コンチェルトノート

(執筆:2022/04/14)

製作

あっぷりけ
(あかべぇそふとの姉妹ブランド。ADV作品を幾つか出している。本作が2作目。)

属性

発売時期:2008年10月
ジャンル:ADV
用途:読み物
舞台:現代の地方都市・学園・寮・山
顕著な性属性:
プレイのきっかけ:あかべぇそふと系列まとめ買いセールでなんとなく買った(プレイ前の期待得点…4点)
プレイ進捗状況:全シナリオ完了(CG数枚未開放)

テキスト:4

あらすじ:幼い頃から常人ではあり得ない頻度で不運に見舞われ続けてきた主人公は、かつて住んでいた街にある学園に転校となる。転校先の学園の理事長は、幼馴染の天才少女だった。その少女や何人かの仲間と共に、古びた寄宿舎に住まい、新しい学園での生活が始まるが、突如見えるようになった小さな精霊のような巫女服を着た存在に、「このままでは今月中に死ぬ」と宣告されてしまう。死を回避するためには、他者の幸運を集める必要があるというのだが…



はい。上のあらすじを読んで「うわぁ、面白そう~!」ってなる人ならもっともっと楽しめたんじゃないかなと思います。
私の感想は、「なんでわざわざ超常現象を入れるかな…」です。
コンセプトは、美少女達に囲まれながらのワクワク学園生活、ファンタジー要素も追加でドキドキアップ!ってところなのかなぁと思います。つまり、ギャルゲーとしてのド定番を突いてきたのでしょう。
ただ、特に序盤から中盤まで、あまりメインシナリオに対しての超常現象という要素を入れる必要性を感じない。「このままでは死ぬ」というシビアな状況、あり得ないはずの超常現象を目にしているはずなのに、割とまったり新しい学園、新しい住居(学生寮)での新しい生活が始まるんですよね。アンバランス感がなぁ…。
またその超常現象というのが、超常現象といっても少年漫画でありがちなバトル的な超常現象ではなく、他人の運を奪い、運を悪くするのがメイン。少なくとも私は、全くドキドキもワクワクもしませんでした。
だから多分、シナリオとしては、「早くしろー!!!間に合わなくなっても知らんぞー!!!」という某ボールを巡る攻防レベルのヒリヒリした展開を描きたいわけではなく、むしろその他の要因、新しく移った寮でヒロイン達に囲まれて新しい生活が…の方にむしろ軸足を置いているんでしょうけど、プレイヤーとしては「いやちょっと待って、今月中に死ぬんですよ?」ってなる。今月末というリミットに対して主人公は「なんとかしないとなぁ」程度の、定期考査前になっても勉強のやる気は起きないけどいい加減やらないとまずいからやるかという高校生みたいなテンションで臨むから、緊迫感というものがないんですよね。緊迫感が必要ないなら、それならなぜ「このままでは今月中に死ぬ」って要素を序盤の掴みとして入れたの?って思う。序盤から、どうも違和感が拭えないし、気持ちもどこにも入り込めないのです。
超常現象とかファンタジー要素って、その要素がある必然性とその要素のリアリティというか説得力、そしてその要素を入れることによるエンターテイメント性アップの3点は少なくとも入れないとだめだと思うんですよね。本作は、残念ながら3点ともだめだと思うわけです。
終盤になるとこの超常現象がかなりシナリオの中心になってきたんですが、そういう作品にするなら最初から最後までやれよと思います。中盤までは超常現象抜きでもメインシナリオ作れるだろと。
では、超常現象抜きでのメインシナリオは良かったかというと、これまた「うーん…」という感。色々と山あり谷ありのシナリオ作りをライターが心がけているのは分かるんですが、とにかく小粒というか、心が動かされない。
要は、完全に日常系ではないながらもオーソドックスなギャルゲーシナリオです。ドシリアスでもなく、ほのぼのでもない、ちょっとだけ刺激的なくらいがちょうどいいという人にはちょうどいい作品だろうと思いますが、私の感想は一言、ごめんなさい「つまらなかった」です。
全てが全てつまらなかったわけでもなく、少しだけ伝奇・オカルトめいた、生きるか死ぬかのドシリアスシナリオ展開があるのですが、その部分は面白かったですね。ずっとあの路線なら良かったのに、というガチシリアス好きの人間の感想です。あと、一部ヒロインとのラブコメ部も、まぁそこそこ楽しめたかな。
最後の「気に入り度」項でも触れますが、あれこれ要素を足しすぎていてどれも中途半端に終わっているというのが私の感想です。「色々楽しめて最高!」という人もいるのだとは思いますが…。

ゲーム性:3

ただのADVかと思ったら、普通はプレイヤーには見えないシナリオ分岐フローチャートが全てプレイヤーにも見えるようになっていて(当然、見えるのは開放チャートのみですが)、また分岐シナリオごとに時々「アイテム」獲得があり、そのアイテム獲得によって分岐が開放されていく(のだと思う、多分)という、割と凝った作りのADVでした。
プレイ開始序盤は、これで心惹かれたわけです。これはプレイヤーを楽しませてくれそうだと。
ところがどっこい、やることは普通のADVと何も変わらないという。自分がフローチャートのどのあたりにいる(いた)のか見えるくらいしかメリットないし、だいたい大して複雑なフローチャートでもないから、わざわざ提示されんでも脳内チャートとそれほど齟齬はないというか。

実用性:3

各ヒロイン2回ずつシーン有り。内容は本当に普通の純愛系エロゲのHシーンです。

音楽:5

うーん、BGMは割とがんばっていたとは思いますが、なんだろう、シナリオの薄味さが祟って、かえってBGMは悪目立ちしていた印象すらある…。

ボーカル曲:3曲

キャラ:5

主人公:「進矢」(名前変更不可)。超不運な学園生。手先が異様に器用で、また糸などを使ったトラップ技術にも長けている。
幼馴染の天才少女:主人公が転校先の学園の理事長。実家は財閥だが実家と仲違いし潰し合いをやっている。とにかく論理的でクール。
同級生1:主人公より少し前に、主人公が前いた学園から転校してきた元気系ムードメーカー少女。
後輩1:内気でかよわい美少女。
先輩1:勝ち気で気さくな姉御肌の生徒会長。
メイド:主人公達が住む寄宿舎のメイド。敬語お姉さんキャラ。

ヒロイン配置は、概ね良かったんじゃないかなぁと思います。ファンタジー要素消してこっち路線(寄宿舎でヒロイン達と楽しい学園生活)で進めれば、もうちょっとなんとかなったかも知れない的な。ただ、なんだろう、特に同級生1と後輩1はつくられたヒロイン感が強くて(童貞臭すらした)、微妙でした。後輩1は可愛かったですけどね…。幼馴染は、ライターの個性が遺憾なく発揮されていたと思いますので、相棒系ヒロインとしてこれはこれで良かったと思います。(あるいは、このヒロイン一本でバディものとして舵を切れば、評価も格段に上がったかもしれない。)
先輩は完全に私の好み。メイドさんも、まぁギャルゲーとしては良かったんじゃないですかね。

声:男女

フルボイス。声にほぼ不満はなかったです。ただ、極稀に「ここ、イントネーション違うよね」という箇所がありました。具体例を思い出せないですが、例えば「あぁ、それは~だよ」って台詞も、文脈によって「あぁ…↓」だったり「あー→」だったりするじゃないですか。声優さん達が、前後の文脈知らされず声あてされていたのかなぁと想像。理由は後述の「未完成品」問題。

時間:4

普通のボリューム。

その他

システム:特段不満無し。
演出:特に言及するほどのものは無し。 その他:未完成品 いや…。
序盤、未完成品ですよねこれ…。
酷かったですよ。「この箇所にこういった台詞を入れる」というカンペ文がそのままキャラの台詞に挟まって出てきた箇所が、一箇所や二箇所じゃなく何箇所も出てきましたし。あとキャラ立ち絵の挙動もおかしかった。例えば、2人のキャラの間に、突如として謎の物体が挟まって表示されるし(後から見れば、シナリオ進行上取得できるアイテムのアイコンでした)。
序盤、なんとか読めましたが、まぁ酷かったです。
こないだプレイした「暁の護衛 罪深き…」もそうでしたが、このブランド系列は発売日守るためなら未完成品だって気にせず売っちゃうってことが伝わりました。

不思議なもので、これらのバグも、序盤を通り過ぎたら全然なくなるんですけどね…。


お勧め度:4

批評空間見てびっくらこいた。点数高っ!
繰り返しになりますが、若干ファンタジー要素が加わったギャルゲという感であり、ドシリアスでもなく、ほのぼのでもない、ちょっとだけ刺激的なくらいがちょうどいいという人にはちょうどいい作品だろうとは思います。
終盤になるまでシリアス度・シビア度が増さないので、緊迫感が好きな人にはお勧めしないですし、そうでなくて美少女達に囲まれたちょっと不思議な学園生活・共同生活ものを楽しみたいという人にはお勧めなんじゃないかと思います。


気に入り度:4

幼馴染ヒロインが高い評価を受けているのを見て、上述の通りまぁそこは分かります。ただ、そうならそうと、そこのヒロインをもっと押して深めたシナリオ展開にできるだろうとひしひしと感じる。たまにあるシビアで緊迫感ある展開は大変良かったですが、そこをもっと押してほしかったというのが個人的には感じますし、ヒロイン達とのワクワク同居生活は類似作品が色々あるでしょうが、そこをやるならファンタジー要素要らんだろって思うし、男友達達との友情要素も途中からおもむろに入ってくるけどそれを途中から入れて何がしたいのかもよく分からん(それを押すならもっと最初から押せよと思う)し、あげくに美少女かと紛うような容姿・声・挙動の男友達キャラが途中から参戦してきて、シナリオに噛むのかと思ったらただの男友達として終わるし(何がしたかったんだ?)、まぁ要は、私にはどの要素も質ないし量の問題によりパンチ不足で、総花的作品だなって感想です。
実はこのライターの前作品を序盤だけプレイして投げたんですが(私、シナリオゲーで序盤投げ出しってほとんどしないんですけどね)、私とは相性が悪すぎたのかも知れないですね。(本作を終えてから、同じライターだって知りました)




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