(執筆:2010/02/26 最終更新:2010/03/01)
上海アリス幻樂団
(「東方」シリーズで有名な、同人業界最強の同人サークル。メンバー1人。)
発売時期:2005年8月
ジャンル:対戦型シューティング
用途:ゲーム
舞台:和風ファンタジー世界「幻想郷」(シリーズ共通)
顕著な属性:無
プレイのきっかけ:東方ファンだから(プレイ前の期待得点…6点)
プレイ進捗状況:EX1人目クリアまで
あらすじ:幻想郷に花が咲き乱れた。放っておいても害はないが、いつになっても事態は収拾しないので、巫女らはこの事態の原因を探るため動き出した。
シューティングゲームに7点もつけていいのだろうか…。
我ながら疑問ですが、はっきり言っていわゆるテンプレートADVよりは遥かに読み甲斐のあるテキスト。
テキストと言っても、戦闘前後の敵味方のやりとり、そしてエンディング(そしていつものおまけテキスト)が全てなのですが、各キャラとも終盤のやり取りは実に興味深い。そしておまけテキスト。製作者と趣味が合えば7点という点数も頷けると思います。
というのも、説教が全面に出ているのです。珍妙かつ軽快なテンポで書かれたテキストなので、説教臭さはかなり薄いのですが。私はテキストゲーではそのメッセージ性というものに目がいく方なので、とても楽しませていただきました。
説教といっても、そのキャラを知ってないと理解不能な、珍妙なだけのやり取りもあれば、ハッとさせられるような鋭いものまで、ばらつきはありますが、それでもこの「ハッとさせられる」が好きでエロゲテキスト読んでるような私には、とても好印象でした。
さすが、ただのシューティングではない。
「いつもの東方シリーズ」である、弾幕シューティングとはかなり毛色が違います。
一言で言うと対戦型シューティングゲームなのですが(相手が死ぬまで自機を生存させれば勝ち)、ルールが少々細かい割にマニュアルの説明はかなり足りない、という悪い意味での同人仕様です。
以下、ゲーム音痴な私の感覚に依るものではありますが、相違点を書き連ねます。
・画面が常に2分割されているので動き回れるエリアは普段より狭い
・ランダム要素、運要素がシリーズ他作品と比べ高い →臨機応変の対応が重要
・以上2つの理由(特に後者)により、「美しい弾幕に酔いしれる」ということはない BGMと弾幕の同期も無し
・ただ避けるだけでなく、「自分から相手を攻撃する」感が強い。攻撃が防御を兼ねているので、「多少危険に飛び込んででも攻撃する」、というアクティブな行動も重要。
・通常モードとEXTRAモードでのプレイスタイルがかなり異なり、通常モードは普段の作品と比べてやり甲斐激減だが、その分EXTRAモードがやりごたえあり
・通常モードはEasyモードかつコンティニュークリアでもラスボスさえ倒せばそのキャラのクリアと見なされエンディングも確認できる。通常モードで全キャラクリアできたらEXTARモード開放
・オンライン・オフラインいずれでも対戦可能(オンラインは要それなりの準備)
といったところでしょうか。
それぞれのフィールドには、妖精(雑魚敵)や大小の弾、霊という3つの障害物が飛び交っています。プレイヤーは、弾を避けつつ妖精・霊を撃ち落とし、あるいは避ける、と、一言で言うとそれだけのゲームなのです。
ただ、霊はかなり堅いです。それを撃ち落すためには、霊を自分の周囲に張り巡らせた「吸霊フィールド」という範囲内に入れ、霊が地縛霊化したところを撃ち落とす、という手法を取る必要があります。
妖精およびこの地縛霊は、撃ち落とすことで周囲の小弾を巻き込んで消えます。さらに、これらの攻撃によって相手フィールドに妨害物を送ることができます。
つまり、的確な攻撃は自フィールドの難易度を下げるだけでなく、相手フィールドの難易度を上げることになるわけですね。
これとは別に、各キャラにはレベル1-4のチャージ攻撃が備わっています。それぞれ特性が違っており、
レベル1:やや強力な攻撃
レベル2,3:自機周辺の弾幕を一掃し、さらに敵フィールドにて自スペルカード発動
レベル4:ボムと同義。自フィールドの弾幕を完全に一掃し、さらに敵フィールドにて自機キャラ出現、強力なスペルカードで攻撃
これらのチャージ攻撃は、障害物を撃ち落とすことで回復します。
‥とまぁ、大まかなところだけ書けばこんなところです。
プレイした感想ですが、私はノーマルシューターですが、それでもノーマルモードノーコンティニュークリアを目指してプレイするのはやりがいもありましたし楽しかったです。それで得られるものは特にないですが。
そして、特にEXTRAが熱かった。当初は「こんなもんやってられっか!」と速攻で投げていたのですが、腰を据えてじっくりプレイしてみると、なるほどこれはスルメゲー。後から後から面白さがにじみ出てくる。むしろルールを完全に把握し、それを自分の都合いいように活かそうとする試みができ始めてからが一番楽しい。
ZUNさん(製作者)が楽しくデバッグしてておまけテキストにあまり時間割けなかったと仰ってましたが、ここに来てようやくその心境の一端に共感できた気がします。
感覚として、NORMALモードとEXTRAモードは、軽く別のゲームです。東方シリーズというとだいたいNORMALのグレードアップ版&コンティニュー無しがEXTRAって感じですが、本作に限って言うと同シリーズ別作品をプレイしているような感じ。なにせ推奨プレイ戦略が大きく異なるため推奨プレイスタイルも異なる。
なんというか、NORMALモードはじっくり音楽聴きながらだらだら頑張る感じなのですが、EXTRAは完全に毎回がガチ。デスマッチ状態で緊迫感もすごい。点数の跳ね上がり具合も波が激しいので、非常に濃いプレイとなる。その代わり音楽どころじゃない。
EXTRAがかなり楽しいです。21世紀のお一人様ユーザー、対戦するための友達がいない皆さま(というか私)でもかなり熱中する。これはぜひ腰を据えて楽しんでいただきたいです。
なにせヘタクソなので、NORMAL,EXTRAともにプレイ中は結構ストレスもたまりましたが、それは普段の東方シリーズプレイ中も同じですね。
といったところです。
シリーズ内では評価低めですが、「分かりにくい楽しさ」であり、また「東方ファンが求めているものとはちょっと方向性が違う魅力」なのでしょうね。
敢えて言おう、原作にリスペクト精神のない同人など死に絶えればいいと。(私は原作原理主義者)
いや…
音楽、最高でしょうこれ。
…と書いてしまっては身も蓋もないただの痛い文章なのでもう少し補足します。
まずはいつもの東方ミュージック。少しばかり和風テイストな、エスニック系の独特の耳触りの良いキャッチーな音楽陣。私みたいな耳音痴は速攻で虜です。
それはそうなのですが、他東方シリーズと異なり、ゲームと音楽の同期というものが存在しません。故に、音楽もそんなゲームスタイルを反映した、自由な感じのメロディが多い。
あと、東方シリーズの中でも「軽快にしてしっとりとした」という形容が似合う楽曲が多いような。そしてボス曲はいつものボス曲。今回の特徴は、ムーディさ+荘厳さですね。
…と、ここまで書いておいてあれですが、曲の半分以上は過去3部作の曲を微アレンジしたものでしかなく、新曲は半分弱です。微アレンジも、正直私はオリジナルの方が好きかなという印象。なぜって、やはりこれらの曲は「いつもの東方」ステージのBGMとして流れているのが一番映えると思うからです。
しかしだからこそ!残りの新曲の際立ちっぷりが凄い。この作品のゲームパートの魅力をさりげなく底上げする曲ばかり。
全てが全て私の琴線に触れたというわけではないですが、新曲の数が少ない分、私の琴線に触れた割合が極めて高かったのは嬉しかったですね。
ループでずっと流しておきたい、良曲揃いです。
ボーカル曲:無
同人で色々と独自設定がついたり、キャラ達もかなり愛されている東方シリーズですが、それも原作のこの独特のキャラの魅力あってのことだと思うのです。
全キャラ女の子ばかりだというのに、色気など皆無だし女らしさもあんまりない。
つまり、東方キャラの魅力は、色気で下駄履かされたような虚仮ではなく、本物の魅力だったんだよ!!!(AA略)
…まぁ、なんとも表現のしようのない、キャラ萌えとかと少し違う魅力があります。
この世界観の完成度を守る上で、声など蛇足、そう思うのです(ってこれ妖々夢レビューでも書いたな…)
人によるでしょうね…。多くの人はざっと全キャラプレイして終わりにする気が…。
オンライン対戦あるいはEX等にハマった方は、かなり楽しめるのでしょうけど。
EXにハマるのって、私かもう少し上手いくらいの腕の持ち主だけでしょうし、中上級者には少々物足りないかも知れないですね。
システム:画面サイズ固定です。
演出:レベル4チャージ技発動時、各キャラに合わせたキャッチコピー入りカットインが入ります。
絵:いつものZUN絵です。それぞれお楽しみ下さい。キャラが多い分絵も多いです。
値段を考えれば、音楽だけでも購入の価値は十分にあります。
そして、意外と奥深いゲーム性。私は対人対戦全くしてないので通常モードについては正直よく分かりませんが、EXTARモードのバランスには舌を巻きました。
テキスト、妖々夢(前々作)のテキストが好きな方にはたまらないんじゃないかなと思います。妖々夢キャラが出てるとかいう意味ではなく。
妖々夢のテキストや雰囲気が大好きな私、歓喜。
妖々夢の持つ暗さや哀愁は影を潜めたものの、それと雰囲気の似た切なさや死生観。そして満開の桜の花。
花に魂込めまくった(色々な意味で)素晴らしい作品だと思います。
(この作品については、プレイ後レビューでも触れています)
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