この青空に約束を―

(執筆:2017/03/18, 04/04)

製作

GIGA
(バルドシリーズ他数々の人気作・人気シリーズを擁するブランド。シナリオに手抜かない度が高い。)

属性

発売時期:2006年3月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代日本・南栄生島(伊豆諸島辺りにありそうな仮想の有人島。)
顕著な性属性:…女子学園生との学園内H
プレイのきっかけ:本作と同じく丸戸氏ライターである「パルフェ」のシナリオがノンファンタジーでありながら読ませる、物語として面白いものであったので、そういうものが読みたくて。(プレイ前の期待得点…8点)
プレイ進捗状況:コンプ

テキスト:7

あらすじ:南栄生島に唯一ある学園には、オンボロの学生寮があった。主人公は、その寮の住民7人の一人であり、また唯一の男子寮生であった。 寮生達は学園生活を満喫していたが、実はあと1年で廃寮が確定しており、主人公達の寮生活も、残された時間はそう長くないものだった。


■まず総評 〜本作はラブコメである〜
ここまででも既に各所で学園学園って書いてますが、ここではっきりさせておきましょう。どこからどう見ても高校以外の何者でもない(私見)。
何を今更… と思われるかも知れませんが、恐らくそれこそが本作のカラーであり、そのあたりを曖昧にしておくと私みたいに「日本のエロゲってなんでこんなにガキくさいんだ」などという不平をこぼす羽目になりかねません。
ええ、本当に、高校生達による高校生活です。恐らく、「リア充高校生活をエロゲで追体験したい!」みたいな願望を少しは持っていないと、本作は十全に楽しめないのではないでしょうか。
もちろん、本作はれっきとしたエロゲでありAVではないので、「女子高生(という役柄である18歳以上のAV女優)にあんなこともこんなことも!」みたいなノリではなく、ヒロイン達もそれぞれエロゲ(ギャルゲ)テイストなキャラ付けがされています。エロゲ(ギャルゲ)です。
そう、本作は多分、ギャルゲなんですよね。しかも、ラブコメの。シナリオの質がかなり高い、ラブコメ。エロシーンもシリアスシーンもあるラブコメ。
つまり、うら若きヒロイン達と、マンガライクなノリでワイワイ共同生活をしていく中でうち一人のヒロインと恋愛関係に発展し、恋人になり、肉体関係にもなり… みたいな。そういう王道。ヒロインは女教師含め6人もいますが、このあたりはブレません。
ここでようやくレビュー。ギャルゲとして、良く出来ていると思います。ヒロイン達はそれぞれキャラが非常によく立っており、主軸は同じながらもシナリオはヒロインによって全然カラーも違うし、しかもどのヒロインも魅力がよく伝わるように描写されています。一見サブヒロインに見えるヒロインも、シナリオ展開を追っていくと「まぁこのヒロインと仲が深まるのも、納得だな」と思えます。
ただ、2つほど言いたい。一つは、もう少し、ヒロイン間の”メイン”度合い、揃えても良かったんじゃない?っていうこと。つまり、ヒロインはそれぞれあまり「サブ」「メイン」に分かれるような感じではないのですが、でもやっぱり、明らかに優遇されているヒロインがいる。優遇というと変ですね。”正史”っぽいヒロインルートがあるのですよ。そしてそれでいて、そのルートも、そこまでメイン感は出ていない。
このパワーバランスについて、人によって感じ方は違うでしょうが、私は、中途半端ですっきりしないと感じました。メインを設けないにしては”正史”っぽいヒロインがいるし、メインを設けるなら設けるで、シナリオ構成に改善の余地がある。具体的に言うとネタバレになるので、クリア済の方はプレイ後用レビューをご参照下さい。
そしてもう一つは小声で言いたい。こういうハーレムギャルゲなら、潔くハーレムルート開放してくれても良かったんじゃない・・・?

■シナリオゲーとしてのレビュー
本作はベースがラブコメですので、シリアスパートも完全にシリアスに豹変するわけではなくラブコメの延長として描かれています。上でラブコメのラブコメって連呼しているのも一つにはそういう理由でして、シリアスパートですら、シリアスに徹しきらないのですよ。シリアスにシナリオ展開しつつ、最後にオチをつけて”外す”エピソードが多いこと多いこと。
これも、あんまりシリアスなのはちょっと…っていうラブコメ期待な層には良いでしょうけど、私は日常的ラブコメよりも、ドラマチックだったり燃えたり泣いたりといったシリアスシナリオを期待していたクチですので、そういった”外し”には正直肩透かし感を覚えました。ええ、ドラマチックだったり燃えたり泣いたりという部分もなまじハイクオリティなだけに、余計。

また一方で個人的に評価したいのは、今時めずらしい、ファンタジー要素一切無しの、つまり安易にファンタジーに逃げたりしない、ガチな人間関係シナリオというところですね。

シナリオゲーとして、突き抜けた何かは、ほぼ無いです。特に、メッセージ性とか、重いテーマとか、そういうのは。ただ、やはり良く出来ていると思います。多数のヒロインがいるというのに、それぞれのヒロインルートが、納得の出来栄えになっており、またルートの個性も出ているという。シナリオゲーとしては、人によってはモヤモヤが残るかも知れませんが、それも最終的には概ね解消されると思います。

■主人公についてのレビュー
本作を語る上で外せないのが、主人公。
主人公は 超問題児で、快活で、リア充(女たらし)で、爽やかで、頭が回り、そして当然、モテるのですよ。
シナリオも、主人公達が運命に翻弄される系とは縁遠く、そのルートのヒロインと主人公が割とぐいぐいとシナリオを展開させていくという。
それは時として痛快であり、人によってはこの主人公が本作の一番の評価ポイントともなり得るでしょう。ラブコメ、ギャルゲの主人公としては非常に格好いい。やるべき時に、やれる男です。
しかししかし!!それはあくまで「ラブコメの主人公として」でありまして、上述のように、本作はシリアスパートも最後にオチをつけたり途中でコメディを入れたりすることが多いものだから、それに引っ張られてというか、主人公も割とヘタレた感じの時もありますし、二枚目と三枚目の間を行き来したりします。頑張る時は確かに頑張るのですが、手放しで「格好いい」と言えないような危なっかしさもあります。
ライターが、本作らしさ、高校生らしさを出そうとした結果なのでしょうか。

ゲーム性:2

難易度は概ね非常に易しいので、苦もなくお目当てのヒロインルートに進めるでしょう。
ただ、一部、私は行き詰まって攻略サイト見ました。同じように詰まる人が他にもいそうなので、ネタバレ有攻略を当サイト簡易攻略ページに記しておきました。


実用性:5

いやぁ、絵柄さえ合えば、結構いけると思いますよ、これは。
6人が6人とも、Hシーンあたりになってくるとそれぞれ色気を見せるからびっくりですよね。
まぁ私は、割とCtlボタン使っていましたが。
ただ、一部ヒロインは、珍しく割とちゃんと読んでしまった。Hシーンテキストまで読ませるシナリオ系エロゲというのは、そう多くないと思います。

音楽:5

そう心に残るような歌・BGMはほぼ無いのですが、心に残る歌が1曲、気に入ったBGMが1曲ありました。
あと、ゲーム本編で登場してないのではないかな… いやどうだろう…ちょっと分からないのですが、戯画過去作品から計5曲のアレンジ曲が。
BGMは…。各ヒロインに1曲ずつテーマ曲があるのですが、ちょっとそれを多用しすぎな感あり。

一つだけ余計なお世話かも知れませんが、EDムービーは最低1回は必聴。特に凛奈ルートでは。凛奈ルートで描かれた曲がそのままED曲になっていて、歌っているのもヒロイン達です。アレンジだけピアノではなくて普通の楽曲風で、Avenewって最初に出るから非常に分かりにくいのだけど!あと映像は汎用映像なんで全然パッとしないんですが、曲はまぁ、歌詞というかこの曲を歌われるということがシナリオの一部的なところあるので。 。

ボーカル曲:3曲

キャラ:6

星野航(わたる):学園2年生、副生徒会長。学園きっての問題児であり、島中の有名人(良い意味で)。成績はパッとしないが運動神経は抜群、社交性も極めて高く、女たらし(*恋人おらず, 実際に手を出したりまではほぼしない)。有言実行キャラで行動力は折り紙付き。
凛奈(りんな):転校生の学園2年生。陸上競技(長距離走)に秀でる。新しく寮に入ってきた期待のホープであるが、学園にも寮にも全く馴染まない問題児に。芯の強い明るいツンデレ系担当。
静(しず):学園1年生。無口で極度の人見知りだが、航を中心に、寮生には心を開いている。炉利担当。
宮穂(みやほ):学園1年生。静の親友。島に絶大な影響力を持つ六条家のお嬢様だが、本人は航のいじり対象。明るくしっかり者。
奈緒子(なおこ):学園3年生。生徒会長。人当たりが良く上下問わず好かれる完全無欠の美人会長だが、裏表が非常に激しく、裏の顔は寮生しか知らない。お姉さんキャラであり、微ヤンデレ。
海己(うみ):学園2年生。気弱で泣き虫、常に航の後ろをついて歩く、幼馴染。寮の食生活は全て彼女の双肩にかかっている。
沙衣里(さえり):着任2年目の女教師であり、航や凛奈・海己のクラス担任。寮長でもあるが、良い意味でも悪い意味でも頼りないダメ教師っぷりのため、真の寮長はどちらかというと奈緒子。そういう意味でも、奈緒子とは(教師と生徒でありながら)ライバル関係のような仲。ダメデレ。

萌える、的なヒロイン達ではないのですが、良いキャラ達です。彼らの青春熱愛っぷりに胸掻き立てられることでしょう。


声:男女

概ねフルボイスだと思います。主人公ボイスは無し。
声について脇役含め一切不満無しです。

時間:4

この頃(2006年)のADVとしては標準的〜やや多い程度の分量ではないでしょうか。それぞれのルート、長すぎず短すぎず。

その他

システム:特に不満無いのですがなぜかある時からNorton先生が「これはマルウェア!」と言い張って聞かなかった。
演出:小技が効いていたようには思います。起動時のタイトル画面が本作の象徴的存在であるつぐみ寮なのですが、プレイ時間帯によって昼だったり夜だったりします。それらに加えてたまに雨が降っていることもあって(夜の雨とか)、舌を巻きました。


お勧め度:8

なんだろう。絵に描いたような、「エロゲ初心者にも安心してお勧めできる良作」。ただ一方で、「一般人へのエロゲ布教向け」かというと少し疑問なのですが。
丸戸氏は、実にハイレベルなギャルゲを何作も手がけておられますが、上述のように、本作はシナリオゲーよりはギャルゲー寄りに舵が切られているかなと思います。なので、その辺りを踏まえた上で臨んだ方が、プレイもより楽しめるのではないでしょうか。
パラメータ表示すると、どれも高いけれど突き抜けたものもない、そんな感じになるのではないかなーと。
感動の度合いはそこそこ高めですが、泣きゲーというほど涙腺崩壊するわけでなく、ギャグゲーと言えるほど爆笑できるわけでもなく、…といった感じです。
プレイヤーが熱狂的ファンとアンチの二極化するようなアクの強いものではなく、恐らくかなりアンチの少ない、万人受けする作品だと思います。
もちろん、ツボにはまる人、自己内最高作品となる人が続出してもおかしくはないのですが。
表現は悪いですが雰囲気ゲーでもあるので、「都会の喧騒とは無縁、田舎の島の高台にある寮での生活」というのを楽しむつもりでプレイされるといいでしょう。


気に入り度:6

お勧め度に比すると相対的に低い点数ですが、それでも、良かったですよ。特に数名のヒロインルートが。

ただ、本作に対して私はかなり特殊な構えを持って臨んだので、プレイ中相当の違和感がありました。その違和感を私のように感じないように、ここまでのレビューを書いたつもりです。ここからは私の個人的な話に近くなるので、もう読み飛ばしてもらって結構です。

私は本作を、「良作シナリオゲーと聞いて来ました!」というノリで臨んだのです。上でも書きましたが、プレイのきっかけは、本作と同じく丸戸氏ライターである「パルフェ」のシナリオがノンファンタジーでありながら読ませる、物語として面白いものであったので、そういうものが読みたい、というものでした。
なので本作に期待していたのは、ファンタジー要素一切無しの、つまり安易にファンタジーに逃げたりしない、ガチな人間関係シナリオなのです。そして蓋を開ければは、基本的には期待どおりでした。
しかし一方で、繰り返しになりますが本作はラブコメギャルゲなのです。シナリオも良く出来ているだけで基本はこれ。なので、どうしてもその引き換えとして、ノン・ファンタジーでありながらも犠牲にしないといけない部分が出てくるのですよね。
そう、リアリティです。
本作は、上述のようにヒロイン達はギャルゲヒロイン然としたキャラ設定であり、日常パートのノリは完全にラブコメだし、シリアスパートでも随所でこのラブコメのノリが顔を出します。なので、リアリティは低めであり、私のように肩肘張って本作に挑むと、ボディブローのようにじわじわと肩透かしを食らいました。上手く例えられませんが、例えばヒロインの10tハンマーが主人公の頭を直撃するとか、バットで打たれてお星様になるとか、そういう、コメディの定番であり、リアリティは無い描写ってあるじゃないですか。本作のラブコメというのはここまで極端ではないのですが、その軽度な描写が随所にあった。これが、どうも、「なんか違うな」という違和感につながってしまったのですね。
一つだけ例を挙げると、主人公の過去の恋バナを女の子達に暴露しようとした主人公の友人が、絶妙のタイミングで通りがかった主人公に殴られて「ぐえっ」とか呻き声をあげつつ意識を失ってしまう。だから女の子たちはギリギリのところで聞けない、しかも誰が主人公の友人を気絶させたのか分からず、ただ人影が過ぎ去ったことだけ分かったけど、状況的に、「今風のように駆け抜けたあいつは主人公か」と分かる、みたいな。

そしてもう一つ違和感を感じた点。これも繰り返しになりますが、各エピソードの最後に、いかにもラブコメの”オチ”的な締めくくりをされていた点。これが、私には合わなかった。特にストーリーが進むようなシリアス寄りのエピソードの時は。「ここまで真面目にシナリオ展開してきて、最後をこんなノリで締めるの?」って思ってしまったのですよ。それが1箇所2箇所ではなく、大量にある。

そして主人公。上ではべた褒めしていますが、同様の理由で、「こんなスーパー高校生、いねぇよ…」とも思ってしまったのですよね…。
せめて大学生なら、まだ納得できた。そう、パルフェのように。しかし本作主人公、パルフェ主人公以上に暴れ回るのに、高校2年生なんですよね。ないわー ないわー とか、思ってしまうのですよ、私は。

結局、シナリオゲー読んでいるつもりでプレイしていたというのが失敗でした。
シナリオゲーって、仮にファンタジーであったとしてもその世界観なりの、リアリティってのが重要だと思うのですよ。本作はノン・ファンタジーの正統派純愛ゲーであるわけですから、いくらエロゲとは言え、主人公達の人格があまりにも高校生然としていない(しその理由についての納得いく説明がない)と、やっぱり違和感感じるのですよ。シナリオゲーとして見てしまうと。
例を出すと、fateの主人公なんかは高校生然どころか人としてちょっとアレですが、その理由は描かれていますよね。それならOK。本作は、主人公がこんなにもスーパーマンである説明が無いので、なんか違和感。

ただ、これだけあれこれ言っている私でも、何シーンかは感動したし、少し感涙すらしました。本当に良質のギャルゲーです。

総じて、プレイして良かったと思います。


(この作品については、簡易攻略・プレイ後用レビューにても触れております。)


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