(執筆:2009/05/14)
Liar Soft
(女性エロゲマに特に支持されているブランド。テキスト系がメイン。このブランド名はバグ抜きでは語れない時代もあったのだけど最近はなくなったのか。)
発売時期:2002年2月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代・日本・山間の町
顕著な属性:近親相姦
プレイのきっかけ:評価高い作品で昔から気になっていた。DL販売されているので、機会を見つけて購入。(プレイ前の期待得点…7点)
プレイ進捗状況:一通りエンディングテロップまで見た(一部CG、シーン未回収。現在回収作業中。)
あらすじ:喪失した記憶を取り戻すきっかけを得るため、かつて家族で住んでいた故郷「とうかんむり」で生活することに。そこで不思議な和装の少女「蔵女」と出会ってから、奇妙な時間のループに取り込まれる。
シナリオは、ループもの… と言って良いでしょうか。ループするにはしますが、そこまでそれに焦点が置かれているわけではありません。どちらかというと、何度も日常を繰り返すことで突如蘇る記憶の断片から、自身の失われた記憶のパズルをつないでいく… そういったものが本流であると思います。
パズルは、パーツこそそれなりに出そろいますが、プレイヤーには自分自身でそれらをつなぎ合わせる作業を求められます。ぼんやりと読んでいるだけでは置いてきぼりになるかも。主人公の過去に、どういう背景、どういう人間関係のもとで何が起こったのか。そういうのを、与えられた記憶の断片をきちんとつなぎ合わせることで、各部分部分が、そして全体像が段々と分かってきます。
で、それが面白いかと言われると、人それぞれ…という歯切れの悪い答えしかできません。それなりに興味を惹かれる過去の断片であったり現在の状況だったりが提示されますので、それで素直に興味惹かれれば楽しめるでしょう。
テキストは、簡潔な文体ながら無機的というわけでは決してなく、穏やかな性格の主人公
によく合うテキストです。何せ簡潔な文章なので「センスだだ漏れ」みたいなわけにはいきませんが、少しばかり言葉運びのセンスを垣間見た気がします。
メッセージ性は、多分有り。ただし、あまりそれを強調する気もないようです。積極的なメッセージなのか、副次的に漏れ出たメッセージなのかも不明。後者のような気がするんだけど、後者だとすると本作でライターが何をやりたかったのかよく分からなくなるという、なんだか不思議な感じの作品です。
一つ言えるのは、この作品はライターが主役ではなく、絵師・背景・音屋・ライター、などなど、皆が集まって一つの作品を作っているという感が非常に強いということですね。だからこそ、ライター個人の主張なりメッセージなりもあまり表立っては無いのかも知れない。
ひょっとしたら私の勘違いかも知れませんが…
ADVとしては破格に良く出来ていると評価したいです。「ゲームとして面白いか」と言われるとちょっと違うのですが、ADVゲームにおいてプレイヤー自身が「選択肢を選ぶ」ということの重みを最大限に引き出した作品である。そう感じます。
というのも、作品内にはそれなりの数の2択選択肢が登場しますが、驚くなかれ、ある程度進めてしまうと、選択肢直前のセーブデータをロードして選ばなかった選択肢を選び直しても、先に進めなくなるという凄仕様。
間違った選択肢を選んでいると、時として、詰むこともあるそうです。
しかも厄介なことに、自分が選んだ各選択肢が合っているのか間違っているかは、最後までよく分かりません。シーン回収をするという目的では正解だけどエンディングに近づくという目的では不正解になる選択肢というのもある。
一応、分かる方法もあるのですが、私は、せっかくここまでお膳立てしてくれているのだから、自分の感性なり理性なりにプライドをもって、ひとまずはロード一切無しでいけるところまで進めてほしいと思います。そして、勝手に与えられるわけではなく、自分自身の選択を元に繰り広げられる展開であったり結末を楽しみましょう。そういう遊びができる作品です。
2002年のADV作品にしては異例のエロの濃さですね。
というか、シーン自体はそう尺が長いわけでも内容が濃いわけでもないのですが、とにかく生々しいんですね。
使えるか否かは不明ですが、決しておまけ程度につけたおざなりなHシーンというわけではなく、一際存在感を放つ存在です。
素晴らしいです。
日常BGMは「とうかんむり」という山間に広がる田舎町の雰囲気を最大限引き出す、名BGMと言えるでしょう。憂いを帯びたBGMは主人公の内面にぴったりですし、厳かながら哀愁もあり重さを感じないBGMは「腐り姫」のBGMとして実にふさわしい。
実に良い仕事ではないでしょうか。
ボーカル曲:無し
主人公:名前:五樹(変更不可)。素直で大人しい、しかし人を惹き付ける不思議な雰囲気を持つ大学生。記憶喪失。
蔵女:五樹の死んだ実妹「樹里」にうり二つの少女。真っ赤な着物を纏う、謎に包まれた存在。五樹やその家族に親しんでくる。
潤:五樹の現在の家族。義妹。五樹にきつく当たる。
芳野:五樹の若き義母にして潤の実母。盲目。
きりこ:五樹が記憶を失う前からの恋人。片足が不自由。眼鏡。芯も我も強いが一途。
夏生:五樹の従姉。明るくひょうきんな性格。五樹に対してよくお姉さんぶる。
このラインナップだと、誰が人気になりそうか皆さまベテランエロゲーマーならだいたい分かるんはないでしょうか。だいたいそのご想像通りではないかなと思います。
ただ、キャラ萌え云々してる暇もなく展開が進む印象。そういうところにはさっぱり労力は払われてませんので、各自勝手にしろというところですか。
パートボイスです。大事なところなので声有りにしました、という感じ。
とは言え、それなりにボイスパートも多かった気が。2割くらいはあったのではないか。
私は別に無声でも良いので、気になりませんでした。
演技ですが、うーん、まぁ、そこそこ?上手い人もいれば?
潤と芳野は鉄板ですね。夏生は、プロ臭くないのがいい。きりこはそつなく。蔵女は、頑張った。
それほどボリュームはなかったように感じました。プレイ時間15時間弱くらいでしょうか。短いというわけではないけど、決して長くはない。
システム:特に不満無く。既読・未読判定基準をもう少し変えてほしかった、くらいですね。繰り返しプレイのためには。
演出:素晴らしすぎる。背景が最高に良い。時間等によって移ろいゆくとうかんむりの町や山の景色を、思う存分味わえます。その背景に、キャラ達のコマが乗せられる手法で、いわゆる「立ち絵」一辺倒とは訳が違います。立ち絵もあるのですが。
もうね、音楽、そしてこの画面演出。これだけで本作はその成功を半ば確約されたようなものです。雰囲気は満点。ライターの文章が、良く合う。
心を打つ作品… というよりは、作品の雰囲気に浸る作品、でしょうか。
テキスト・BGM・絵の見事な調和。素晴らしい。
ドキドキハラハラといったものも控えめで、かといってまったりしているわけでもなく、常にどこか哀愁と落ちつかなさ、それでいて居心地の良さ、そういうのを感じさせる作品です。
特に背景に関しては、「綺麗」だとか「画質が良い」だとか、そういうものとは別の、ぬくもりのある美しさをご堪能下さい。
そして、もしプレイヤーに考察する気があれば、考察もまたなかなか面白いと思います。
ともあれ、DL販売でこの価格でプレイできるということは本当にありがたいですね。
実に堪能できました。
もうちょっとお話の難解さを控えめにしてもう少しはっきりとメッセージ性を出してくれる方が個人的には好みなのですが、これはこれで良いでしょう。黙すわけではないものの自らはあまり語らず、一貫してプレイヤーの感性に委ねるというスタンスが素敵です。
ただ、主人公の記憶が明らかになっていくあたり、私はそれほど心惹かれることもなく、一応作品には積極的姿勢で臨んでいたのですが次々と明かされる記憶を結構淡々と読み進めるしかなく、つまり、決してつまらなかったり退屈だったりしたわけではないのだけど、かといってそれほど面白かったわけでなく、というのが正直なシナリオに対しての印象です。
やはり、一番ツボったのは何といっても作品の雰囲気(特に音楽と背景)ですね。続いてツボったあるシーンについて、ネタバレ全開なのでプレイ後レビューで長々と語っております。
ギュッと!「腐り姫」
定価2800円。
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