PP-ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞

(執筆:2006/11/11)



メーカー
Innocent Grey
(前作「カルタグラ」が処女作。良質な音楽と絵、雰囲気作りが好評であった。)



属性
発売時期:2006年9月
ジャンル:ADV
用途:読み物、音楽
舞台:1936年(2.26事件・安倍定事件の年。まぁ本編にはそれほど関係ないですが)
顕著な属性:ジャズ音楽,美男子
プレイのきっかけ:前作では根幹のシナリオ以外非常に満足のいく出来だったので、ブランド買い。(プレイ前の期待得点…4点[プレイ前に世間の評価を聴いたため])



テキスト:6
あらすじ:バーでのピアノ弾きを生業とする主人公はある夜、突如襲い掛かってきた芸伎と乱闘になる。何とか叩き伏せるも、翌日にはその女の死亡が報じられ、お尋ね者となる主人公。バーもクビになった主人公は、勧誘された裏組織で働くことになるが…

テキスト自体は、なかなかよく出来ていますね。それほどギャグが効いているわけでもないですが結構笑ってしまうこともあり、後述しますがキャラ達は魅力的です。物語もよく練られて作られている印象を受けました。さすがプロと思わせる表現や言葉選び、背後にあるテーマ、etcetc…。
感情を排除して客観的に見れば、まずまず良質のテキストだと思います。
テキスト単体ならね。



ゲーム性:3
普通のADV形式。
選択肢は多め、難易度も高めです。



実用性:4
巨乳属性が2人いるので、その筋の人には嬉しいかと。
あと、実妹との結構濃厚なHシーン有り。その筋の人には嬉しいかと。
Hシーンでは男の絵も結構入ってきてます。さらに、主人公(美男子)が女王様キャラの女に屈服して股を舐めたりしているシーンも3シーンほどあり。これもその筋の人には嬉しいかと。(私自身はこれに対して「ぶっ殺すぞ!」と言いたい。舌っ足らずに言いたい。)

まぁ… 2点ほど、妙にコアですね。
シーンそれぞれは最近のゲームにしてはやや短めですが、何とか実用性は保っているかと。猥音もそれなりに。



音楽:8
ジャズですもの。この業界からジャズが出ましたよ。それだけで、評価せざるを得ないです。一つの拍手喝采です。まぁよく頑張ったと。こういう意欲的なことには、無条件でまず褒めてあげたくなりますね。
で、実際の出来ですが、私自身はジャズというジャンルはあまり好きではなく、造詣も全然無いのです。よって本作での音楽も、それほど心打たれたり気に入った曲があったりとか、そういうことは正直特に無いのですが…
しかし、なんだかんだいって初回版付属のサントラは結構聴いております。繰り返し聴いております。「気に入ってる」…ひょっとしたらそうなのかも知れません。
ゲーム内での使われ方も、絶妙とは言いませんが、良いですね。場面場面に合った音楽が、全てジャズで流れてくる。これって、これまでありそうでなかったですよね。一番手はいつも偉大です。コロンブスの卵。
ボーカル曲が3曲。これらはどれも良い。個人的には特にOP曲が好きですね。片霧烈火さん霜月はるかさん唄(2018/11/10修正。曲名は多分「蝶」)。
音楽が最大の売り物となっているだけあって、さすがという出来です。
広い意味での感動は特に無かったので9点以上はつけてませんが、広い意味での感動も無しに8点がついたのは、当サイトでは初めてですね。

ボーカル曲:3曲(OP,挿入歌,ED)



キャラ:7
 主人公:名前変更不可,序盤は「ハッ」が口癖。ピアノが弾けて喧嘩が少々強く美形。
     残念ながらそれ以外の魅力は何も無し。
     今回は前回以上に役立たず兼脇役以下の扱い。
 綾音:パッケージの絵の娘。主人公のピアノファン。
    明るく自由奔放な性格、貧乳がコンプレックス、推理好きで勘が鋭い。
 美華夏:幼馴染。爆乳。面倒見のいい性格で、主人公のことが放っておけない。
 柚芭:実妹。ベタな妹キャラ。主人公大好き。
 千夏:バーの店員。柚芭の友達。ベタな眼鏡っ娘。(内気でワタワタするタイプ)
 璃宝:バーの歌い手。お姉さんキャラ。
 御堂:バーのマスター。渋い。
 琢磨:警官。幼馴染だが、主人公とは何故かお互い反発しあっている。
 久遠:謎の天才少女。物静かで感情を表さない。
 荒田:たこ焼き屋の親父。腕は前作より落ちている(というか論外)。

どのキャラも、ベタな性格しています。ベタということはつまり王道でもあるわけで、実際のところテキストの楽しさの8割を担っているのがキャラクターによるものだと推測されます。(後述)
男キャラも、まぁその…視覚的にはカッコいいのですが…。キャラ的にも、決してカッコ悪くは…ないはずなのですが…
まぁ、その、あれだ。「テニスの王子様」ファンの女性とかにはウケ良いのかも知れませんね。
これも後述します。
とりあえず、男性陣の男前っぷりには、決して期待しないように、と。



声:男女
フルボイスです。
各キャラ、まぁ、特に女性陣は安定した演技が見られます。
私には、主人公の声(あります)が、駄目だと感じられました。
たこ焼き屋の親父声は今回も素晴らしいのですが、生憎と本編のシナリオ展開とは一切無関係な親父なので…



時間:4
標準的なADVゲームくらいの長さです。



雑記
システム周りは、まぁ一通り揃ってますが、正直不満足。一昔前なら最高レベルを誇れたのでしょうが、今となっては標準。何より、前作から全く進歩が見られないのが…。

演出面は、あります、アクション。カットインもあります。それらによって物語は盛り上がりますが、時としてプレイヤーをドン引きさせることも。
一言で言うと、臭いのです。ベタなのです。チープなのです。
時代物ということですが、前作に比べればはるかに雰囲気も出てません。がっかりです。

絵ですが、立ち絵は、一部「この立ち絵からこの立ち絵への変化は無いだろう…」と思うようなところもありましたが、基本が綺麗ですし満足。表情変化も(特にジト目とか)可愛らしいですね。ただ、一枚絵CGと通常の立ち絵の乖離が少し強いように感じました。CGの方は綺麗さが、立ち絵では可愛さが際立ってるので、そのギャップだと思います。



お勧め度:5
当サイトとしては、決してお勧めはいたしません。以下、その理由を。

カンタンに言うと、これ以上無いほどちぐはぐな作品。あれやこれやと要素を張り合わせただけのモザイクを見ているよう。
テキストも結構魅力的。キャラもまぁまぁ。音楽は素晴らしい。声にも問題無し。だけど、決して良作だなんて言えない。これを良作だというのは、他の良作に失礼です。
なぜか。
・主人公が主人公として機能しない(物語展開に流されるだけ)
・脇役達がストーリーを構成し、脇役達がストーリーを終わらせる
・「連続猟奇殺人」という毒の強すぎる異分子(にして物語の主軸)が他の「ジャズ音楽」や「萌えキャラ」といったものに全く溶け込んでいない
他にも色々ありそうですが、まぁこんな作品です。
そのため、せっかく美形揃いの男キャラ達もそういうのに振り回されてしまい、彼らの活躍シーンもこちらは冷めた目で見るだけ。もしくは、彼らが活躍する理由が分からず呆然とするだけ。完全に置いてきぼりです。
その辺は、人気投票にも表れてます。あれだけ男前っぽく描かれてるマスターが、人気投票では最下位から2番目でしたからね。キャラクター性など霞んで見えなくなるほどの、圧倒的物語展開!

これはひどい。
そんな言葉が、ぴったりと合う物語です。「シナリオ展開」に重きを置く人にとって、これほどの地雷ゲーがあるでしょうか。
…とは言え、ある程度この辺のことをプレイ前から分かっていれば、意外と楽しめるんじゃないかな、という気もします。私自身、途中からこの作品の楽しみ方に気づき、指差して笑うことでクライマックス辺りでなかなか楽しい時間を過ごさせていただきました。
とまぁ、「シナリオ展開」にだけ目を瞑れば、我慢に我慢を重ねれば、そう悪くないです。何せ要素要素はシナリオを含め良い(もしくはそう悪くない)のですから。大筋の展開だけが駄目なだけで。物語の裏に秘められたテーマもなかなか面白いものですし、そういう意味で、ここまで読んで下さった方には、お勧め度+1点くらいはしてもいいかも知れない。
音楽は気合入ってるし、絵は綺麗だしキャラは悪くないし、この辺お目当てで購入してみるのも悪くはないでしょう。




気に入り度:6
暴走したエロゲーってのを垣間見た気分。
何が気に入らないって、ジャズ音楽なんていう秘密兵器を使っていながら、まだ萌えキャラでプレイヤーに媚びてくることですね。ここまでお洒落を気取るなら、徹底的にやっていただきたい。かといって萌えゲーとしては役者不足もいいとこですし。全てにおいて中途半端なんですよ。

とはいえ、大失敗の演出(広い意味で)の最たるものだけれど、その背後に潜ませたテーマについては一考の価値有りだと思います。それが無ければ4点5点ですが、6点(まぁ満足)とさせていただきます。





(この作品については、攻略・プレイ後レビューにても触れております)



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