（執筆：2009/12/21）
Navel
（人気絵師西又葵で有名な萌え系ブランド）
発売時期：2009年1月
ジャンル：ＡＤＶ
用途：読み物
舞台：現代の都会（繁華街） など
顕著な属性：ロリ
プレイのきっかけ：人気作品なので（プレイ前の期待得点…６点）
プレイ進捗状況：全シナリオ開放
あらすじ：級友達からは軽んじられているが時々召喚される異世界では救世主な学園生、常に高いテンションとコミュニケーション力を保ちながらも安定しない生活を続けるコラムライター(出来高払い)、ハードボイルドになりきれない2.5人前の武闘派フリーター。同じ街で生きる３人の主人公それぞれの生活。そしてやがて結び付いていく彼らの世界。
シナリオ展開を楽しむ作品ではありません。そりゃ物語ですから、シナリオも展開すれば伏線も(特に終盤に)明かされたりもします。メッセージ性だって、ないこともない。が、そんなものは全て二の次。本作の見所は、魅力的なキャラ同士の掛け合いや秀逸なテキスト運びであり、そしてあるいはそれら背後に滲み出る雰囲気も見所かも知れません。
シナリオとも呼べないほど起伏の控えめな日常シーンの連続は、愉快なキャラや可愛いヒロイン達に彩られています。そういう意味で本作はまごうことなきキャラゲー、萌えゲーなのであり、そして（プレイ中はあまりそんな感じもしないかもですが）間違いなくラブコメであります。そしてそんな日常を紡ぐのは、ライター王雀孫の軽快・愉快かつ繊細でセンチなテキスト。ポップなやり取りの隙間隙間に、侘しさ・寂しさという下地が見え隠れする。この「ポップ＆哀愁」のコラボが本作の真髄であり、ライター王雀孫の卓越したテキスト力が最も遺憾無く発揮されている部分だと私は思います。あまりこの面を強調するのも良くないのでしょうが、私にとって本作の見所はまさにここでしたね。
まだプレイされてない皆さまにおかれましては、基本的に明るいめの純愛系だと思っておけば間違いないでしょう。
冬の曇天の空の下、一つの都会の繁華街を舞台に繰り広げられる３つ(+α)の物語。
それぞれ不完全な人間関係しか築いて来なかった主人公達の恋愛模様をお楽しみ下さい。
普通のADVゲークラスの難易度ですね。実は私CG１枚だけ開放できてないのであまりでかいことは言えませんが、難易度はかなり控えめなのでストレスなく攻略できます。
攻略には一応お勧めの順番有り。
鷲介→隼人→鷹志 です。
この順番でプレイした私、大勝利。
ご、合格ーーーーーーっ……！(親指を立てながら)
和姦Ｈシーン描写としては過去最高レベルでしょう。リアリティとエロゲ的ご都合の見事な融合。それを彩るのは丁寧・繊細かつ適度に生々しいテキスト。キャラによって（プレイヤーの皆さんの好み的な意味で）当たり外れはありますが、得てして素晴らしいです。
普通のＨシーンだと「ほほう見せてもらおうじゃないの」と歴戦の戦士モードに入ってしまいちょっとやそっとのエロさでは動じないのですが、なにせ基本テキストゲーなので、テキストゲーのつもりで読んでたらいつの間にか本格的Ｈに突入しておりこちらはガードしてる暇もなく棒立ちのところを突かれまくって否応なく興奮させられるという、良い意味での及第点作品。
ただしその反面、あまりにもテキストが手抜いてないせいで、そこがＨシーンであっても基本的にキャラゲーなのですね。プレイヤーの実用を目的として作られていない。結果、キャラゲーとしては素晴らしいＨシーンなのですが実用ゲーとしては多少間延びしてますね。というわけで、及第点止まり。ただし股間以外も興奮しまくってたりする。で、本項冒頭に戻る、と。
キャラの魅力弾けるエロさをご堪能下さい。
これはいい音楽屋さんを抱えてますねぇ。
久々にサントラよく聴いてます。（こういう売れ筋シナリオ系エロゲのサントラはツタヤでレンタルできることが多いのでありがたい）
テキスト項でも述べたポップな楽曲が特に売りでしょうが、全体的にハイクオリティだと思います。耳音痴の私が保証します。
ボーカル曲も豊富で、特にＯＰ曲と挿入歌が大好きです。
ボーカル曲：５曲くらい
主人公：鷹志、鷲介、隼人（名前変更不可）、詳細はテキスト項あらすじにて
明日香：鷹志のクラスメート。学園のアイドルであり鷹志の仮面恋人。
京：鷹志のクラスメート。軽く心の病（躁鬱？）の女の子。
日和子：鷲介のバイト先の同僚。生真面目な堅物。
鳴：隼人が街で知り合った女の子。天然ではないが独特のテンポで会話する。
亜衣：隼人が街で知り合った女の子。隼人によく懐きつきまとってくる現代風の女の子。
小鳩：鷹志の妹。おどおどとぎこちない感じ。
↑攻略不可能キャラも混じってます。あしからず。ネタバレ回避のため誰とは言いません。（エロゲ批評空間のPOVとか見たら一発ですけど）
得てしてキャラが濃いです。キャラは濃いけど、絵の可愛らしさも手伝って、かなり魅力的です。絵の可愛さと言いましたが、絵が可愛すぎて（？）攻略可能キャラと不可能キャラの区別がつきません。ヒロイン・サブそれぞれの変っぷりもランダムですし、全部攻略可能なのか一部攻略可能なのか全部攻略不可能なのか、最初はさっぱり分からないでしょう。
しかし分かるとさすがのヒロイン勢、可愛い。さすがNavel。さすが萌えゲー。シナリオゲーの皮をかぶった萌えゲー。
この辺しか期待せずにプレイするにはあまりにも勿体無いテキストですが、この辺を楽しまないのはそれはそれで大いに勿体無いです。
声：男女
男女フルボイス。
いやこれすごいですわ。変なキャラに変なセリフが、男女問わず出てくる出てくる。
声優さん達の演技にも問題無し。よくやったと褒めて差し上げたいキャラも何名か。あと、私の心が射ち抜かれた声の方も２名ほど。
非常に長いです。私はほぼ全てボイス聴いていたのですが、「あーこのボリュームなら満足かなー」と思い始めた時点で全体の半分も進んでなかったという。４０時間くらいは楽しめるんじゃないでしょうか。
システム：オートカーソル完備で、起動してからマウスを全く動かすことなく３クリック（ロゴをスルー→LOAD→最新ファイル選択）するだけでロードできたのは快適でしたね。
演出：物語が無数の小ストーリーに分けられている感じで、その区切りごとにアイキャッチならぬ画面閉じの演出があったのが非常に良かったです。画面閉じっていうとわかりにくいですが、画面上下それぞれから仕切りが高速で出てきて、真ん中でバタンとぶつかる、といった感じのものです。作品のテンポの良さを底上げしていたと思います。
「人を選ぶ」などとまことしやかに囁かれてますが、このとめどなく降り注ぐエンターテイメントの前に、「人を選ぶ」などというフレーズは無意味だと思います。「このクオリティを堪能できないならエロゲーなんか卒業した方がいいんじゃない？」とすら、プレイ途中は思っていました。
ただ、最後までプレイして思ったのは、シナリオゲーとしては過度の評価は禁物ということですね。ガチなシナリオゲーファンにはそれほどおすすめではない。ただ、ガチなシナリオファンを自称するなら同時にこの才能溢れるテキストにも目を向けてしかるべきだと思うのです。すでに何度も繰り返しておりますが、シナリオゲーとしては今ひとつだけど、テキストゲーとしては秀逸。詳細は伏せますが、コンセプトがあと少しテキストにマッチするものであればこのテキストの魅力も神がかり的なものになったとすら思います。（そういう意味で、少々がっかりしました）
本作のことを、萌えゲー萌えゲーと私はこれまで連呼してきました。基本的に萌えゲーないし恋愛ゲーですこれは。しかし、萌えゲーとしては異常にテキストおよびキャラクターの魅力が高い。また、選ばれたテーマがシナリオゲーとの相性も良く、実際プロットもなかなかのものなので、シナリオゲーとしても楽しめる。…という風に、明らかにただの萌えゲーの域を越えてます。それが本作の判断を難しくしているように思います。
熱血系でもなければ涙でモニターが見えない系でもない、スリルサスペンスホラーなどのいずれにも特化していない。それでいて、エロゲーの魅力が詰まりに詰まってます。むしろ本作ほど、正統派"エロゲー"らしいエロゲーは無いんじゃないかとすら思います。
シナリオゲーとしては微妙な部分もいくつかあるけれど、しかしエロゲ好きなら誰もが一度は触れておいていい作品だと思うのです。
私事で恐縮ですが、私が本作の中で特に評価していた部分が、プレイを進めることで軽く否定されるという事態が起こりました。だからこそ、これまで少なからず築いてきた本作への愛着も梯子を外されたような状態になってしまって、正直、超マクロな視点で見るとそんなに評価できません。
しかしそれが少しミクロな視点に降りると、もう半端ない。本作のプレイ中、私に本当に楽しい時間を過ごせました。エロゲやっていただけと言えばそれまでですが、"とても充実していた"と言っても過言ではない。普段シナリオとかメッセージ性とかをやたら重視している弊害が出てしまいましたが、それ以外のところで思いっきり心躍り、また心動かされました。テキスト力は本当に人並外れています。その腕には敬服する。ギャグとかシリアスとかそういう意味だけでなく。そしてそのテキスト力で紡がれるキャラクター達の日常。ありきたりな表現ですが、「この世界にもっともっと浸っていたい」。
ご馳走様でした。
（この作品については、プレイ後レビューでも触れております。）
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いただいたコメントには後日日記にてありがたくレスさせていただいております。