つくとり

(執筆:2009/04/09,4/23)



メーカー

ruf
(色々な意味で濃い本格ADVを散発的に出すブランド。地雷率が低いのも特徴。)



属性

発売時期:2007年5月 ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代のとある山間の町。外部からほぼ隔離状態。
顕著な属性:
プレイのきっかけ:友達のお気に入り作品にして強いお勧め作だったため。これを勧めてくれた理由の一つは、私が「ひぐらし」を絶賛していたからかも知れない。(プレイ前の期待得点…7点)
進捗状況:一応最後まで…。ただしプレイ順が異例、一部抜けたルート(月鳥姫前)あり。



*注:私は普通にプレイしていれば有り得ないプレイ順で本作を進めたため、感想も少々特異なものになっています。本レビュー執筆にあたってはその辺は極力考慮しレビューは書いていますが、どうしても普通のプレイ順は想像だけに止まっているというのが事実です。






テキスト:5

あらすじ:主人公は、旅の途中に知り合った女刑事「久十生」に無理やり相棒の代役として任命され、殺人事件の起こった月鳥町へと赴くことに。月鳥町では殺人事件が連発するが、住民達は「つくとり様の崇り」であると主張し人為的な事件であること事態を否定する。捜査を進めていくうちに、主人公達の身にも危険が迫り…

まずテキストですが、序盤に、「ユメミルクスリ」等最近のrufに顕著に見られる、薄ら寒いギャグの洗礼がプレイヤーを待ち受けます。
が、それは個人的には私には結構ヒット。フォローのしようのないものも多いですが、その気になれば結構笑えたりも。
主人公達が実際に捜査を本格化させる序盤以降、その独特の軽いノリは完全に鳴りを潜めます。で、待ち受けるのが、サスペンス的ミステリー。

まず全体の構成ですが、多数の伏線が絡み合う、パラレルワールド的ストーリーです。すなわち、序盤までは1ルートなのですが、途中でルートが大きく3つに分かれ、それぞれが完全独立に物語が進みます。何が分岐ポイントかよく分かりませんでしたが、ともあれ、全く同じ設定・伏線・背景でありながら物語は3通りの展開を迎えるわけですね。
そして3編それぞれが、問題編と解答編に分かれます。解答が与えられるのは主に、それぞれの問題編でスポットライトがあてられた要素について、です。

続いてシナリオですが、次から次に色々なことが起こり、問題編では何も解決せぬままエンディングを迎えます。起こることは、3ルートで共通のものもあればルート固有のももあります。
特に「ひぐらしのなく頃に」を未プレイであれば、その設定の緻密さ、面白さを満喫できるのではないかと思います。
またこれは「ひぐらし」とは関係ないですが、一本の問題編が淡々と進んでいく背景では、色々な伏線・背景が蠢いています。色々な設定が重なり合っていながら、大筋で設定や展開に矛盾等はないと思います。

最後にテキストですが、序盤以降のテキストは、平易な日本語でありながらどこか固い感じのする、あっさりとした語り口です。基本的に主人公視点ですが、そうでないことも。

メッセージ性はないと思いますが、おそらく作品を通して描きたいものは「狂信」「盲信」した集団の怖さ、みたいなものでしょうね。

ジャンルは、異色サスペンスドラマだと思っておくのが一番良いと思います。変に推理しようとかこまごまとした点にヒントを探そうとかそういう無闇に積極的な姿勢で作品に挑むと、私みたいに転ぶ可能性高いと思います。あくまで、与えられた情報を「そういうものか」と素直に受け入れつつ先の展開をワクワクしながら読み進めていくのが、私個人のお勧めするプレイスタイルです。
私が本作で一番評価できると思うのが、サスペンス要素ではなくドラマ要素。(特に終盤に見られる)キャラ達の回想シーン等は、普通に面白かったです。求心力もあり。はっきり言ってそこに至るまで完全惰性でプレイしていた私ですが、そういうシーンだけは普通に熱中していました。
つまり、私が思うにこのライターは本作において自らの力を発揮する配分を間違えた。

最後に、ファンタジー要素があるのかないのかですが、以下伏字↓
一切無し、です。ただし、意識すれば目に留まる程度の都合いい展開、そして少々の伝奇的要素が入ってる。そして、細かなリアリティについてはあまり考えないが大吉。



ゲーム性:3

皆無です。むしろゲーム性を求めてはいけない。



実用性:4

何でこの絵師を選んだのでしょうね。
なんとも言えないエロティックさが、感じ取れないこともない、というのが最大限の褒め言葉です。
ただ、声優さん達は頑張っていたし尺も十分だった。あと、展開だけで満足できる人には結構美味しいご馳走かも。



音楽:5

いやぁ…。
なんだかね、鳴ってるのか鳴ってないのかよく分からないようなレベルで、本当にBGM流れてたり本当に無音だったり、確かに一部の曲はなかなか良いですが、ゲーム中に聞くBGMとしてははっきり言って基本的に落第点だと思う。曲自体はそう悪くありません。ただ、展開が悪いのかスクリプトが悪いのか、一部の同じ曲ばっかり繰り返し流され、作品への貢献度が低い感じになっていると思う。

一曲だけ、久十生警部と一緒にいる時によく流れるBGMだけはかなり好みです。BGM07「夢想」という曲。「顔のない月」のBGM「日常」って曲と実に良く似ています。



キャラ:4

主人公:「郁(かおる)」。奔放な感じの青年。あくまで自分のポリシーに従って動く。

その他、ヒロインの紹介は省略しますが、なかなか味のあるキャラ達で好感を持てるのが多いです。萌え的な要素を多分に含むのはほぼ一人のみ(それも半分以上過ぎてからようやく発揮される)なのですが。



声:女


女性のみフルボイス。やっぱり、こういう本格読み物系で男性の声が無いってのはちょっと残念ですね。完全フルボイスか完全ノンボイスにするべき。
声は、うーん、まぁ、なかなかよかったような。悪いのはどうも精緻さに欠けるテキストであり、声優さん達ではない。



時間:6

はっきり言って滅茶苦茶長いです。私が退屈だったから余計そう感じたというのもあるでしょうが、確かオールクリアまで約48時間だとかなんとか。



その他

システム:最低限、という感じですね。
演出:特に語ることはなかったと思います。
絵:全体的に、どうも精彩に乏しい絵な気がするんですよね…。特に背景。背景。2回言いました。



お勧め度:5

サスペンス風ドラマと思ってプレイすれば、結構楽しめると思います。
長いので、覚悟して臨んでほしいですね。




気に入り度:4

確実にプレイ順ミスった。要は、問題編全部終えないと解答編いけない仕様なのに、先にセーブデータあてちまったんですよね。結果、まだ問題編すら見ていないルートの解答まで行きがけの駄賃的ノリでバレくらったという。そりゃやる気も面白さもなくなりますわな。
もう一個、私、「本格ミステリー」として本作を強くお勧めされたんですよね。(と記憶している) これが大失敗。私の注目ポイントは、本作を楽しむ上であまり触れてはいけないポイントだった。本作はあくまでサスペンスドラマとして楽しむべきであり、ミステリー、なかでも推理ものとして臨めば爆死必至です。爆死した私が言うんだから間違いない。
以上2つの理由より、私にとって本作の印象はガタガタ。しかし、以上2つの理由がなくても、あまり高評価にはならなかったんじゃないかと感じます。理由は、このライターのテキストに軽さというか薄っぺらさというかリアリティの無さというか机上の展開というか、そういうものを感じてしまうから。もちろん上2つが私をしてそう感じさせる大きな要因ではあるでしょうが、それを差っ引いてもそう感じると思います。

一応フォローしておくと、それでも解答編の一部は結構楽しかったので、私にはこのライターさんのあまり得手としない部分が他の人より目についてしまうんでしょうね。



この作品についてはプレイ後レビューでも触れています

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