妖獣戦記A.D.2048 〜真・説・序・章〜

(執筆:2006/08/22)



メーカー
D.O
(往年では「虜」シリーズ、近年では「家族計画」で有名な、ADVからSLGまで色々手がけている古参中堅ブランド。)



属性
ジャンル:戦術SLG
用途:ゲーム
舞台:近未来
顕著な属性:幼獣,触手
プレイのきっかけ:中古屋で見かけた見慣れない作品。シリアスな作風に惹かれて。



テキスト:3
あらすじ:舞台は第三次世界大戦後。核兵器の影響で発生した妖獣達に、人類は生存を脅かされていた。
そんな中、対妖獣の切り札として結成された特殊部隊A.A.S.Pが、都市へ進行してくる妖獣の掃討にあたる。

ベタベタな舞台設定、申し訳程度のストーリー。
三部作の一作目ということで、実はなかなかしっかりした背景があるようですが、この作品単体からは特に読み取れません。
"存亡を賭けてのシリアスな戦い"風味のシナリオが苦手・嫌いな方はスルー、そうでないならあまり気にプレイしましょう。シナリオはあってないようなものですので。



ゲーム性:8
味方ユニットを動かして敵ユニットを撃破していく、典型的な戦術SLGです。
難易度ですが、かなり難しいです。味方攻撃の命中率の低さが特徴的で、人によってはかなりイライラさせられます。また、敵移動範囲・射程距離も広く、常に自分の身の安全を考慮に入れていないと、あっという間に妖獣達に群がられてフクロにされます。
で、プレイしてみると、なかなか面白い。このタイプのエロゲー内戦術SLGとして最高峰の出来と思われます。クリアするには、特徴ある味方ユニットそれぞれの特徴を把握し、マップの形状を最大限に利用しながら、時には突撃し、時には壁を作り、時には後退し、時には後退と見せかけて誘導したりといった戦術が要求されます。
シンプルな作りでありながらこの絶妙なバランスは、さすが往年の名作シリーズ。私のような「ゲームの腕前人並」程度で、何とかクリアできるレベル。
とはいえ、難易度・全体的な命中率の低さなどによってイライラすることはほぼ間違いなしです。



実用性:2
当サイトでは、そうそう9点10点や1点や2点はつけないのですが…。

エロいです。
私の主観ですが、D.Oが外注したこの原画屋さんの絵、この作品と組み合わせると非常に妖艶で良い感じです。口元の色気がたまりません。
CGも、妖獣がリアルかつグロテスクに描かれており、CG単体で十分に観賞に耐えるのではないかと。この辺りはさすが妖獣の老舗D.Oといったところでしょうか。
問題は、実用性において主役となるCGをサポートするテキストと音声。
音声が多少CGに合ってなかったりそれほど上手でなかったりと、そういうのはまぁ良いでしょう。しかし、1枚のCGにつき平均テキストがわずか4,5行というのはいかがなものか。「(Hシーン開始)あぁ〜んあぁ〜ん」→「(次のCG)いやぁ〜やめて〜」で終了。実用どころか、膨らむ暇もありません。なめてるんですか。
CG、差分というものがありません。1回のシーンにつき2枚のCGが用いられ、それが、妖獣に襲われシーンが計21シーン、和姦が9シーン。計30シーンということでそれなりに多いのは分かりますが、いくらなんでもこの短さは昨今のエロゲー事情を顧みるに、あんまりです。この辺り、いくらでも企業努力できたはずなのに(最悪シーン数減らして内容を膨らませるなど)、CGばかり優秀でその辺りの努力が全く見られなかったことは残念です。
本作ほどCGが勿体無いと思ったことはありませんでした。



音楽:3
一昔前のコンシュマー戦略SLGを思い出しました。スーファミとかの。
音質が悪いとかそういうことは無いですが、まぁ良くも悪くもない音楽。

ボーカル曲:無



キャラ:7
 主人公:名前変更不可,Hシーン以外ロクに登場しない
 ヒロイン達:リーダー格、精神虚弱、攻撃的、ツンデレ、姉御的、馬鹿、大人の魅力

この作品のキャラ特性として、いわゆる「萌え」的要素が極端に少ないことを感じました。キャラクター達にはそれぞれそれなりの個性はあるのですけど、「キャラ」というより「個人差」という感じ。キャラが薄味なのですね。
そういう薄味キャラ達、意外や意外でしたがこの作品にはぴったりでした。
というのも本作は、「妖獣(というよりポジション的に限りなくエイリアンに近いです)と人間との、存亡を賭けた死闘」というテーマで描かれています。主人公達バイオソルジャーは、強力な力を持ち、人類にとって代わり地球上で君臨する勢いの妖獣達への唯一の切り札という設定です。要は極シリアスなんですね。ベタとか寒いとかそういうのはまぁこの際おいといて、そういう世界設定を楽しめる人には、本作のような、昨今の18禁ゲームではそう見られないような薄味のキャラ設定が逆にツボにはまるのでは。変に萌え萌えしたしぐさや言動はほぼ無く、基本的に私自身の話ですが、純粋に戦闘SLGを通して、いわゆる「ちょっと美人なお姉さん達」なキャラ達への愛着がわいていきました。じわじわと。

昨今の18禁ゲームではそうそうお目にかかれない薄味加減。それが逆に、ゲームを良い具合に引き締めていたと思います。この辺りはまさに往年の作品という感。昨今のキャラ性偏重以前の、懐かしい雰囲気です。無音が時として最高のBGMとなるように、キャラの薄味加減が逆にキャラ達への純粋な愛着になったという感があります。

…まぁ自分で書いてても褒めすぎなんですが。



声:女
出てくるのは女性のみ。女性声しかありません。実質フルボイスですね。
演技は、メインキャラ達の何人かと、サブキャラ達のほとんどが危ういものでした。期待してはいけません。



時間:4
SLGゲームとしては異例の低得点。ADVパートはほぼ無しですし、全9ステージのみです。とはいえ、1ステージあたりのプレイ時間が長くならざるを得ない(普通に攻略するなら平均各ステージ数回のやり直しが必要)ので、時間は意外ととられます。
結果として、クリアするまでにショートサイズADV程度の時間はかかるのではないでしょうか。



雑記
システム周りは、一応だいたい揃っている感。SLGのステージ内では一切セーブ&ロードできないシビアさは好印象。

演出面では、些細なことですが2点。物語の伏線・背景を読むか読まないかの選択をプレイヤーに委ねたのは好印象。いきなりSLGに突撃することもできますし、興味があれば舞台の背景等を調べることもできるでしょう。キャラクター達のプロフィールはカルテ形式にデザインされたものを"閲覧"できる、など。
もう一点は、戦闘中にキャラ達が喋ること。攻撃が当たったはずしたの報告は、人によっては非常にうざいと思うのですが、私としてはポイント高。ともすれば無機質なものになりがちな戦闘SLGに生を吹き込んでいる良い演出だと思います。どのブランドも、意外とこういう小細工をきちんとしないのですよね…。ただし、せめてON,OFF機能くらいつけておくべきだったと思います。まぁこの程度は、ステージ内でセーブ&ロードできないのと同じく、必要悪ならぬ必要演出負荷と見ることも可能でしょう。

絵は完全に私好みなので、なんというか、自省してみるにこの絵でこの作品の評価が数段上がっているような気もしないでもないです。塗りも綺麗。美人CAがグロテスクな妖獣に襲われたりなど、ギャップを良く分かっておられるかなと。何故それを最大限生かそうとしない……!!(「実用性」項参照)




お勧め度:6
サクサク進めたい人には難易度の関係上あまりお勧めできませんし、短気な人には、かなりの精神的負荷を与えること必至。
ただ、作品の雰囲気に惹かれたという方、一度プレイしてみてはいかがでしょうか。6800円と、このボリュームにしては不満も残るのですが、昨今の他の18禁ゲームではそうそう味わえない懐かしさを味わえます。そういう意味では、社会人の方に最もお勧めかも知れないです。本格派SRG,RPG系のゲームをやる時間は満足に取れない方も、このボリュームならクリアできるはず…。
3部作の1作目ということですし、「浅く広く」よりも「狭く深く」が信条の方、物事をじっくりやるのが好きな方、我慢強い方、ライトMの方などにはお勧めです。
そして必見はCGかも知れない。実用性は(絵以外は駄目駄目なので)限りなく低いですが、絵だけは一度見ておく価値ありかも。




気に入り度:8
「全ての18禁ゲーマーが萌え要素を必要としていると思うな!!」
そういう私の密かな叫びを、しっかり受け止めてくれた作品になってしまいました。

プレイ最初は「地雷引いてもたーー!」みたいな感じだったのですが、諦めて黙々とプレイしていると、いつの間にやらハマっている自分、と言う感じでした。
とはいえ、リニューアルにしてはあまりに不足の多すぎる内容、D.Oへの憤りは収まりません。ただ、どうもシステム以外の活躍が感じられてしまって、微妙な気分です。
というのも、レビュー完成後数日たった今も、「お気に入り8点はやりすぎたかな…」と思ってるのですが(優柔不断)もし未チェックならD.Oの公式ページをご覧あれ。8月末の現在で続編の発売日が「9月発売予定」としか書かれていないことに若干の不安を感じますが、いえそちらではなく、1の方のページにいくと、「プロローグ」と称されたテキストが読めます。
正直、お気に入り8点のうち1,2点の正体はここです。
こういう、ちょっとハマっちゃったかも的な人を捕縛する技術はお見事。
私が勝手にドツボにハマっただけですか。





(以下、後日日記にてこの作品に触れた部分を抜粋)

1は、自由度が高い分、臨機応変に色々な戦術を考えられて良かったですね。まさに戦術SLG。なんというか、「この方針で行こう」と思ってても、陽動のユニットが予想外にダメージを受けたり前衛の誰かが死にかけたりするので、その場その場で戦術を見直さないといけないのですよね。誰かを捨て駒にするわけにもいかないから(戦闘不能になるとレベルが上がらない)、元気な誰かが敵陣に突っ込んで囮になっている間に瀕死のキャラを安全地帯まで移動させるとか。しかしそのキャラも完全に戦力外にすると戦力不足になるから、敵陣もユニットが減ってきたら決死の覚悟で突っ込ませたり。
まさにドラマ!戦場のドラマ!!
そうです、究極的にはテキストなど要らないのです。大事なのは想像力です!





(この作品については、プレイ後レビュー,攻略にても触れております)

Gyutto.com「妖獣戦記」

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