Fate/stay night

(2004年発売 2006年初頭最終プレイ[3巡目] 2006/06/10加筆修正)
メーカー
TYPE-MOON
(伝説の同人ソフト「月姫」にて、一気に同人から商業サークルにのし上がった化け物メーカー)



属性
伝奇活劇VB(VisualNovel),読み物,現代日本のとある街,異色・「剣と魔法」



テキスト:10
主人公は魔術師修行中。とある日突然、「聖杯戦争」という選ばれた7人の魔術師達の戦いに、その一人として参加するはめに。
それぞれの魔術師達は、「サーヴァント」と呼ばれる各時代の英雄を召還できる。すでに魂となりその強さも人とは格段に異なる次元であるサーヴァント達を使役しての「聖杯戦争」が幕を開ける…。

10点です。
プレイ後1年半ほどはプレイ後の熱に浮かされていただけという可能性を踏まえ9点にしていたのですが、1年半たった今としては、10点でも問題ないかと思っています。(思い出が美化されている可能性は否定できませんが)

ともあれ、参りました。このボリューム、この質。
序盤はムカムカしながら読んでました。何とも鼻につく書き口だなぁって。 序盤の書き口は個人的には肌に合わないようで。
しかし本編。次の展開が気になって仕方ない。しかもそれが常に続く。中弛みなどという現象が、ほとんど起こらない。で、プレイ時間約50時間。
こんなに長い時間ワクワクドキドキハラハラ楽しめたのは、このゲームが初めてですね。

それだけでも十分に賞賛に値するのですが、それだけではない。各シナリオごとに、物語の展開とともに顕になっていく裏のテーマとも呼べるものがあります。そのテーマを主人公達がどう考え、どう振る舞うのか。
単なる伝奇物とは一線を画す、この作品を名作へと昇華している爆弾級の隠し味は、そこです。これらのテーマこそが、まさに「18禁」。ある程度歳を重ねた上で投げかけられるからこそ意味のあるテーマです。

我らが18禁ゲーム業界の魅力要素の全てを盛り込み、「面白いっ…!」と唸らされるシナリオです。
こういう作品に稀に出会うから、この世界はやめられない…。




ゲーム性:6
VisualNovel形式です。
物語読んでいって、たまに出てくる2択やら3択やらに答えるだけでフラグが立ったりルート分岐したりしてお話進むやつです。
正直、んなもんがゲームとして楽しめるとは思えないんですが、この作品なら、人によっては楽しめそうです…。
ゲームの進め方はいたってシンプル、上記の選択形式のみです。
が、一歩間違えればBadEnd、DeadEndもザラ。選択肢一つ一つが並々ならぬ興奮です。
よって、VBでは異例の6点です。
もちろん、即死形式は嫌いという方には、別に楽しめるようなもんではありません。



実用性:3
まぁこれは仕方ないですね。声もないし。てかこんなところ力入れられて他のところが手抜きになったら困ります。
この辺の理屈は一般の泣きゲーとかの理屈と同じですね。
ただ一言。
こんなアクロバティックなエッチシーン、初めて見ました。感動ものです。



音楽:8
シーンに合った良曲ばかりですが、音楽目的で買って満足できるかというと、決してそうもいえないような。
OP曲はものすごく好きなのですが、ED曲はう〜ん…どうなんでしょう。正直、全体を通して、大きく晴鍋の及第点を下回っていたのはED曲だけです。
挿入曲も、非常に場面に合っててすばらしい出来ですけど、「グッ」とくるものはなかったです。
とはいえ、曲数も多く、ゲームのBGMとしては非常に良い仕事していたと思われます。
タイトル画面等での「Into The Night」など、そうそう聴けず、地味にカッコ良い曲もあるし。
7点か8点か悩ましいところですが、これだけの仕事を7点とするのはやはり忍びないです。

ボーカル曲:2曲



キャラ:8
 主人公:名前変更不可。ひたすら真っ直ぐで純で不器用な性格。
 サーヴァント:主人公の命に従う、どこぞやの英雄。清く美しく強い。
 同級生:主人公と同様、「聖杯戦争」の参加者。何をやらせても完璧な学園のヒロインにして
     その裏にはどこか親しみやすいぬくもりが。
 後輩:主人公を慕って、毎朝ご飯を作りにくる子。

もうどうしようもないです。
ここまで数多くのキャラを出しておき、そのほぼ全てに見せ場を作られると…。
魅力的なキャラも、この数になると圧倒されます。
主人公、ヘタレに見えて全然ヘタレじゃないです。ただ、凡人には反感買う性格かも知れませんね。というのも、非常に行動理念が思春期思春期しております。「女の子を戦わせるなんて!」と言っては戦闘に割って入っていったり(丸腰で)、「正義の味方」になるのが目標だったり。
とはいえ、「萌え」っぽいのは少ないです。生ぬるいキャラはほとんどおりません。。良くも悪くも、そこがこのライターの描くキャラの持ち味なのでしょう。気楽に「萌え」なんて言ってたら、そのキャラにジト目で睨まれるような気がしてしまいます。
その代わり、「キャラ萌え」ならぬ「キャラ惚れ」はおおいに可能性が考えられます。 各キャラ、特に男性キャラ達が揃いも揃って魅力十分であり(美形とかましてやウホッとかそういう意味ではなく)、男性ウケの良い秀キャラに仕上がっております。
ともあれ、それぞれが出来合いのゆるいキャラではなく、キャラとしての濃さというか深みを持っておりました。
脇役に至るまで、手抜きを全く感じませんでした。



声:無
無くていいです、VNですもの



時間:7
よくは分かりませんが、フルコンプするには最低48時間くらいはかかるでしょう。
ゲームとしてはそこそこ長めの時間ですが、VNとしては異例の長さでしょう。
たいていは攻略時間が長ければ長いほど、(特にアドベンチャー物では)その質は低くなって当然ですが、本作品ではそれも無し。これもキチンと評価すべきところでしょう。



雑記
システム,エフェクト、どれも隙が無いです。完璧です。いや素人意見ですが。
一流の仕事って感じですね。

邪推すれば信者っぽい誉めちぎりっぷりですが、私自身としては、本作の前作である「月姫」への評価はかなり低めです。
というのも、月姫と本作、世界設定は同じ「那須ワールド」なのですが、描いているものが大きく異なります。よって、前にプレイしたものと同じようなものを求めてプレイすると、手痛い期待はずれ感を味わうことになるのでしょう。
特に「月姫」プレイ済みの方は、その辺もご購入の検討にお入れ下さい。



お勧め度:9
どう評価するかは人それぞれとして、とりあえずプレイしてみてはいかがでしょう。
2004年にCLANNADと並んで18禁業界に一大旋風を巻き起こして以来、CLANNADが忘れ去られようとしている中、本作は2006年現在でもアニメ化などファンの熱は冷めていません。(もちろんファンディスクなる「hollow」発売の影響もあるのでしょうが)
この作品を良作と評する人はそれで良いのですが、駄作・地雷だと評価した人。なぜ自分がその評価をしたのか、その評価基準は何にあるのか、見直すと、あるいは非常に有意義かも知れません。これは別に地雷評価を否定するのではなく、評価が分かれるポイントとなるであろう点が、まさにこの作品のテーマとなるであろうところだと思うからです。

とはいえ、文章の書き口が独特で、時として鼻につくこと、プレイ時間が長いので社会人の方には少々きついということと、一度読んだ程度ではライターの描きたいものが分からない場合も多いということが、このゲームの難点といえば難点です。




気に入り度:10
これだけベタ誉めはしましたが、感動の方では得点低めです。涙流すには至りませんでした。
が、テキストに描かれたそのテーマの重厚さは惚れ惚れの一言につき、面白い作品を評価する際、気が付けばFateを引き合いに出し、Fateと比較している自分がいます。
まさに18歳以上向きの文章。
単なる秀逸なエンターテイメントに終わらせず、そこに深いテーマを捻じ込んだ本作、あまり認めたくないのですが少なくとも現在のところマイベスト作品のようです。






この作品は、「プレイ後」にてネタバレレビューあります。

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