SWAN SONG

(執筆:2006/06/18)



メーカー
Le.Chocolat
(何なのだろうこのブランドは…。ラインナップのカオスっぷりに立ちくらみ起こしそうになります。
 一つ言えるのは、本作は「CROSS†CHANNEL」で有名なFLYING SHINEが絡んでいるということ。)



属性
ジャンル:VN&ADV
用途:読み物
舞台:現代の山岳部の街(大地震の直後)
顕著な属性:残酷,自閉症



テキスト:9
あらすじ:山岳部の街、雪降るクリスマスイブに突如襲ったのは、記録的大地震。
地震の去り主人公が再び立ち上がった時、街は壊滅的な打撃を受けていた。
遮断された交通網、静か過ぎる街、止まない雪。
道中で託された自閉症の女の子を連れて、辛うじて辿りついた倒壊していない建物、教会。
そこで出会った者達は、救援が来るまで協力し合い、自活していくが…


一言で言うと、「真の18禁ゲーム」です。
エロがあるか無いかではなく、「18歳以下の人はプレイするべきでない」「18歳以上の人こそがプレイするべき」、そういう作品に仕上がっています。

物語の展開は、「雪の中全てが破壊された街における、人々の生きるための闘い」という息もつかさぬサスペンス風に仕上がっており、それだけでもエンターテイメントとしてゲップが出るほど手ごたえのあるものになっています。むしろプレイ中はやりすぎだとさえ感じるでしょう。
しかし評価すべきはそこよりもむしろ、各登場人物の内面描写にあるのでしょう。各人の心のありようが視点変換によって丁寧に描かれており、その生々しさは凡百の「エロゲーキャラ」を越えています。
何を描き、何を描かないかの見極めも秀逸です。
自閉症の子という非常に冒険的なテーマを持ち出したのも賞賛に値します。(メインテーマというわけではありません。出番も非常に少ないです。)

ともあれ、ライターの真面目な本気さを感じます。
物語を最後まで進め、ライターの本当に描きたいものが見えてくる頃には、きっと何らかの大きな衝撃を受けていることでしょう。




ゲーム性:3
選択肢はかなり少ないです。そしてその多くが、バッドエンドに繋がります。
とはいえ、ゲーム性を感じるような選択肢ではないです。



実用性:4
元々そういうのを意図して作られてはいないと思われます。
もちろんそのようなシーンもありますが、なかなか生々しいシーンがほとんどです。
CGで直接描かれていない部分で、そういうシーンが散見されますが、それを実用に使うのは、色々な意味で猛者であると思います。



音楽:6
音楽の使用は全体的に控えめで、無音のシーンも多いです。常に音楽が鳴っている必要はないと思いますし、特にこの作品は無音の似合います。
曲数は、最近の作品としては標準的な20曲。それぞれ、BGMに徹している感があります。
とはいえ、その楽曲群がゲームの雰囲気作りに大きく貢献していることは確かであり、良質なBGMであるといえるでしょう。
なにやら、現代音楽っぽい曲が多い気がします。

ボーカル曲:2曲(OP曲:歌詞無し。ED曲:英語以外の何か)



キャラ:6
 主人公:尼子司。天才(だが人格破綻者)音楽家の息子である大学生。
     物静かで、感情をあまり表さない。
     天才少年ピアニストであったが、事故により右指が不自由。
 田能村:剣道道場の長男で、武術の達人。
     普段はそのような雰囲気は皆無で、金髪で朗らか、ユーモア溢れる好青年。
     危機的状況でも心に余裕があり、皆を良い方向に導く。
 鍬形:根暗オタク。人一倍心優しく、繊細な青年でもある。
    柚香に惚れている。
 雲雀:社長の娘である大学生。子供っぽい性格でわがままでもあり、素直な性格で
    思ったことはすぐに口に出す。
 柚香:雲雀の親友。穏やかな雰囲気の美人。よく雲雀をなだめる役に。
 あろえ:司が避難の道中に託された、自閉症の少女。年齢不詳。(18歳くらい?)
     人並みのコミュニケーションがとれず、周囲に関係なく自由奔放。

主要キャラはほぼこの5人…というかあろえを除く4人で、4人の視点が何度となく交代していきながら物語は進みます。
キャラの作りとしては一級ですが、「萌え」られるかというと、そういうものではないので、この得点です。
萌え要素が全然無いわけではないですが、あくまでおまけ程度です。



声:男女
フルボイス。脇役の一人にいたるまで声有りです。
主要キャラについては言うことなしです。脇役も、演技に不安を感じるものは特にありませんでした。
特に司と鍬形の声は良かったです。



時間:4
最近の作品としては短い方でしょう。
シナリオはほぼ分岐せず一本道で、それも、それほどボリュームのあるものではありません。減点対象というわけではないですが、物足りなさを感じたことは否めません。それだけ熱中してプレイしたことの裏返しでもあるのですが。



雑記
システムとしては、スキップ機能使用の際、人物の視点変化ごとにストップするのに少し不満を覚えました。それ以外は満足です。必要なものは全て揃っているのではないでしょうか。

目立った演出として、VNとADVが混ざっているという点です。つまり、画面の半分近くに文字が出ることもあれば、中央に数行のみ出されることもあります。
その中でも、文字が画面の多くを覆ってしまうとき、ノンストップで滔々と文字が出てくるのは少々圧巻です。とても付いていけません。しかもそれら全てに一人のキャラの音声付きだったりすることもあるのには驚きました。
お分かりでしょうか。キャラが、画面半分近くにも及ぶ文字分を滔々と喋るのです。
ともあれ、文字とCG(カットイン)の表示される場所は結構変動的で、視覚的に「ゲームプログラムで読む物語」を楽しんでいる感が強かったです。高級図書という感じでしょうか。デジタルコミックと呼べばいいのでしょうか。

CGは画面全体に出されるものもありますが、画面半分のみというものが非常に多く、その辺の表現方法も、なかなか類を見ない面白いものでした。

全体的に、エロゲーというより舞台演劇っぽい雰囲気を感じました。



お勧め度:8
各人物達の内面描写、風景、状況、音楽、全てにおいてリアリティたっぷりで圧巻です。
テキスト項で述べたような文章に興味がおありなら、ぜひプレイすることをお勧めします。





気に入り度:9
こういう作品こそ、18禁業界で出て欲しいのですが…。
他のジャンル(映画・漫画・アニメ・ドラマ・…)ではそうそう出せるものではありません。それだけ重厚で、深く、精神的未発達の者には有害ともなりえる内容でした。
シナリオ・音楽・演出・絵、全てが一貫して一つの世界を見事に演出し何かを描くということに成功したこの製作陣を賞賛します。
色々と冒険的試みや製作段階での議論も多かったと思われますが、これを無事プレイできてよかったです。




(この作品については、プレイ後レビューにても触れております。)


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