水月

(執筆:2007/06/29)



メーカー
F&C
(エロゲー老舗ブランドの一つ。ここ数年低空飛行が続いているようです)



属性
発売時期:2002年4月
ジャンル:VN
用途:読み物
舞台:現代、海辺の田舎町
顕著な属性:和風伝奇・哲学的・炉利・放尿
プレイのきっかけ:硬派な本格読み物エロゲーをプレイしたくなって。(プレイ前の期待得点…6点)



テキスト:7
あらすじ:記憶喪失の主人公。自分が何者かも分からぬまま、これまで親しくつき合ってきた友人達に囲まれながら新たな日常生活を送るが、毎夜見る、少女を自分が射殺す夢の正体に悩まされる。

かなり色々な要素の入り混じったテキストと言えます。狭い意味でのエンターテイメント的「面白い/面白くない」で言うと、多少幻想的ではあるものの基本的にそう起伏のない日常生活が続く感じでありむしろ「面白くない」部類に入るテキストだと思います。ただ、そんな主人公の日常生活自体に見られる様々な問いかけが、翻って私達プレイヤーの生きる世界というものへの問題提起となる、哲学的ストーリーともなります。のみならず、人の生々しい感情の交錯するドラマティック展開あり、萌え展開あり、伝奇的展開ありと、かなり色々と見所はありだと言えそうです。
伏線を作中で全て回収しないため、解釈はプレイヤーの想像に委ねるようなところも散見されるため、最初から答えの用意されている謎解きが好きなプレイヤーには不向きです。答えのない(あるかないか分からない)問いに対して能動的な姿勢でいられることが、ゲームを楽しむ上では必須でしょう。

私自身消化不良なので偉そうなことは言えませんが、ただ難解なだけでなく問題をシナリオのあちこちにばら撒くだけばら撒いてる感があり、もちろんその問題自体は興味深いものではあるのですが、あまりにもその問題提起の仕方が無責任すぎるのではないかと思います。そういう意味でも、プレイヤーの積極性と能動性が要求される作品と言えるでしょう。
真面目に色々考えれば、答えが見つからなくても色々と感じること、気づくこと、考えさせられることには事欠かないと思います。

テーマはかなり面白く独創的でもあるけれど、それを伝えるシナリオにやや難あり、という感想です。



ゲーム性:3
普通のADV形式ですね。好感度によりルート分岐。



実用性:5
炉利属性の人感涙。
ヒロインは全部で7人いますが、うち3人が炉利。
眼鏡っ娘とのHシーンは特に見所なかったですが、幼馴染とのHシーンは「愛を確かめ合う初々しいH」の中でも最高峰の出来栄えと言える神作。メイドとのHシーンや不思議系とのHシーンもなかなかそそります。

音声無しなので実用性はかなり低いのですが、テキスト+絵だけでいける人ならかなりの破壊力です。



音楽:6
良かったですが、あまり感じるものはありませんでした。

ボーカル曲:無し



キャラ:7
 主人公:名前変更可,性根は優しく真面目だが、一人で塞ぎこみ思い悩むタイプ。
 花梨:元気系幼馴染。くせっ毛ポニーテール。
 和泉:おとなしい系眼鏡。
 那波:主人公の夢の中に出る少女にそっくり。盲目の黒髪ロング。
 雪:主人公のメイド。
 アリス:教会の双子少女姉。ロングツインテール炉利。ツンデレ。
 マリア:教会の双子少女妹。気立ての良いショート炉利。
 鈴蘭:炉利好きでも射程範囲外の人がいそうなくらい炉利。

まぁ萌えゲーとしても良くできていますね。雪さん、炉利あたりは特に危険です。基本的に主人公モテモテ。不条理さを感じるくらい。
人によってはヒロインの一人が運命の人になる恐れもありかも知れませんね。具体的に言うと、メイド属性持ってるとヤバそうです。隠れた自分の属性に開眼するかも知れません。



声:無
私個人としては、音声ありが良かったなと。(作品によっては音声無しの方が好きな作品もあるのですが、これは違った。)
賛否両論でしょうが、音声有ならなお萌えゲーとしては秀逸だったんじゃないかと。ただ、この作品の高尚な薀蓄を気に入っている人には音声はむしろ余計かも、という感じです。



時間:4
VNとしては結構長い方、か標準的長さではないでしょうか。攻略キャラも多い割にそれぞれのルートもそれなりにある…。共通パートも多いですが。十数時間でコンプではないでしょうか。



雑記
システム面としては、スキップ機能の速度を最大限高めるためにはコンフィグを若干いじる必要があるのは余計な機能ではないかなと。(見た目重視か速度重視かの選択肢がある)
あと、画面サイズは600*480(だったかな)と一昔前のサイズですね。あと、ディスクレス不可なのが痛い。
演出面として強調したいのが、テキストが横書き・縦書き両方選択できるということ。縦書きテキストはもっと広まっていいと思ってる私は嬉々としてずっと縦書き表示で楽しんでました。
あと、立ち絵も鑑賞できるのはGood。こういうサービスももっと広まっていいと思うのですけどね。(個人的には背景も鑑賞できたらと思います。)
その他色々と細かいこだわりは見られますが割愛。

最後に、絵師。☆画野朗さんです。この業界でもトップクラスの人気を誇る絵師さんです。
私、基本的に黙々プレイしていたのですが、何回か立ち絵だけでハッスルしてしまいました。
初回版には原画集ついてます。私、原画集とか普段は全然興味ないクチなんですが、ともすると飛びかける魂を抑えるのに必死でした。



お勧め度:7
評価しにくいですね…。プレイヤーが何を期待しているかによって作品の評価もかなり変わるような。
まず、一般的に最近よく売れているゲームのような感動・燃え・伏線などなどを期待してプレイすることはお勧めできません。そうではなく、一風変わったテキストを楽しみたい、田舎町で起こる伝奇的物語にひたりたい、難解な文章に燃える、そういう人にこそお勧めなのではないかなと。あと、上述のとおり答えの用意されていない問いに積極的に向き合える人。
音声無しでも萌えゲーとして楽しめる人なら、萌え期待もありですね。 賛否両論でしょうが、音声有ならなお萌えゲーとしても秀逸だったんじゃないかとは思います。ただ、この作品に高尚さを見出す人には音声はむしろ余計かも、という感じです。

まぁ、現在DL販売の廉価版も出てますし、前向きに楽しめば損は無いんじゃないかと。人によっては神作になるかも。

あ、絵師好きなら是非買うべし。頑張って初回版を探しましょう。(通常版出てないかもです。実質「製品版」?手に取っての重さで分かるくらい重いです)




気に入り度:6
シナリオが私の好みでありませんでした。テーマは面白いと思いましたし、ヒロイン達の発言に考えさせられることもしばしば。その辺は評価高いです。過去にプレイしたどの作品にも類を見ないものも、何点かありました。そういう意味で、気に入り度6点というのは、「最低でもこの得点は堅い」という意味に近いです。(得点付け随分悩みました)
ただ、物語展開が退屈でしたね。よく言っているのですが、ルール後出しの超常現象を有りにしてしまうとシナリオを真面目に追う気がうせるのです。結局私は消化不良のまま終わってしまいましたが、考察を重ねれば得点もさらに上がるのでしょう。しかし考察を重ねる気が起こらない。リアルタイムプレイ日記までつけていた手前、最低限頑張って考察はしてみましたが。(プレイ後レビュー参照)
キャラに関しては可愛い子が結構いてて、むしろそっちで楽しんでいた低俗な私ですが、音声無しなのが残念であと一歩キャラゲーとしても楽しめず。
素材はいいのに装飾は駄目。そういう感想です。

最大瞬間風速:8点



(この作品については、プレイ後レビューにても触れております)



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