殻ノ少女

(執筆:2008/12/14)



メーカー

Innocent Grey
(大正・昭和の時代を舞台にしたミステリー作品を出すことで有名。音楽と絵に定評有り。)



属性

発売時期:2008年7月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:昭和31年東京
顕著な属性:黒髪
プレイのきっかけ:メーカー買い(プレイ前の期待得点…6点)
プレイ進捗状況:エンディング到達まで。CG未コンプ。



テキスト:5

あらすじ:探偵「時坂玲人」が受けた、2件の依頼。1件は、元同僚の刑事からの依頼。巷で続発する、少女ばかりが犠牲となる連続猟奇殺人事件。そしてもう1件は、とある少女から受けた「本当の私を探してほしい」という依頼。

シナリオにはそれほど見るべき点はありません。連続猟奇殺人事件の推理サスペンスである割には、緊迫感も盛り上がりも控えめな印象。
作品の質を底上げしているのは、テキスト、キャラ、音楽の3点でしょう。キャラと音楽については後ほど触れます。まずはテキストについて。
基本的に、そう光るものがあるというわけではありません。ただ、昭和31年という世界観を壊さず、その舞台ならではの描写を丁寧にしつつ、独特の雰囲気を醸し出すことに成功していると思います。 飛びぬけて良いテキストというわけではないですが、決して悪いものではない。落ち着いた感じの、くだけたわけではないが堅いわけでもない、安定したテキストがなかなか良い感じ。
しかしこれがInnocentGreyの作品であることを忘れてはいけません。 InnocentGrey慣れしていなかったり、ライターは本作が処女作だからと油断していたりすると、終盤には
「え…?いやいや。ご冗談でしょう?」
とモニターの前でフリーズすること必至。いい感じの雰囲気だからと油断しているとこのブランドはすぐにこういうことをする。
イノセントグレイというのは、ある意味、エロゲ業界で最も狂気染みたブランドだと思います。その辺を念頭に置いて、ナチュラルに異常なこのブランド作品をお楽しみ下さい。もちろん褒めてません。



ゲーム性:4

基本はよくあるADVなのですが、本作はそれに加え「操作パート」「推理パート」というシステムが存在します。
操作パートでは、画面のあちこちをクリックすることでその部分を操作し、異常や手がかりがないか調べるというもの。これは、はっきり言って少々面倒です。アイデアは面白いと思うのですが、ここに重要な手がかりがあったりして、しかもそれが見つかりにくかったりして、何十回もクリックする羽目に遭うことも。
推理パートとは、操作パートやADVパートで集めた情報を元に、その情報をチョイスして主人公が推理を進めるというもの。これは良くできていたと思います。自分が頑張って集めてきたネタを元に推理をするというのは、プレイヤーが能動的にゲームを進めている感が出て、なかなか面白い企画だったんじゃないかと。
この2つのシステム、改善の余地はあるものの面白いものだと思いますし、普通のADVに逃げず積極的にこういうシステムを採り入れたことは評価に値すると思います。
…ただ、それらに加え、毎日2回複数の場所から移動場所を選択させるシステムはやりすぎ。
やたらと選択回数が多い上に、ゲーム自体の難易度も決して低くはなく、さらに単に攻略するだけでなく個別キャラのシーン回収用の選択肢があったりと、プレイヤーが強いられる作業量が半端ない。
正直私はこれで力尽きました。一度クリアした後も、途中までは個別ヒロインのシーン回収に奔走していたのですが、得られるものの割にかかる作業量の多さにうんざりし、ギブアップ。
イノセントグレイさん、アイデアは面白いと思うんで、その、もうちょっと、ユーザーフレンドリーさを、ね…。



実用性:4

絵が綺麗ですし、使いたい人はどうぞ。私には無理。
ただ、それなりに尺も長いですし、この絵でいけるという人にはなかなか美味しいかも。
あと、あまり言いたくないですが猟奇趣味のある人も…



音楽:7

おなじみ、LittleWingのmanyoさん作曲。
私としてはカルタグラのBGMが最強、PPもなかなか、和み匣が微妙な出来で、本作はPP未満和み匣以上、という感じ。悪くはなかったです。
一つずば抜けてよかったのが、OP曲。カルタグラの時と言い、LittleWingは本気出すと半端ないです。

ボーカル曲:1曲



キャラ:6

主人公:時坂玲人(名前変更不可)。カルタグラの主人公と友達。探偵。あまり有能だという感じはしませんが一応それなりに有能だという設定の模様。落ち着いた感じの無難な人柄。ただし第一人称は「己」と書いてオレ。
朽木冬子:「本当の自分を探してほしい」と主人公に依頼した女子校生。風変わりでさっぱりとした性格。
時坂紫:主人公の実妹。Hシーン無し。両親を亡くしてから兄と二人暮しをしているが、兄思いで甲斐甲斐しく世話をしてくれる。朽木冬子と同じクラス。
その他:結構数多く出てきます。女学生が多いです。

テキスト項で褒めましたが、このライターさんのしっとり落ち着いたテキストで描かれる、微妙に萌え要素の混じったキャラ達が、なんとも良い感じ。個人的には実妹の紫が一番良い感じで、続いて冬子と歩、という感じなのですが、なんといいますか、感情でぐらぐら揺さぶられるというよりは、理性的に「このキャラはいいよね。」と友人と意気投合するような、そういう良さ。



声:男女

男女フルボイスです。
キャラ音声はオーディションで選ばれたので、素人さんも混ざってますが、メインヒロインである冬子はなかなか良かった。玉を転がすような声というか。耳に心地よい感じです。



時間:4

ADVとしては普通の長さです。そう長くはない。攻略に手間取るので長く感じるかもですが。



その他

システム:特に不満は無し。
演出:犯人視点だと縦書きになったり、演出も例によって良い感じでした。
なにより、OPムービーが素晴らしすぎる。2008年エロゲで最高傑作ではないかと思う。これだけで売り上げが大幅に上がったに違いない。本当に素晴らしいので、購入迷われている方は見ないことをお勧めします。見てしまうと思わず購入してしまうから。



お勧め度:5

良く出来ていると思います。減点ポイントもほとんど無く、雰囲気ゲーとしては素晴らしい出来。
先述したとおり、テキスト・音楽・キャラは良い感じですし、新システムも意欲的で面白い。ゲームバランスはかなり悪いですが。

それにも関わらず5点なのは、ひとえに物語のプロットがひどいから。
もうね、イノセントグレイ大満足だと思うんですよ。やり遂げたーというか、オレの美意識を作品に詰め込んだー、というか、そういう達成感が伝わってくる。
これだけやったんだから、叩かれても本望ですよね。
ええ。普通に考えると、これはないわ。

普通に考えない、イノセントグレイの退廃的で虚無的な美意識に共感される方には超お勧め。




気に入り度:5

とりあえず言えるのは一言、素敵なOPムービーと妹をありがとう。
私みたいな凡俗にはあのプロットを考えた人物の頭の中は全くもって理解不能ですので、この点数とさせていただきます。私なんかは本作でイノセントグレイにやられたのはもう3回目なので、いい加減学習してこのブランドから足を洗わなくてはいけないような気がします。
私個人としては、発売前から公式サイトに粘着し、きっちり発売前イベントにも参加し(LOT30)たので結構楽しめましたが、楽しみ方が、その、普通にプレイするのと結構違う楽しみ方になった気が…。
その辺については、後述のプレイ日記で詳細触れております。楽しかったのは楽しかったのですが、作品自体を評価するならこの点数止まりですね。なんといっても、最後までモチベーション続かず終プレイ終盤(お話上の終盤ではなく)はゲーム起動する気が起こらなかったのが大きい。
というわけで、それにともないプレイ日記も突然終わります。ごめんなさい。




(この作品については、日記にてリアルタイムプレイ日記を掲載していました。)



殻ノ少女 [Innocent Grey]
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 いただいたコメントには後日日記にてありがたくレスさせていただいております。


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