キラ☆キラ

(執筆:2007/12/26-12/31)



メーカー
OVERDRIVE
(「グリーングリーン」作ってたGROOVERが前身。プロデューサー自身がバンドマン。)



属性
発売時期:2007年11月
ジャンル:ADV
用途:物語・音楽
舞台:現代の学園・日本各地(東京から西へ)
顕著な属性:無
プレイのきっかけ:ライターが瀬戸口(プレイ前の期待得点…7点)



テキスト:8
あらすじ:主人公は、廃部寸前のクラブ「第二文芸部」の幽霊部員。今年度いっぱいで廃部が決定している第二文芸部で、最後に学園祭で何かしようと言う話を同じ部員でバイト仲間のきらりから提案され、きらりに押されるまま、ロックのロの字も知らないメンバー達がパンクバンドをやることに。

物語は大きく3つに分けられます。バンドと無縁の第二文芸部メンバー達が、学園祭に向けてパンクバンドを練習するのが序盤。第二文芸部が無謀にもボロボロの車で全国ツアーに乗り出すのが中盤。各ヒロインルートに入るのが終盤。序・中・終盤と、それぞれ面白さや見所が違います。

そもそも、第二文芸部のメンバー全員がロックやパンクとは無縁、音楽についてもほぼ素人集団しかないので、同じく音楽やバンドなどと無縁の生活をしてきたプレイヤーもすんなりとお話に溶け込みます。メンバー4人が、それぞれ少しずつクラスメートなど周囲から浮いた存在であるのが隠し味かも。実際、初期はメンバー全員やることなすことトンチンカンなのですが、強力な指導者やサポーターの破格な応援の甲斐あり、段々と成長していくのが面白いですね。
シナリオ自体は、そこまで評価できるものでもないはずなのですが、実際プレイすると非常に面白い。瀬戸口氏が描くアンニュイなキャラ達のどこかアンニュイなノリが、パンクロックバンドというコンセプトと相合わさってえもいわれぬ味を出しています。こう使ったか瀬戸口節。あと、このライターとしては恐らく初であろう「瀬戸口ギャグ」も少なからず収録。(特に序盤)

中盤は、実際にインディーズライブ等に行かれるような、非・ロック初心者の人達に特にお勧めなのでしょう。
終盤は、待ってました瀬戸口真骨頂其の二。正直、中盤および終盤はちょっと中弛みポイントなのですが、見せたいであろうところは素晴らしい出来。凄い威力です。ガーンとした心地よい鈍痛に圧倒される感じ。

恐らく、このライターの過去作をプレイ済みの方が期待するものとは少し違うものを感じるんじゃないでしょうか。ただ、特定の方向性やらテーマやらへの期待が過多でない限り、期待はずれという感想は出にくいと思います。一言期待させるようなことを申しますと、「ある意味、氏の全作の中でも最も明瞭に書かれていた」ですかね。
このライター未プレイの方には、ライター情報とか変なサプライ情報無しも、作品のみで十分に楽しめる手堅い作品ですと申しておきます。



ゲーム性:3
オーソドックスなADVです。
一部、他のルートを終えないと見られないルートもあります。



実用性:4
意外と使えそうな感じもしますが…
Hシーンに入るポイントはちゃんと「使えそうな場所」ですし(シリアスシーンのど真ん中に混ざってたりしない)、内容自体もそう薄いものではないのですが…
まぁ、人それぞれですね。こういう読み物系ADVゲームでも使える人はどうぞ。



音楽:8
まぁ、テキストと並ぶ本作の目玉ですね。
BGMは、ロックバンドもののBGMによく合う、ロックな感じのラインナップ。私はこちらにはそう感銘を受けなかったのですが、少なくとも作品の雰囲気を壊しているようなことは決してありませんでした。
そして、なんとなんと、ボーカル曲が10曲もあります!これは凄い。明るくハイテンション、軽快な曲がほとんどですね。素人耳にはさっぱりですが、かなり本格的に収録もされたようです。
ちなみに、UR@Nが唄う「第二文芸部バンド」によるものは8曲です。
まぁ一言で言うと、「フルバージョン 聴かせてくれぇぇ……!」

ボーカル曲:OP1曲、挿入歌5曲、ED4曲。



キャラ:6
 鹿之助:名前変更不可。高3。唯一燃えていたテニス部をやめてから、
     何にも真剣に取り組めなくなってる。
     一応綺麗な顔立ちではある。
     物語は、彼が彼女にフラれるところから始まる。
     テニス部やめてから第二文芸部幽霊部員に。
 きらり:高3。一応メインヒロイン。良く言えば天才肌なのだが、
     周囲とテンポが合わずちょっと浮いてる。
     貧乏な実家を支えるためバイトしている、勤労苦学生でもあるが、
     いつも元気に明るく振舞っている。
     第二文芸部員。
 千絵姉:第二文芸部部長。家庭の事情で1年ダブったので、1学年上だったが現高3。
     気立ての良い、ツッコミ系お姉さんタイプ。
 橿原:良家のお嬢様。病弱で毎日車で送迎されているため、友達もほとんどいない。
    きらりとだけは親友。
    大人しく貞淑な、それでいて柔かい感じのお嬢様。第二文芸部員。
 村上:典型的「主人公の親友」ポジション。強面のがっしりとした体格で、
    周囲から恐れられているが、本人はのほほんとした良い奴。もちろんモテない。
    本人もロックバンドをしたかったのだが、第二文芸部バンド設立を聞き、
    バンドのサポーターとして、メンバーに「ロックとは何か」から教える。
 殿谷:今をときめくインディーズバンドの天才ギタリスト。
    実は鹿之助らと同じ高校の同じ学年で、縁あって第二文芸部の指導者的存在に。
    小さい頃から音楽と親しんで来た秀才肌でもあり、穏やかな性格なのだが
    音楽に対する思いは人並みはずれている。

序盤はこの6人が、中盤は主人公とヒロイン達4人が、終盤は主人公とヒロイン1人が、物語の中心になります。(勿論例外有り)

皆良いキャラしてます。特にヒロイン3人と村上は、皆気に入るんじゃないかと。殿谷君は好みの別れるところですね。特に女性ウケしそう。嫌いという人はいないと思いますが。
キャラ萌えというほど強烈な何かはちょっと厳しいでしょうが、「お気に入り」キャラには次々と入っていくことでしょう。



声:男女
フルボイスです。
うーむ。声優さん名一切非公開なんですよね。何故でしょう。
いや皆上手いですよ。文句なし。メインヒロイン3人は勿論、サブ2人も。サブサブクラスも。
あ、Hシーンもちゃんとやってました。喘ぎ声とか淫音とかも。(サブ2人は喘いだり淫音出したりしません。Hシーンもありません)

立ち絵が与えられているキャラは全員文句無しでした。ただ、立ち絵が与えられてないクラスとなると、さすがに…。
とりあえず方便は気にしちゃ負けです、東京以西の方。



時間:4
標準的なADVくらいの量はありますね。20時間はかかるんじゃないかな。



雑記
システム面は特に不備無し。
バンドライブ中の演出は、まぁ過度な期待はしないように、と。
その他演出として、一部にカットイン有り。良い感じです。



お勧め度:8
「エロゲーは文化だ」
…とかいう陳腐でありぶっちゃけ特に意味もないフレーズを敢えてここで書いてみます。というのも、皆さんよーくご存知のとおり、エロゲってのはテキストのみだけでなく視覚・聴覚も演出に使える総合エンターテイメント的要素を持つのですね。
本作は、その「視覚・聴覚」のうち特に聴覚を最大限に有効活用した、エロゲの強みを有効に引き出した作品であると思われます。
瀬戸口テキストも確かに素晴らしいですが、瀬戸口テキストのみでは引き出せないものを本作は引き出した。(これはひょっとすると逆なのかも知れません。音楽だけでは十分に伝わらないものを、瀬戸口テキストが描き出したのかも知れません)
その点が、本作の大きな魅力でしょう。本作は「ロックバンド」がコンセプトにありますが、本作が描いているのは、音楽オタク達による、オタク世界の中で完結してしまうような「ロック」ではなく、私達一人一人の胸に刺さる「ロック」であり「バンド」であります。
過去にバンドをやったことがある方は勿論、興味がある方、そして私のような「バンド活動なんぞむしろクソ食らえ」と思ってるような人間にでさえもお勧めできる、素人から玄人まで、男性も女性も、30後半のおっさんから10代前半のがきんちょにまでお勧めできそうな(エロゲーは18歳から)、オールラウンドに心燃える良作です。(よく分からんのですが、特にバンド経験有りな方には色々と感無量のようです)
惜しむらくは中盤に少なからぬ失速がある点ですが、楽曲の多さ・序盤と終盤の面白さ・その他諸々で帳消しにするには十分でしょう。
オールラウンドと書きましたが、こういうこと書くと瀬戸口信者の方々がへそを曲げそうなので追記しておきますと、瀬戸口信者じゃないととっつきにくい、解読困難なのも、作品の肝っぽい部分でちゃんとあります。ご安心を。
…あれ、フォローのつもりが逆に怒らせた?
ス… スワンソング最高!!




気に入り度:8
しつこいようですが瀬戸口以外ロクに期待していなかった、素人のバンド活動嫌いな私が、お蔭様で十分に楽しめました。
キラ☆キラな何かを、しっかりと見せていただきました。

あとですね、これ、何せこのブランドが総力挙げてやってる作品なんで、プレイ後も色々と楽しめそうなのは非常に嬉しい誤算。
最初は見向きもしてなかったUR@N&BAMBOOコンビもおかげさまで好きになりました。



(この作品については、攻略・プレイ後レビューにても触れております)



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