スマガ -STAR MINE GIRL-

(執筆:2020年08月-2020/12/25)

製作

NitroPlus
(エロゲーマーでなくてもオタクなら一般常識となったブランド。2000年の虚淵玄「Phantom」が処女作。)

属性

発売時期:2008年9月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代の仙台に酷似する仮想都市。ただしファンタジー要素有り。
顕著な性属性:炉利
プレイのきっかけ:エロゲ友達お勧め作品(プレイ前の期待得点…6点)
プレイ進捗状況:シナリオ最後まで到達、Hシーンは1つ未開放(見たくない)

テキスト:6

あらすじ:貴方は気がつけば遥か上空にいて、地上目掛けて落下していた。ついでに記憶も全て失われていた。
それを救ったのは、「魔女」3人。貴方が落下しつつある伊都夏市を、「悪魔」の襲来から守っている正義のヒロイン達。貴方は彼女達と伊都夏市で生活をしながら、彼女達が背負った悲劇的宿命を知り、それをなんとしたいと思うようになる。貴方には記憶がないが、たった一つ、他の人間や「魔女」達と違う特徴があった。死んでも、少し前からであればやり直しができるのだ。貴方の、人生リベンジが始まる。



まず本作の世界設定の一端をご説明させてください。
現代の日本の政令指定都市が舞台なんだけど、魔女「エトワール」と呼ばれる少女達が魔力を操り、悪魔「ゾディアック」と呼ばれる謎で不可視なエイリアン達の襲来を撃退し、都市や魔女達に被害や犠牲を出しながらも都市を守っている。都市の外に出たり中に入ったりすると(境界「グレンツェン」をまたぐと)記憶を全て失うため、都市の外との人的交流はゼロ。記憶喪失の主人公は、何度死んでも諦めない限りは生き返って少し前の時間からやり直すことができる。主人公はその力を使って、魔女達の助けになることができないかと模索する。
これでまだ一端です。悪魔「ゾディアック」とは何か?魔女「エトワール」とは何か?魔女達を管轄する組織「カルデア」とは?「カルデア」が抱える秘密とは?
といった風に世界設定が割とゴテゴテとあるわけです。そして、キャラ達によって「実はここ、こんな世界なんですよー!」って情報が段々出されるのですが、「まぁライターがそういう風に設定してならそうなんでしょうね…」くらいの感想しか抱かない。なぜなら、世界設定自体が魅力不足、リアリティ(説得力)不足なのです。これが、作品全体の魅力を押し下げた。私にとって本作一番の欠点がここ。変な世界設定なのですが、なぜそんな世界になっているのか、その必然性がプレイしていてもさっぱり見えてこない(=説得力がない)んですよね…。
結果として、シナリオやキャラの背後にライターの影が見え隠れ・・・どころか私にとっては、プレイ中は割と常に上空から糸でキャラやらシナリオやらを操っているライターの巨大なシルエットが常にうっすら見えていたような気分。
にも関わらず、本作が一般に高評価されており、本サイトでもテキスト点6点とさせていただいたのは、他の部分での魅力が多数あるからです。ライターさんの独特なノリで、それぞれ少しずつ濃くてそこそこ魅力的なキャラクター達がわちゃわちゃしているのが良い感じの雰囲気で描かれています。また、熱い展開ではそれなりに熱くなるし、鬱展開ではそれなりに鬱描写にもなるし、しかもそれぞれ個性的だし上手く世界設定が活かされているとも思うのです。シナリオを最後まで終わらせた時点で、プレイヤーの疑問も大きなものはすべて解消されていると思います。(私には未だ一部気になるのが残っているのですが。)そして、意欲的。ライターが情熱的に作品作りに取り組んだのが伝わってくる。
この舞台を使って、ライターが描きたいものは伝わってきますが、メッセージ性なんてものは特に無いです。ライターと同じ創作活動(二次創作ではなく)に携わる人であれば、共感できるんじゃないかっていうライターの思い入れみたいなのは一部感じ取れましたが。
なので、メッセージ性がどうだとか解釈がどうだとか七面倒臭いことはどうでもよくて、主人公ががむしゃらに頑張るシナリオを読みたいって人にはうってつけなんじゃないかなと思います。ヘンテコなキャラ達で彩られた、爽やかな熱血ものなのです。

ゲーム性:4

厳密には「ゲーム性」ではなく「ゲーム性を感じさせる演出」なのですが。
シナリオゲーとしてはかなり優秀な方にはいると思います。選択肢が本当に多数現れ、それらの選択によって文字通り主人公の生き死にが決まる(ように感じさせられる)という作り。本作の面白いところは、即死選択肢は多数あれど、即死=ゲームオーバー(プレイヤーによる少し前のセーブデータのロード)ではなく、即死してもあの世的なところで神様と主人公の反省会的なのが始まって、主人公が「人生リベンジ」を目指しまた少し前から復活(≒ロード)が始まるというところですね。
つまり、選択肢を選んだからといってその先でシナリオが(ゲームオーバーとして)終わってしまうため、その選択をプレイヤーが「なかったことにする」わけではなく、プレイヤーが選んだすべての選択肢の先には、その選択肢なりの主人公の未来があるため、本作プレイを通してプレイヤーが体験するシナリオは、そのプレイヤーだけのオリジナルシナリオという感を呈してくる。
この手法は別に本作独自のものというわけではないですが、この作りがうまくいっている作品であります。


実用性:4

際立って良いわけではないですが、悪くは無い。シナリオゲーとしては及第点以上です。
そういうシーンでは、意外とスイッチ入るというか、きっちりエロゲーです。

音楽:7

本作もう一つの見どころかなと思います。3曲ほど、本作を象徴するような特徴的BGMがある。
1曲目は「なんだこれ」っていう曲で、主人公がバッドエンド迎えて反省会(?)する時の曲。(BGM No.10)
2曲目は主人公が気合充分で頑張る時の曲。(BGM No.31)
3曲目は、魔女3人の戦闘テーマソング的なやつ。(どうしてもゲーム内サントラコーナーで発見できなかった)
多分本作プレイ済の人に、本作を象徴するBGM3曲選べって言ったらほとんどの人がこれらを挙げるんじゃないでしょうか。
個人的に2曲目は、本作関係無しに持ち歩いてずっと聴いてたい曲。他にも、割といい感じの曲が何曲か。

また、ボーカル曲も割と多めで6曲。OP曲、ED曲、メインテーマ、魔女3人それぞれのテーマソング(的な)。これまた、結構どれも良いです。
1曲は大槻ケンヂ作詞・歌。



キャラ:6

主人公:名前変更不可(というか記憶喪失のため無),まっすぐで、割と明るい好青年。
スピカ:魔女の一人。ツンデレというかほぼツンツンのお嬢様。
ガーネット:魔女の一人。巨乳メガネっ娘で丁寧語口調でややおっとり優しい超貧乏。
ミラ:魔女の一人。元気いっぱいで真っ直ぐなロリで、マッドサイエンティストのじいちゃんと2人暮らし。他人が嘘ついているか否かの見極め技能を持つ。
沖(苗字):生徒会会長にして、亡き軍人の一人娘であり、自衛軍の総帥。薙刀を振るい時代がかった口調。
日下部(苗字):新聞部部長。神出鬼没で超人的肉体技能を持つ。怪しいきぐるみを着ていることが多い。超絶ムッツリスケベでしばしば暴走し、消化器で攻撃してくる。

キャラ萌え的なゲームではないんですが、ていうかキャラ萌えという語は既に死語と化していますが概念はきっちり生きていると信じているので他に語も無いんでそう表現しておきますが、キャラゲーなんですよね、本作。多分。サブキャラ含めそれぞれ個性豊かなキャラ達が噛み合ってシナリオが進む的な。
一見メインヒロインっぽいキャラ達は正直若干パンチ力不足なんですが、一見メインヒロインに見えないキャラ達が良い味出していて、あとこの手のゲームおなじみ、主人公の貴重な男友達1名が実に良いキャラしている。
特に日下部はエロゲヒロインにあるまじきぶっ飛びっぷりで、全くヒロインに見えない。
これが
これが
ヒロインなんですよ!!!

このヒロインも良いですが、私的一押しは神様(幼女)です。
逆に、シナリオ展開上仕方ないというのも分かるのですがスピカとガーネットはもう少し魅力引き出してあげられなかったのかと惜しまれる。シナリオ後半戦もスピカのデレはもっと見たかった。

声:男女

男女フルボイス。途中から主人公までフルボイス。
主人公ボイス、これがまた本作主人公キャラによく合っている、癖も嫌味もない良い声ですね。Hシーンもよく頑張りました。(Hシーンだけは主人公ボイス収録すんなっていうのは何度でも強く要求する)
主人公の友達ボイスも実に良い。ヒロイン達のボイスも実に良い。この点は減点無し。サブキャラは、まぁその。爺さんボイスできる人がエロゲ業界では超貴重なのか、いっっっっつもこの人だなという印象。この人、悪くはないけど決して良くもないんですよね…。
まぁ「いっつもこの人だな」問題はヒロインでも同じですけどね。
スタッフロールでのキャスト見て某キャラの一人の中の人が一色ヒカルさんなことには本気で感動した。2回感動した。私、この人がエロゲ業界で一番上手いと思ってるんですけど、さすがに世代がね…。
プレイ中は全く気づかなかったんですが、そうか、一色ヒカルさんかー。やっぱり一色ヒカルさんは最高やでとプレイ後、改めて思ったのでした。

時間:5

長!なっが!!!マジなっが!!!!

最初プレイしている時はまさかこんなに長引くとは思ってなかったので、余計長いと感じました。
と思いながら私一度このレビューを書き終えたんですよね。で、レビューのアップロード前に他のサイトでの評価も読みに行ったんですが、それで椅子から転げ落ちましたよね。だって私がコンプだって思った時点で進捗がまだ70%に届いてないって分かったんだから。
長い長いと聞いていないと、ここまで長いと思わなんだ。なので口酸っぱく申し上げます。マジで長いからこれ。
もう一つ申し上げたいのは、無理にコンプ目指さなくていいってこと。コンプには到達しなくても、グランドフィナーレには到達できる設計になってる。なのでグランドフィナーレだけ迎えて、後は気が向いたら進める、みたいなプレイスタイルも大いにありだと思う。コンプしなくちゃしなくちゃとか思いながらやってたら嫌いになってくるかも知れない、この作品。
このあたり、あまりにもアレなんで簡易攻略ページ作っておきましたので、若干ネタバレにはなりますが(攻略ルート的な意味で)よろしければご参考ください。

その他

システム:私的にぜひほしい、クリックで音声中断のON/OFFをはじめ、システム面に不満はないです。
演出:「ゲーム性」項で述べた通り、本作の構成自体が演出と呼べるでしょう。また、本作ならではの愉快な特徴として、プレイを終えて本作プログラムを終了すると、ウィンドウ閉じる前に寸劇が始まる。これ良いですよね。しかも、それらの一部はシナリオ進行に合わせて変化する。

お勧め度:6

とにかく、手抜きなしでがっちり作り込んであるんですよ。作品全体トータルでの質ではかなり高い。さすがニトロプラス。本気で。
あとは、肝心のシナリオの問題だけですね。
まず、込み入っている割にさほど魅力・説得力ある世界設定でもないというのがどれだけ気にならずにプレイできるか、です。ただ、そこに注意を向けなければ本作自体成立しないし…。決して、世界設定が破綻しているとか目立った粗があるというわけでないのですけどね…。
ライターが頑張って練り上げた独特の世界設定の中で繰り広げられる、魅力的なキャラ達・主人公がより良い未来に向かって進む作品、という感じです。ノリは全体としては明るいが鬱々とした展開率もまぁ高め。
もうひとつのシナリオの問題は、とにかく長いってこと。長いし、これは私個人の評価ですが、もっと圧縮しスリムでよりハイクオリティにできたと思う。この長さを各プレイヤーがどう感じるかという点です。
例えば爆笑ポイントが5つある5分間コントと爆笑ポイントが同じく5つある3分間コント、どちらを高評価するのかって話だと思います。私は、よりスリムで内容が凝縮している3分間コントをより高評価したい。でも、笑った総量が同じなら、より長くそのコントの世界に浸れた方がお得だよねって人もいると思うのですよね。本作って、そういうところある。笑いだけが評価ポイントとは限らないというか。この点は「気に入り度」項で後述。
繰り返しになりますが、主人公が真っ直ぐ頑張るものが好きな人には強くおすすめ。特に、安易なバトルものに飽きている人には。
本作の大きな特徴の一つとして、バトルシーンも無いわけではないのですが、基本的に主人公は(殴る蹴る斬るといった)物理バトルや頭脳バトルをしないというのがあります。これもまた、意欲作だなと思います。
何かと意欲作ですよね、本作。


気に入り度:5

上の「お勧め度」を読んで本作に興味湧いた未プレイの人がいたら、これ以降のフォントを反転させたりせず通販サイトでもDL販売サイトでもソフマップにでも直行してください。
ほら、お勧め度6点ありますから。大丈夫!


なんか、まずライターのやりたいコンセプト「主人公が何度でも生き返ってハッピーエンド目指して邁進」があって、それに血肉を与えるためあれやこれやの世界設定が作られたんだろうなーってのが、割と全編通して濃厚に感じ取られて、今一つこの作品の世界に没頭できないなぁってのが、私が序盤過ぎから終盤までプレイ中ほぼ一貫して抱き続けた正直な感想です。
世界設定があまりにも恣意的すぎて、鼻につくんですよね…。もう少し世界設定の謎の部分は薄めて(つまり小出しにしたりせず)、キャラ達とのハチャメチャや主人公の頑張りだけでシナリオ展開してくれたら、もっと高評価になっただろうなぁと思うのでした。
もう一個は、やはり「長すぎ」問題。手抜き無しなのは繰り返し申し上げた通りなのですが、だからシナリオも高品質かっていうと、ここは疑問に感じました。パーツが良いからこそ、組み立てでブラッシュアップしてほしかった。気に入り度がお勧め度より1点減って5点なのは、そこ。コンプしてつくづく感じたのが、「もったいないぞ!!」ってこと。プレイしていて、変な間延びというか冗長さのようなものを感じた。「次はどうなる!?」が薄れ、「まだあるのかよ…」という気持ちが再三湧いた。で、プレイ体験の質が下がった。もっと圧縮して似たような展開部分は削ったり統合したり小分岐にしたりしたら、私的にはもっと高評価だった。お勧め度・気に入り度ともに7点8点だって十分有り得た。だからこそ、もったいないとひしひし感じた。以上、個人の感想です。効果を保証するものではありません。実際、多くのプレイヤーに好評なようなので、その点は繰り返し申し上げます。
でも、手抜き無しで作り込まれた本作、非同人であり商業作品であるエロゲの面目躍如という感じで、好きですよ。当サイト全体的に点数低く付けているんであまり感じられないでしょうが、評価項目のどれを見ても及第点以上あるっていう。(唯一かろうじて下回ったのがこの気に入り度っていうね)
本作主人公って、何度でもやり直せるテレビゲームの自キャラ(自機)的な存在だというのは上述したとおりですが、私にとってはピンボールの玉というイメージです。打ち出されたボールのように軽い命の主人公が、遥か上空からの自由落下を起点としてどこに終着するのか。ゲーム感覚のポップさ・チープさと、ボール自身の奮闘による別の未来(着地点)の探索。「人生にリセットボタンは無い」などと言うが、何度でもリセットしてやるぜという熱意。その熱意の源泉にボーイ・ミーツ・ガールを持ってきたという。
最後にまたネタバレ有りのためフォント反転です。
でも、その源泉は、スピカじゃないですか。本作って、スピカの物語というわけではないので、本作全体を見ると主人公の頑張りの源泉が、動機として弱いんですよ。だから、もうちょっと展開をどうにかしたら、さらに良シナリオゲーになったんじゃないかなとも思います。



この作品については簡易攻略ページでも触れています。


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