マブラヴ オルタネイティヴ

(執筆:2009/08/02 2010/01/06誤字や読みにくい部分手直し)



メーカー

age
(「君が望む永遠」「マブラヴ」シリーズで有名な、大手正統派シナリオブランド。ruf系列。)



注:当レビューは、「マブラヴ」未プレイの方も対象にしたレビューではありますが、「マブラヴ」続編である「オルタ」を語る上で避けられない、「マブラヴ」のネタバレがございます。程度は必要最低限に抑えたつもりではありますが(「マブラブ」プレイ前に当レビューを読んでも「マブラヴ」の面白さがほとんど減退しない程度)、ご閲覧いただく際はその点についてご理解・お覚悟下さい。



属性

発売時期:2006年2月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:SF世界(地球外生命体と戦争中)
顕著な属性:(ネタバレ回避のため伏せ)
プレイのきっかけ:皆が「魂」「魂」と高評価しまくるから、気になって。(プレイ前の期待得点…8点)
プレイ進捗状況:エンディング到達



テキスト:8

あらすじ:武が目覚めた時、前作Unlimitedのスタート地点と全く同じ、ただしUnlimitedラストの時点での知力・体力がほぼ保たれた状態であった。武は、より良い未来のために古巣に戻る。

震える!痺れる!
物語は先に進めば進むほど魅力を増す構造になっています。序盤は割と淡々と物語が進行しますが、次第に高まっていく緊張感。また明かされていく真実を積み重ねるうちに、気がつけばずっと「震える!痺れる!」状態。SF世界・SFモンスターを用いた、仮想戦記物とパニック物との見事な融合……すなわち、戦争物でありながらエイリアンの恐怖が体感でき、パニック物でありながら部隊や軍団が組織的に動き、兵士が搭乗する戦術機が現実離れした派手なアクションを展開する。
さらにそれらの裏で描かれるのは、主人公達の成長であり、戦友との固く熱い友情であり、また純愛である。
…とまぁ、これが面白くないはずがない。
プロット・シナリオには文句なしです。中盤、とある事件が起こってからは、プレイしてる私の方がUnlimited状態、先が気になって、また興奮に次ぐ興奮で、全くプレイを中断できない。こんなにのめり込んだのは久々です。

以下、テキスト・メッセージ性について述べます。
まずテキスト。相変わらず魅力に乏しいのっぺりとしたテキストではありますが、結構難しい話(観念的な話とか)が増えたのでちょうど良いかも。難しい話をかみ砕いて説明し直したり、好感は持てます。感動シーンも、あまり感動させようさせようというねちっこさがないのはいいのですが、逆に少々あっさりすぎて、もう少し盛り上げても良かったんじゃないかなと思いました。これはもう個人の好みのレベルで、マイナスというわけではありません。もう少し説明的会話をコンパクトにしてほしいですが、これをはしょりすぎるとプレイヤーが感じる世界設定のリアリティや感情移入度が大幅低下しかねないので、案配の難しいところですね。
で、コンセプトとメッセージ性。作品の熱さからすると意外なほど、メッセージ性は希薄です。むしろマブラヴの方がメッセージ性は高いと言える。
世界設定が特異すぎる故に現実との断絶が発生し、物語世界での感動も、現実に還元するには至れない。本作には感動するシーンや台詞が多々存在しますが、それらは「作品のメッセージ」には至らない。つまり本作は純粋なエンターテイメント作品であり、メッセージ性だのなんだのというのは不要であり、蛇足です。
各人が何を感じ、それをどう現実に還元するかは自由ですが、作品からの積極的メッセージは無い。そう言って差し支えないしょう。

ライターの一人である鬼畜人タムー氏は、私が知る限りエロゲ業界最凶のドSライターであり、私としては、氏が展開したとしか思えない重厚なドSシナリオが本作最大の見所でした。



ゲーム性:3

選択肢は最低限。一本道と言って良いでしょう。物語に集中して下さい。



実用性:2

一応そういうシーンもあるにはあるのですが、「無い」と思っておいてちょうどなレベル。極めて少ない。
極一部の「選ばれし者」達にとってはなかなか美味しいシーンもあるかと。



音楽:5

特に印象に残ってません。かと言ってBGMが悪かったというわけでも、無音だったというわけでもなく。多分BGMに徹した癖のないものだったのでしょう。

しかしなんだか爆撃音とか爆砕音ばかりが耳に残っています。

ボーカル曲:3曲(1曲はマブラヴと重複)



キャラ:4

主人公:白銀武(名前変更不可),本作にして、ついにageのお家芸「ヘタレ」属性が本格搭載!かっこいいばかりの主人公ではないということ、胆に銘じてプレイしましょう。エンディングに到達するまでは我慢の子です。
その他:マブラヴとほぼ同じ面子。キャラの掘り下げはほとんどありません。掘り下げられるのは各キャラの持つ背景のみ。
追加キャラ:意外と多く、サブキャラとして追加。優秀なお姉さん達です。

キャラ得点が、前作マブラヴ(7点)から大幅低下!
…シナリオもグッとシリアスになり、個別キャラの掘り下げは前作であらかたやってしまった、愛に溢れるHシーンもやってしまったとなると、これ以上個別キャラに焦点をあてるのは止めたというのも納得できます。仕方ないですね。
確かに一部キャラはまだ掘り下げが行われていませんし(某霞)、追加キャラもいるので一概に「キャラ萌えは無い」と断じるのは早計ですが、前作マブラヴと異なりそもそもがそういう作品ではなくなっているので、その辺はおまけ程度に考えておくのが妥当でしょう。



声:男女

男女フルボイス、だったと思います。
一部、聞いてて恥ずかしくなるようなものもあったけど、大体及第点ではないでしょうか。主人公も時々喋るよ!(でもHシーンのフルボイスだけは勘弁して下さい。)



時間:5

多分、非常に長かったのだと思うのですが(fateより少し短いくらい)、私は若干の物足りなさを感じました。もう少し長くても良かった。
つまりそれだけ没頭してプレイしたということです。



その他

システム:前作と同様。ただし、2006年発売のくせにCGもシーンも音楽も回想モード無し。
演出:前作をプレイしていれば質・量ともに期待通り。エロゲとしてはK点遙か越えと言える異常なまでの演出量。本作の見所の一つです。



お勧め度:9

主人公が意外とパッとしない、設定等の説明の尺が長すぎる、特にメッセージ性無し、以上の3点だけは心に留めておくと良いでしょう。逆に言えば、それ以外は文句無し。エンターテイメントとして極めて秀逸。燃え有り、スリル有り、感動有り、まさかの展開有り。そしてきっと貴方は、キャラ達の生き様に魅了されることでしょう。
本当に、プロット、シナリオは素晴らしい。あと3,4回素晴らしいを連呼したい。
エロゲではなかなか描かれないようなものを描いた、その冒険心も評価したいですね。こういう冒険的なプロット(マブラヴ含め)を企画だけで終わらせなかったageに拍手を。超難産ゲーで、2004年-2005年頃は「出ないゲー」の代名詞としてネタ的位置にまで堕ちていた本作ですが、これだけ名誉挽回した作品も珍しいでしょう。
…「マブラヴ」で続編に期待した一部ファンには大変期待外れ(方向性的な意味で)だったようで残念でしたが、それはそれ、ライターの一人にあのお名前がある時点でもうどうしようもないことなのです。
2Dヒロインではなくプレイヤーの方を嬲る、鬼畜人タムー。私は大好きです。(「マブラヴ」には彼の名前無かったのも、その凶悪な手口の一環だと信じてます)




気に入り度:8

難しいことを考えれば色々と思うこともありますが、とにもかくも時間を忘れて熱中し、楽しめた。その事実は揺るぎないので、8点。
色々思うところについては、プレイ後レビューにて簡単に。



(この作品については、プレイ後レビューにても触れています)



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