果てしなく青い、この空の下で…。

(執筆:2012/02/29)

メーカー

TOPCAT
(古き良きタイプの正統派ADVを細々と出しているブランド。)

属性

発売時期:2000年6月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代の山に囲まれた田舎
顕著な属性:軽いNTR
プレイのきっかけ:セール品で発見したので。(プレイ前の期待得点…6点)
プレイ進捗状況:全シナリオクリア

テキスト:5

あらすじ:山々に囲まれ、平和だけど過疎の進んだ安曇(?)村。その村にあるたった一つの学校も、翌年に廃校が決まっている。そんな中、たった一人の先生と主人公ら僅か6人の生徒達の、最後の一年が始まる。
せめて良い思い出を作ろうとする主人公達。しかしそんな彼らの思いとは裏腹に、村の各所で小さな事件が起こり始めるのだった。


ジャンルは和風伝奇系ホラー。ホラーといってもホラーが全面にプッシュされてるわけではなく、ホラー要素もある、程度です。伝奇系と申しましたように、確かに伝奇的なテイストではあるのですが、完全な伝奇物かというとこれまた首をかしげざるを得ない。
伝奇的な謎や仕掛け等は村の各所に眠っているのですが、それらがホラーチックな演出によって起動し主人公達が翻弄されるだけ。それら伝奇的な謎や仕掛けの完全な種明かしはされず、プレイヤーの想像に委ねている感があります。一応ひととおりの説明はしているようですがね。

なお、これら村に秘められた伝奇的要素の数々は、それぞれのヒロインのルートで少しずつ明かされていきます。ルート間での重複も最低限ですし、またシナリオ自体の性質も少しずつ異なるので、それぞれのルートを新鮮な気分で楽しめると思います。
テキストは、安定感ありますね。いかにも〇学3年生という風な主人公ら年長組。それより1歳か2歳くらい幼い感じの、双子姉妹。
彼らは基本的にお子様ですので、村の裏側で大人の事情によって動く各事象に対して、基本無力です。
そんな無力で頭もそんなに良くないな主人公視点で物語は進行しますので、その分シナリオも明瞭で、また主人公の心情も理解しやすいです。
ただ、私には、主人公が若すぎて共感はしにくく感じました。それが私にとっては大きな減点ポイントになったのかも知れない。

そんな、素朴で普通の男子〇学生である主人公が、ヒロインと絆を深めながら懸命に頑張る物語です。

シナリオとしては隙が無く完成度が高い作りだと思います。
ただ、肝心の「面白さ」「求心力」という面では、少々パワー不足に感じました。

ゲーム性:2

普通の選択形式のADVゲームです。
序盤の選択肢によってヒロインルートが決定され、その後各ルートでは全選択肢正解でGOOD END、それ以外がNORMAL ENDといったところでしょうか。
この、GOOD END到達条件が結構シビア。私は気力もなかったので(後述)、途中から攻略サイト使ってプレイしました。

推奨攻略順有りではないか。
私が思うに、だいたい
悠夏 → 雨音 → 藍 → 明日菜 → 文乃
かなぁ。ルート優先順位から考えてもだいたいこのような順になると思う。そのあたり、ちゃんと作ってありますね。つまり、適当にプレイしてもこれに似た順になるんじゃないかなと。

実用性:3

色気に乏しい絵柄ながら、独特の色気が出てくる類のものですね。
うん、使えそうなら使うといいんじゃないか。テキストは割とあっさりしてますが、和姦系から無理矢理系から大人の色気系からと、幅広く揃っていますから。

音楽:4

OP画面での曲が好きですね。
あとは、正直あまり耳に残っていない…。

ボーカル曲:無

キャラ:7

主人公:名前変更可(デフォ:正士),至って普通の純朴な○学生という感じ。厨房的な。痛い感じはないですが、大人という感じも全く無い。良くも悪くも癖のない普通の少年タイプです。

悠夏:同学年。主人公の恋人候補のような関係。神社の一人娘で巫女さんでもあるが、男勝りで女っ気に乏しいのを本人も来にしている。
雨音:同学年。おっとりとした綺麗な少女。両親とは離別しており一人で生活。経済的な問題から、町の富豪「堂島」の屋敷でメイドとして働くことに。
藍:一学年?下。猫っぽいキャラ。語尾が「だょ」みたいに独特の口調。猫大好き。
明日菜:藍と双子。メガネっ娘。藍と対照的に、おどおどしたところのある文学少女。きめ細やかな優しさを持つ。文乃とよく一緒に行動。
文乃:変人画家「八車斉臥」の娘。滅多に言葉を発することすらなく、怜悧な空気を漂わせている。単独行動が主で、山の中を歩きまわっているようだが…

キャラ、オーソドックスな造りなのだとは思うのですが、それ故にツボを外していません。どのキャラにもキチンとわかりやすい魅力があるのがいいですね。このあたり、ちゃんとツボを押さえているように感じました。
最初は微妙だなぁと思っていたヒロインも、そのヒロインルートを終えた後に他のヒロインルート行った時の罪悪感が結構ある。申し訳ない気分になる。

声:無

完全版はちゃんと声あるみたいだから、「俺は声が無いと死んでしまう!」というお方はそちらをどうぞ。

時間:4

標準的なADVという分量でしょうか。短いようには感じませんでした。いや、むしろ長く感じたのですが、多分プレイ時間はそんなに長くない…。つまり…
…「気に入り度」で後述。

その他

システム:正直、システム面はかなり悪いです。特に大きいのが2点。まず、なんということでしょう。バックログ機能がありません。そしてもう1点、ロードする際、ピンポイントにセーブした場所に戻るのではなく、たいていその少し前にロードされる。多分小さなシナリオブロックが設定されており、そのシナリオブロックの先頭にロードする設定なのでしょうね。(バックログ機能も無い分)いきなり話の途中から再開になって話についていけない…なんて事態が防げるのは良いのですが、それにしてもストレスを感じる。5〜10クリック前くらいなら「親切設計とも取れるな」と思えるのですが、普通に3,40クリック戻されますからね。
あとクリックで思い出したけどマウスホイール非対応です。
細かいこと言うと、エピローグ限定なのですが、なぜかオートモードになる…。クリックすると進むし、自動でも進むし、何をそんなに急かす必要があるのか… というかどう見てもシステムのバグですね。

演出:縦書き・横書きが選べるのはいいですね。どちらもストレス無く楽しめると思います。
あと、演出と言っていいのかコスト削減なのかその両方なのか、BGM無しな部分がかなり多いです。プレイしてて(システム壊れてないかと)不安感じるレベルで。そういうものだとご理解の上プレイした方が精神安静上いいですね。
トップページにて、季節ごとに本のあらすじのようなのが更新されていく演出があり、これが結構いい味出してたなと思います。

お勧め度:5

昔の田舎のノスタルジックな感じ、それぞれ個性あるヒロイン達との交流、村に秘められた謎、悪い代議士の閉鎖的な村での無法。

味わうポイントは、伝奇やホラーだけではありません。
総合的に、浸れれば勝ちなのでしょう。

全体的なまとまりの良さ、安定感という面ではテキストゲーの中でもかなり上位に入るでしょう。つまり、エロゲ初心者から上級者にまで広くお勧めしやすいといえます
バックログが無いなどシステム面が大きなマイナスポイントですが、DL販売など廉価販売がされており、また総プレイ時間もミドルプライスクラスですので、ちょっとプレイしてみるにはちょうど良いのではないでしょうか。気になる方は完全版を調べてみてはどうでしょう。多分、そのあたりも改善されてるはず。


気に入り度:4

辛口採点で申し訳ないと思います。気に入らなかった理由は、おそらく私自身によるところが大きい。まず、本作のほとんどを病床の暇な時間を使ってプレイしていた点。全体的に気分が優れない中のプレイだったということですね。
もう一点、なんだかエロゲ全体に対する熱が抜けた中でのプレイだった点。こういう時って、プレイに夢中にさせるような興奮なり感動なり衝撃なりがあればリバウンドのように熱も入り直すのですが、先述した体調不良も相合わさって本作はあいにくと私に熱を入れるには至らなかったですね。
「伝奇ものなら、先の読めない展開が好みな私でも楽しめるか」と期待もしたものですが、テキスト項で触れたように本格伝奇ものというわけではなく色々なテイストがバランスよく合わさった作品だった。刺激という点で今ひとつだったわけです。

安定感はあるけれど、システム的な不完全さがそれと相殺し、残ったのは何とも煮え切らない、主人公とのシンクロもしにくいまま最後まで第三者として傍観したまま終わってしまった—— そういう印象の作品でした。

最後の最後のここまで来て大変あれですが、やはり完全版をおすすめします。

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