暗い部屋

(執筆:2010/08/25)



うーん…
なんか、期待外れだったかなぁ… ファンの人には悪いけど。というか私も一ファンのつもりですけど。

情景を主観視点で語るその語り口とか、それこそ心情の描写とか、本当に生々しくてさすが瀬戸口改め唐辺だなと思いますね。彼らしいテキストに乗せて描写されるこれら情景・心情こそが本作最大の見所かなと思いました。

が、一方で、煮え切らないものも多く残りました。
シナリオに不満は無いものの、逆に高評価できるところも特に無い。家を出る、辺りの展開は少々期待もしましたが、これも本人や他のライターさんの手によって既にやられてることですし、しかも実際に全く何事も無く終わってしまった。
敢えて触れるとするなら、主人公の元々の家での場面が計3回あるわけですが、1回目(作品冒頭)と2回目(叔母が死ぬ直前)とで主人公の内面が全く異なっている辺りが見所でしょうか。窓に填められた板を自ら外す辺りなんか、象徴的な感じがしますね。

…が…

どうもなー、なんか、もう一つすっきりしないなー。

何が描かれたかについての私の理解は、多分それほど外してないと思うのです。
結局本作プレイヤーにとっての山場というかクライマックスというかプレイ後の見所というと、最後の供述で描かれた主人公の独白から読み取れる、疲れを知らぬ彼の希望でしょう。
全てが終わった家庭。家庭に不幸だけを降らせ続けて死んだ叔母。その叔母を愛するが故に絶望と狂気に憑かれ死に抱かれた叔父。もういない従兄。不幸のとどめと言わんばかりに実父に犯され全てに疲れ果てた従妹。そして、ある意味始めから終わっている主人公自身。穢れ切った血。
けれど主人公は、従妹を好いています。従妹が、また世界が、彼にとっての渇望であり希望です。そして、彼こそが、この物語の希望です。



…ということだと思いますが…

うーん。まぁこんなもんかなぁ。
展開としてはドロドロしてるだけであまりメリハリもなく、ただ唐辺節で描かれているものだから日常描写自体がなかなかよかったりするのですが、とはいえ展開という意味ではどうももっさりしているような印象…。
より小説的、なのでしょうか。
「~~の供述」という、思わせぶりで読者の興味を煽るような表記をしたのはあるいは失敗だったのではないかなと思います。



最後に、公式通販特典の小説ですが、特に最初の方が素晴らしいですね。ただ、唐辺が割とノリで途中まで一気に書いて、それの後付けのように後日お話を付け加えていったような、そういう温度差というか、作風の悪い意味での変容ぶりというか、そのへんが、「ああ、この作品をおまけレベルにした理由はこれかな」と邪推させる要因になっているような。
結果として一応体裁は整っており、その書き口で淡々と描写される迫力は本当に凄いし、読んでる途中は「これが本編の方が良かったんじゃないか」と思ってしまうほどでしたが、いかんせんどうもあと一歩・・・。


最後に。

非常に辛口なことばっかり書いてますが、あくまで、唐辺作品として見たらの容赦なしの感想です。
ただ、唐辺…というか瀬戸口作品の中では、私の中では一番下かなぁ…。読んでる時の(色々な意味での)胸の高まりが最も低かった。
そういう感想でした。




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