ヤミと帽子と本の旅人(初回版)

(最終プレイ:2005年夏 執筆:2006/05/15)



メーカー
ROOT
(前作「顔のない月」がヒット。CARNERIAN女史による絵が人気。
 親会社のorbitが青息吐息なのが心配。)



属性
ジャンル:ADV
用途:物語
舞台:ファンタジー,平行世界
顕著な属性:イメージアルバム



テキスト:6
あらすじ:主人公は気がつけばボロ布に変身していた。
しかも小さな女の子に「着られて」おり、場所はどこともつかぬ巨大な図書館。
途方に暮れていたところを見つけてくれたのが、本来の世界で飼っていたオカメインコのケンちゃん。何故か喋れるケンちゃんに連れられ、元の世界に帰るための不思議な図書館の旅が始まった。

この世の果てにある巨大な図書館。そこにある本、その一つ一つが世界。主人公達は何らかのトラブルで、その世界から放り出され、図書館の中を彷徨うことになります。
元の世界に戻るには、図書館にある別の本に散らばった、元の世界の欠片を一つ一つ見つけなければなりません。こうして、主人公とケンちゃんの旅は始まるのですが…
こうやって見ると、クールでファンタスティックノベルという感じなのですが、登場する人物達がどれもこれもどこかとぼけており、ストーリーは基本的にコメディです。しかもそれほど面白くもなかったりと、まぁ大変です。
特に前半。ぶっちゃけ退屈です。

基本的に、幾つかある世界を順番に渡り歩く話(その度に主人公はその世界の中の誰かに憑依するので姿は違う)なのですが、お話の全貌が何となく見えてくるのは中盤以降。最初は各世界で色々な人達に会います。で、ようやくその世界の人達にも愛着が出てきたかな、あたりでさようなら。それが何度も続きます。
けれど、ここまではひたすら我慢です。物語の肝は全て後半、メインヒロインと遭遇してからです。ぶっ飛んだキャラのメインヒロインと回る、これまで回った世界。この辺が楽しいです。
テキスト単品で見ると(特に前半の退屈さから)合格とは言いがたいですが、魅力的であることは間違いないです。なんといっても世界設定が素敵。あ、旧約聖書の話が結構出てきます。天地創造あたり。



ゲーム性:2
アホか!難しすぎるわっ!
…えー、基本は2択の選択肢で、分岐といってもせいぜいCG回収程度がほとんどなのですが…
まともなエンディングには、攻略サイト必須です。
バッドエンドに何の見所もないので、初回プレイから攻略サイト使用をお勧めします。
(2006/12/21追記:とある場所に行ったら攻略法教えてくれるそうです…未確認ですが)



実用性:3
絵が非常に綺麗かつ色っぽいので、それだけでちょっとヤバいです。
けれどHシーンは雀の涙。ほとんどありません。まぁ、実用というより、鑑賞して楽しむという感じですね。



音楽:10
これはすごい。音楽が無い。ノーミュージック。
音楽は、本当に要所要所、数曲が流れる程度です。後は音楽無し。
かといって無音かというとそうではなく、その分SEっていうんですか、効果音に力を注いだ、とのこと。
…確かに綺麗でムーディな効果音です。やっぱりどこか手抜き感を感じますが、これは廉価ソフトだから仕方ないですよね。
作品の雰囲気を盛り上げたことは間違いありません。ヘタな音楽流すよりもずっと印象的でしたし。というわけで、7点。

では何で10点と書いているかというと、初回限定のイメージアルバム&絵本、これだけでさらに3点アップなのです。よって10点。
イメージアルバム、本編をクリアした後に聴くと最高です。本編でいまいち発揮できなかったファンタジックロマンというものが思う存分披露されています。
このイメージアルバム作製を受注したのはfeelという音楽製作グループなのですが、非常に惜しいことに、解散しているのですよね…。
18禁業界は惜しいグループをなくしたと思います。

何にせよ、本編の音楽無し演出もすごいですが、イメージアルバムはそれより遥かにすごい。二重に存分に楽しませていただきました。まさにこの世界観あっての重厚さだと思います。

ボーカル曲:(イメージアルバムで数曲。ただしボーカル曲という雰囲気ではない)



キャラ:8
 主人公:名前変更不可,やや熱血系の性格。高校生だったのに。。
 初音:主人公の義姉(?)。生まれつき言葉が話せない美少女。
 ヤミ:図書館を統治している存在。ヤミという職業名。現在のヤミは…

その他、各世界から数人ずつ男女こもごもキャラが出てきます。

それぞれ、当たり外れありますが魅力的なのが多いです。特にヤミ。ヤミのヤミによるヤミのためのゲームみたいなノリです。まぁそれは言いすぎですが、少なくともヤミ本人は絶対にそう思っていると思います、みたいな世迷い言が出てくるようなキャラの面白さ。
これだけ雰囲気の良い世界設定でありながらキャラゲーであるのが何とも…。



声:女
女性フルボイス。言葉を話せない初音も喋ってます。うろたえた声とか、喜んでいる声とか。
それぞれ、良い声だと思いました。
特にヤミ。あとマウ。



時間:4
普通のADVくらい、でしょうか…。基本一本道だということを考えると、やや短いですね。



雑記
システムは、説明書見ないと分からないようなことになっています。説明書必須。
なかなか綺麗なシステム画面でしたけどね。システムに限らずレイアウト全般。
もうちょっと言うと、レイアウトだけでなくキャラ・背景、いずれも非常に綺麗です。思わず見入ってしまうようなのもあり。



お勧め度:8
初回版なら8点です。実用ゲーマーならともかく、「18禁ゲームって、世間のイメージほど悪いもんじゃないんじゃね?」と疑問に思う方ならぜひとも買いです。初回版を。
初回版でないなら、お勧め度は6です。ちょっとこれを強くお勧めはできません・・・。理由は、前半の面倒くささと音楽が無いという点。私には非常に良い演出だと思われましたが、やはり音楽無しは寂しいというのも確かなので。廉価ですので中古で買うのも安めだとは思いますけど。




気に入り度:9
初回版なら9点です。通常版なら5点。
イメージアルバム、私の宝物ですというといいすぎですが、これまでこの業界で出会った音楽の中で最も私の心を掴んだ品です。
廉価でありながら、出来る限りのことをしたという熱意が伝わってくる、非常に意欲的かつ成功作品だと思います。

そもそも、何で平行世界なんて観念を持ち出したかというと、各世界で出てくるキャラが、ROOTの親会社orbitグループで出される各ゲームのキャラ… つまり、このゲーム自体が他のゲームのCMだと言うのだから、呆れすぎて感心します。



(この作品については、)

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