冥色の隷姫 〜緩やかに廃滅する青珊瑚の森〜

(執筆:2006/05/29)



メーカー
エウシュリー
(本格派戦略SLG, RPGゲームを多数世に出している)



属性
ジャンル:戦略・調教SLG
用途:ゲーム・実用
舞台:ファンタジー 大陸の一部
顕著な属性:エルフ姫調教



テキスト:2
あらすじ:魔人イグナートは、隣国にして敵国であるエルフの国ルア・グレイスメイルを打ち破り、その国の姫を手中に収める。姫は特殊な力を持っており、体を触れ合うことで魔人の魔力は増大するのだった。
姫を手に入れた魔人は、そのまま大陸の半島地帯征服に乗り出す。

テキストの文体自体は、好ましいものです。難解な語句が多数出てきて、なかなか読みごたえがあります。ライターさん、よく知ってるなこんな語句という感じ。何故か印象に残っている台詞が「黙れ。反駁は許さぬ。」なのですが、こんなものではないです。余裕があるなら「広辞苑」隣に置いてプレイすることをお勧めしたいところ。日本語の勉強になります。これは素直に賞賛に値する。
…問題は、肝心のシナリオは人糞だということでしょうか。
正直、泣きそうになってきます。主人公である魔人イグナートは、動機はともあれ魔術の探求にしか頭に無く、その手段のために半島制圧を企む輩です。当然、さらってきた姫も、魔力を奪う道具としかみなしません。…それだけならまだしも、ちょっとSっ気溢れてる魔人、やめときゃいいのに姫をはじめとする捕虜を集めてはネチネチといびります。
この世界には正義キャラも多く存在するのですが、普通にゲームを進めていけば、正義のヒーロー、ヒロイン達は例外なく救いのない未来が待っております。主人公の毒牙にかかって。
つまり、シナリオは何の面白みもない平板なもので、人によっては不愉快なものでもあり、ギャグの一つもありません。キャラがわらわらと現れては主人公の前に屈服していきます。
私個人としては、シナリオは、このゲームにおける唯一にして最大の欠陥だと思います。文章などによる基本的な雰囲気作りは十分なのに、何ですかこのシナリオは。
こういうのがなぜ駄目かというと、SLGパートをプレイする意欲を著しく殺ぐからです。プレイヤーも人の子、何らかの動機付けが欲しいわけで。しかも戦略SLGしながら下半身のことばかり考えている人は、主観ですがかなりの少数派だと思うのですね。そういうシナリオがいいという気分のときには、あるいは悦しいシナリオなのかもしれませんが、多くの人にとっては、この「調教SLGと戦略SLGの融合! → 主人公悪役でいいよね」的な安易なシナリオはウケないと思います。




ゲーム性:8
秀逸な戦闘SLGと、補助的位置にある調教SLGの組み合わせです。
軍略画面ではどこにどの部隊を編成してどのように攻め込むかまでを事細かに設定でき、その自由度も非常に良い塩梅です。このゲームの肝は、戦うにつれクラスチェンジを経て成長していく部隊の運用にあるので、いかに編成を組み、敵部隊と戦っていくかをある程度計画的に考える必要はあるでしょう。とはいえこのゲームで楽しいところは、相手部隊を圧倒的パワーで粉砕していくところにあるし、実際それをしないと攻略も困難なので、大事なのは「どの部隊を生かし、どの部隊を捨てゴマにするか」を判断し、着実にクラスチェンジさせることでしょう。
とはいえ、周辺国も受身なCPUというわけでもなく、うかうかしていると、何カ国も同時に攻め込んで来られたりして、かなりの苦戦を強いられることになります。それを回避したり戦闘の補助となるのが魔力であったり特殊能力を持った部隊であったりするのですが、その源となるのが、姫。姫の調教によって、戦略に広がりを持たせ、有利に侵攻を進めることができるわけです。
姫の調教SLGについては、選択肢を適当に選んでいれば問題はなく、CG回収に躍起になっていれば自然と無難にステータスは上昇しているはずなので、この難易度もまた補助として最適だと思います。

秀逸なバランスと手抜きの無い戦略システムにより、コンシュマーに負けずとも劣らない重厚なゲームを楽しめると思います。

問題は、プレイヤーへの動機付けが(シナリオなどの問題で)できていないことによる、テンションの持続の問題。最初は滅茶苦茶楽しいのですが、段々と飽きてくるのですよね…。
もうちょっと、例えば中盤からさらに強力な敵が出てくるとか、まぁそれをやってしまうと自由度が大きく低下してよくないのでしょうが、なんとかできなかったものでしょうか。



実用性:6
絵の好みにもよりますし、姫が気に入らなかったらその時点でジ・エンドという感じですが、その2点がクリアなら(たいていの人はクリアだと思いますが)なかなか良い感じです。選択肢の量に反比例して(一つ一つのシーンの量が減るため)実用性が低下する調教SLGの中において、このゲームはなんとか最低限の長さをキープしていると思われます。決して戦略のおまけ、あってもなくても同じ、といったレベルではありません。
確かに上述のように、シーン一つ一つの量は短いのですが、回想モードではシーンの結合も可能ですし、調教以外のイベントでのシーンもそれなりの分量はあります。
効果音その他にも手抜きは感じられませんし、「出来る限りがんばった」感があります。ただしその当然の帰着として、シーン単体での長さはやや短めなのですが。
で、肝心の内容ですが、ここまで読み進めていただければ分かるとおり、サディスティックな魔人が愉しんでいるような状況がほとんどです。和姦などほぼ皆無。各ヒロイン、あるいは嫌がりながら、あるいは戸惑いながら魔人の行為に甘んじているという感じでしょうか。
一つポイントを言うなら、メインの姫に出産シーンあり。CGは無いに等しいですが。
調教画面で「出産:○回」とかあったのは驚きました。



音楽:5
悪くない出来です。戦略パートで、状況に応じて音楽が変わるのは非常に好ましい。こういうゲーム、戦略パートはずっと1曲ということも多いので。とはいえ、変わるといっても2,3パターンであり、最初の音楽が一番気に入っていた私としてはむしろ「余計なお世話」だったのが残念。
音楽は、ゲームの雰囲気を壊さない、悪くない出来でしたが、正直全体的に魅力不足というか裏方に徹しているというか、印象に乏しいです。私の気に入った戦略画面の曲以外。
ボーカル曲にも手抜かりは感じませんでしたが、あいにく私の心はうちませんでした。

ボーカル曲:OP1曲



キャラ:2
 主人公:名前変更不可,性格変更不可
     魔人です。元人間の魔術師であり頭は良く、こいつが動揺するような事態は
     そうそう起こらないほどなのですが、いかんせん意味もなくSっ気たっぷりなのが
     私にはマイナス。感情移入できん。
 エルフ姫:主人公に終始可愛がられる悲運の姫。姫キャラの中でも非常に可憐な部類。
      姫というプライドを頑張って守っているけど、根は可憐。いいですねぇ。
 その他:色々いますけど解説する気も起こらない。

テキストのところで書いたとおりです。
あまり目立ったキャラ立ては見られませんでした。30秒で作れそうなキャラがほとんど。末路は皆一緒なので、まぁまともに作る気失せるのも分かりますが。



声:女
ヒロインのエルフ姫の声が、かわしまりのさん。非常に良かった。素晴らしい。さすがプロ。
それ以外の人達は、当たり外れが激しかったですね。
あと、男性キャラもかなり会話に参加しているのに、そちらのみ容赦無く音声無しなのは個人的にウケました。



時間:7
最初の1巡目は、非常に楽しめるはずです。
繰り返しプレイにもしっかり対応しておりますが、こっちの方の出来は正直いまいちだと思います。色々頑張ってはいるのでしょうが、肝心の「楽しさ」は激減すると思われます。
コンプを目指したり遊びつくそうと思えば、とことんまで遊び倒せますが、せいぜい3巡くらいで力尽きるのではないでしょうか。
やはり、全部隊持ち越し可、ノーマルモードでは他国部隊は断固使用不可はまずいかと。
この辺についてはアペンドディスクが別に発売されていますので、それ次第では改善されているかも。



雑記
システムは非常に良いです。戦略SLGということでかなり複雑ですが、色々と機能をてんこもりして下さってありがたいです。
演出面では特に思うことはありませんでしたが、不満などは一切無し。



お勧め度:6
非常に面白くもあり、それだけに失点は痛く、非常に残念でもありました。
時間があれば一度はプレイしてみてはいかがでしょう。戦略SLGとしては珠玉の出来です。




気に入り度:6
姫が気に入りましたし、戦略面は大好きです。
主人公の性格・サブキャラの魅力不足・シナリオのつまらなさが敗因。
この辺が解消されれば、エウシュリーの「ゲーム性だけ」という評価もだいぶ良くなると思うのですがね…。





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