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(執筆:2006/12/24)



メーカー
FAIRYTALE ETHIX
(F&C傘下の新ブランド。本作が処女作。プレイヤーの倫理観に訴えるダークなゲーム作りを目指すらしいです。)



属性
発売時期:2006年12月
ジャンル:VN
用途:読み物
舞台:現代の山奥の病院
顕著な属性:包帯っ娘、ツンデレ、病弱
プレイのきっかけ:「プレイヤーの倫理に」どう訴えてくるのか興味を惹かれて。(プレイ前の期待得点…5点)



テキスト:4
あらすじ:主人公一家を乗せた車が事故→両親は死亡、主人公も3箇所骨折。やむなく収容された病院で一人入院生活を送るが、親戚はいつまでたっても迎えに来ず、患者も自分を含め3人しかいない。この異常な空間は一体何なのか。


私の読み込みが甘いというのもあるかも知れませんが、はっきり言って失敗作です。まず、プレイヤーをキャラ達に感情移入させる手続きが甘いです(キャラ設定もそうですし、ヒロインに感情移入していくプロセスにも乏しい)。よって、その上で訴えたかったのであろう「倫理観」も、やや冷めた目で見ていた私にはただの「大人の事情」物語にしか思えませんでした。また、たとえキャラに深く感情移入していたとしても、倫理観に訴えるだけで、そのテーマに目新しさも無ければ考察の価値ありとも思えませんでした。
物語の展開もそう予想外というものではなくギャグには極めて乏しく(これは作風なので別に良いのですが)、先の展開が気になるということもなくダウナーな雰囲気の中ラダラとプレイしていました。
一応積み木は積まれているけど、未完成のまま放置されている。そんな印象です。もっと煮詰めれば(もしくはアプローチを変えれば)それなりに面白いものになったんじゃないかと思います。

一応、軽く鬱展開です。良くも悪くも現実的なストーリー展開なので、ご都合主義が嫌いな人には良いのでは。



ゲーム性:3
オーソドックスなADV形式です。選択肢もそう多くなく、クリア順も決まっているのでそう問題なくプレイできるでしょう。



実用性:2
一応力は入っているようですね。淫音は結構入っていました。あとはこの絵で抜ける人がご使用なさってはいかがでしょうか。
和姦あり輪姦あり看護婦に襲われあり。まぁ標準並のボリュームはありです。
けど、これで抜けるのは・・・
・・・「声」項で後述します。



音楽:5
なんといいますか、いかにも外注しましたーという雰囲気濃厚の、無難な仕上がり。気に入った曲は特にないですが、BGMとして聴いていてなかなか心地良い曲も有り。基本的にダークな雰囲気のBGMに徹しています。

ボーカル曲:1曲あり。結局作中のどこでも出てこなかった…。



キャラ:4
 主人公:名前変更不可,高校生的思考をする高校生。
     現実を分かってきてはいるものの汚い大人の理論は嫌う
     やや強めの正義感を持つ。
 ネリ:異国の元気いっぱい少女。肌黒め。日本語やや片言。
 玲子:周囲の誰とも壁を作っている物静かな令嬢。
 綾:看護婦。きつめの性格で叱るところは容赦なく叱る。
   かと思うと下の世話してくれたりする。裏で何かしてる。
 鈴木:医師。医師というより冷徹な研究者で人格的にやや難あり。
    自分の美学を持ちそれに従い動く。

ヒロインはネリと玲子の2人です。いずれもキャラとしては弱いですね。ネリは珍しい感じではあるけど魅力不足。ただの異国元気っ娘です。玲子はツンデレの基本で打ち解けてからは可愛いです。けどそれだけともいえます。追加要素など描かれる前に物語自体終わります。
綾さんは、なんというか、現実の看護婦ってこんなもんだろうな〜と思うくらいキツい。そんなキツい言い方せんでも、と思う。その辺はリアルですが下の世話あたりはそのまんまエロゲー。正直両極端でついていけません。
まとめると、魅力的なキャラクターと呼ぶにはネリと綾が弱すぎですね。結果、テキストの評価も下げることになっている気がします。玲子はそれなりに頑張ってはいますがいかんせんテキスト自体短いのであまり見せ場無し。
勝たなくてはいけない「信長の野望」で弱小大名にあたった気分です。
「こ… この手駒は…… あまりにもしょっぱい……」



声:男女
主人公含めフルボイス。
哀しいことに、このサイトで直接評価対象外の声が、もっとも見所かも知れません。
ネリの声はAYAさんで、まぁ善戦してます。玲子と綾の声は、正直微妙ですねぇ…。玲子は(仲良くなってから良くなるのですが)演技に難有り、綾の方は演技はまぁ良いとして、声自体に魅力が…。(この辺りも、リアル看護婦を思い出す要因ですね…)
鈴木医師は、無難に良い声出してます。問題無し。
で、一番の注目がこの人、主人公。もう喋りまくりです。フルボイスですから。しかも声あててるのが山口勝平さん。ご存知ですか?この業界で分かりやすく言うとCROSS†CHANNELの島友貴。もう、最初から最後まで島友貴が主人公としか思えませんでした。(性格も似てる気がする…) この人、主に一般の方で活躍なさってるプロ声優さんなのですね。犬夜叉とかウソップの声だそうで。

というわけで、友貴とか犬夜叉とかウソップのあえぎ声が聞きまくれますよ、婦女子の皆さん。
ちなみに私は泣きそうになりながらスキップしてた。



時間:3
ミドルプライスって言うんでしたっけ。やや廉価な分、短めでしたね。フルコンプに10時間かからないかも。



雑記
システム周りの不満として、バックログしたら画面特定の場所をクリックしないと元のログに戻れないこと。「斬魔大聖デモンベイン」などと同じ仕様で使いにくいです。
あと、音量やメッセージスピードなどが10段階くらいしかなく、微妙な調節ができないのもマイナス。
そしてそして、大変申し上げにくいのですが、説明書どおりのやり方(3パターン書いてます)ではどれをやってもアンインストールできない…。

演出として、これ、ADVじゃなくてVN形式なんですね。つまり画面いっぱいに文字が出る式。私は好きですがまぁ評価の候補に。その他特に演出面で目立ったものは無し。

最後に絵ですが、グロ有です。モザイクかかる系。もうちょっと言うと解体系。
ただ、絵柄も絵柄ですし極力グロくないようにはしてあるのかな。私自身は特になんとも感じませんでしたが、一応注意書きです。
あ、そういうの好きな人には物足りないと思います。



お勧め度:3
全体的に、作りが甘すぎです。「とりあえず完成させました、特にバグもありません。」 それ以上のものが何も無い。もっと練ればもっとマシなものになった気はするのに、このままでは「何だこれ」という感想しかないです。先述のとおり、作りかけで終わっているような気が。これを完成品と呼ぶなら呼ぶでもいいですけど、「出直して来い」と。
普段にもまして主観と客観が入り混じったレビューになりましたが、「倫理観に訴える」が私の場合どういう結果に終わったかをできるだけ忠実に表現したかったので…。
「心に訴えかけるゲームって、何だろうな」と考えさせられるゲームでした。
というわけで、ライターさん・ライター志望さんは後学のため読んでみるのも良いかも知れませんね。





気に入り度:4
倫理観くすぐられただけでした。(一応くすぐられはしました。なにせ他に見所ないし…)
作品や製作者に対して悪意や反感は持っていないのですが、実力不足っぷりをまざまざと見せられてブルー。淡い理想・理論だけでエロゲーは売れません。鬱展開のみにするというのは意外とリスキーなのです。それに見合ったテーマなりメッセージなりをしっかり練りこんでから作品にしてほしいと思います。
もっと色々な作品に触れて、次回以降頑張ってほしいものですね。



(この作品については、攻略にても触れております。)




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