がありました。
一日2回の調教、時間は早朝(未明の次)と、早晩(夕方の次)。早朝から早晩までの時間は「時間を潰す」で9時間ほど潰し、早晩から翌朝までは「8時間寝る」で潰してました。これのループ。ご飯は一日一回、早晩にあげることが多かったですが、諸々の理由でずれることもあり。
最初は、浣腸ばっかりしてましたね。この辺、他の調教SLGでもよくそうしてる気がする。拒絶されないのがポイントですね。処女は、ごたいそうに守っていてもいいことないので、被虐ポイント高めるためにも早めに奪ってました。初日とか・・・!
あと、これはどういう効果があるのかちゃんと調べてないですが、被虐調教はできるだけ羞恥調教や奉仕を断られた後で行うようにしてましたね。理由もなく叩かない。好感度とかアップしてると信じて。(基本最低レベルだったけど)
他は…
「やるから、12時間休ませて」に対しては常にYESマンでした。パラメーター無視で、「やるの!?うんうん、待つ待つ!」みたいな感じ。なんというか、こっちだけでなく相手も駆け引きしてくるのはいいですね。

で、私がクリアしたのは被虐クリアと羞恥クリア(う○こ食わせた)だけなのですが、回想モードで見たら快楽クリアなんですよね。これもバグですね。ちょっと… フィストは可哀想で結局一度も選択できませんでした。(そのくせ針は刺してるから自分でもよく分からない)
逆に喜んで選んでたのがフェラですね。まぁ定番ですか。で、フェラまでやってくれるようになって初めて知ったのですが、これ、一度発射するとしばらく使い物にならないのですね!お前、手コキの時は何度やられても無限に発射してたじゃない! とか、こういう細かいミスもある。

そんなものでしょうか。

最近歳とったせいか、結構簡単に色んなものに喜んでしまいます。本作も喜んでプレイしてましたし。評価が甘くなってるというか。
そんなわけで、発売日に買って一度途中で中断してたものの、再開してみるとあっという間にクリアしてしまった。普通にとても楽しかったです。

いやぁ、調教SLGって、本当にいいものですね。



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