BALDR SKY Dive1 ”Lost Memory”

(執筆:2009/11/19 2009/11/27修正)



メーカー

戯画
(バルドシリーズ、パルフェシリーズなど大ヒット作も出す一方で「戯画マイン」こと地雷ゲーも頻発させる、当たり外れの激しいブランド。)



属性

発売時期:2009年3月
ジャンル:戦闘アクション+ADV
用途:ゲーム・読み物
舞台:SF近未来
顕著な属性:軍人
プレイのきっかけ:BALDR FORCE以来卑影氏のファンだから(プレイ前の期待得点…7点)
プレイ進捗状況:全ルートクリア



テキスト:7

あらすじ:ネット技術等が高度に発達した時代。主人公「門倉甲」は、仮想空間内の戦場で突如意識を取り戻すが、自身の記憶が学園時代2年生の時点のものに戻っており、現在何が起こっているのか、学園時代に親しかった者達が現在どうなっているのか、完全に記憶が失われていた。同行していた、甲の部下と名乗るレイン少尉に導かれ、何とか戦場を離脱する甲。レインに助けられながら、甲の失われた記憶を取り戻す旅が始まる。

サイバーパンク、と呼ばれるジャンルだそうです。
ネット技術・人工知能技術・ナノテクノロジー技術が高度に発達した未来世界を舞台に、現在と自らの過去、ネットの内と外を縦横無尽に行き来しつつ物語は進行します。ADVパートの選択肢、アクションパートでの戦闘結果、シナリオ開放度によって展開も変化していき、各所に埋もれた謎が次第に明らかになっていく…といった感じのシナリオ展開です。全体的に、高クオリティをキープしていると思います。
しかし…

前後2部作になるほど気合入れて作っただけあって、設定がかなり入り組んでますね。
結果、本作のシナリオは一言で言って盛り込みすぎ。プレイヤーに消化させなくてはいけない情報があまりにも多すぎて、シナリオが溺れかけている感じ。設定を拾うだけに終始している、というほど酷いものではないですが、設定の多さがシナリオ展開の足枷となっている感は否めません。
特に序盤。舞台の説明、過去の甲や仲間達の紹介、過去のシナリオ展開、これらを交えながら主人公&プレイヤーの知識ゼロの状態で現在のシナリオを展開させていかないといけないものだから、そりゃシナリオ展開ももっさりするわっていう。ライターがその辺の問題を出来るだけ解消しようと頑張っているのは分かるのですが、やはりどうしても、シナリオ展開の求心力と説得力が薄れていたように感じました。特に序盤。
アクションパートが十分に面白いので、シナリオもそれで大分カバーされているのですが、バルドフォースプレイ時に比べて「自分が現在どういう立ち位置で、どういう対立組織のどのポジションにいる奴らと戦っているのか」が説明不足なままアクションパートに突入していることも何度かありました。(後から伏線や設定を理解した上で見直せばそれも納得できたりするのですが、その時点ではよく分からなかったり)
ただでさえ、アクションパートの操作等で新しい情報を大量に処理しなくてはいけないゲーム序盤、それに加えてこの設定の多さは、さすがに重すぎる気がします。

というわけで、せめて状況整理で頭のリソースが手一杯になったりしないよう、予習をするなり何度か自分の中で情報を整理してみるなりして、プレイヤー自身が情報に溺れないよう気をつけた方が、シナリオもより楽しめると思います。

しかしそのシナリオも、物語が進みシナリオ展開に比重が置かれるようになると、グッと求心力を増します。中でも私が本レビューで最も強調したいのが、エンディングの出来。しかもBad End。
バルフォと同様、今回もいくつもBad Endがあるのですが、そのクオリティが凄い。余韻がたまらないです。BadなのはBadなのですが、ある意味あまりにもドラマティックで美しく、生々しくもやるせない。

2部作に分かれた本バルドスカイ、本作は初動で遅れをとった感があり、前編ということもあり伏線も張られたまま終わるなど色々と不利な点が多いのですが、それでも、お話の山場の部分、物語後半およびそしてエンディングは、文句なしに評価できる。素晴らしい出来でした。
メッセージ性とかは一切無し、純粋なエンターテイメントをお楽しみ下さい。


最後に、僭越ながら私から、Dive.1を十全に楽しむため押さえておくといい点をまとめさせていただきました。
まず、この世界では、大きく3つの技術が高度に発達しています。
・ネット技術(仮想空間に意識ごとを移し、現実とほとんど変わらぬ生活が可能)
・人工知能技術(知性を持つに至ったAIによってネット技術は構築されている)
・ナノ技術(物質の分解や加工を極小規模で行なえる。治療や工作など様々な用途に用いられる)
これら3つの技術に対して、Dive.1の3ルートそれぞれでスポットが当たるようなシナリオ構造になっています。
この3つの技術は、それぞれシナリオに対してもとても重要な意味を持っており、
・ネット技術… バルドスカイワールドの根幹です。アクションパートは全てネット内のもの
・人工知能技術… バルドスカイに登場する組織は、大きくAI派・アンチAI派に分かれて対立しています。あと、ネット上に出没する謎の現象関連で重要
・ナノ技術… 「アセンブラ」という、夢の技術(?)が物語の一つのキーとなっています
という風になっています。
さらに、登場する組織が大きく6組織ほどあるので、それぞれがどの組織と仲良くてどの組織と対立しているのか、しっかり把握しておいた方がいいです。

といった感じ…。



ゲーム性:8

武器を自在に組み合わせ、自分オリジナルのコンボを作りまくりましょう。
武器の成長も人によって千差万別でしょうし、非常に自由度が高いです。この辺りは本当にさすがの一言ですね。
本作、基本的にバルドフォースと同じです。多少強化された点もありますが。特に変わったのは、空中コンボが非常に組みやすくなったことですね。
私が色々語るより、実際にプレイされる方がずっとよく飲み込めると思います。

一点だけ難点を挙げると、BALDR FORCE(以下バルフォ)もそうでしたがちょっと雑魚敵が多すぎて、コンボをきっちり決められるような状況が少ない点ですかね。もうちょっと、シュミクラムクラスのゴツい敵の少数精鋭戦の比率が高ければいいのにと思います。なんか、雑魚敵ばかり多すぎて「戦闘」感が薄れているような。ウイルスはともかくシュミクラムはもっと強く&少なくてもいいと思う。
あと、ターゲットを手動変更する機能はまだ実装されないのか。



実用性:3

うーん、そんなに短くもないですが、決して長くもないです。いわゆる「エロイッカイズツ」というやつ?Hシーンはおまけ程度ですね。
バルフォのゲンハさんは最強すぎでした。



音楽:7

例によって、なかなかいいんだけどあと一歩乗り切らない、「BGMに徹する」系BGMが多かったような…。
それでも幾つか熱い曲はありましたけどね。ここ一番での盛り上がりは、バルフォ以上かと。物語山場で流れるBGMは好きな曲多いです。
しかし私の一番のお気に入りは戦闘曲ではなく通常シーンの「Urban Surface —形骸都市—」。この雰囲気たまらん。

ボーカル曲:2曲(OP、挿入歌)



キャラ:7

主人公:門倉甲(名前変更不可),適度に正義感溢れた無難なキャラ作り。
レイン:甲の部下の電脳将校。物腰丁寧で上品ながら、甲に対し真摯に尽す。
菜ノ葉:甲の幼馴染。天才ナノ技術系科学者を両親に持つ。本人は料理が好きな家庭的な子。
千夏:学園時代の友人。明るく積極的な性格。
亜季:昔から甲のお姉さん的存在。天才プログラマーだがリアルの生活はてんで駄目。
空:学園時代の甲の恋人。曲がったことが大嫌いな直情的性格。
真:空の妹。特殊体質で、ネットの中では常人離れしたことができるが現実ではおどおどとおとなしい子。

レイン大人気ですね。分かります。分かるんですが、私はレインにはもっと違うキャラ(もうちょいクールで渋めのキャラ)を期待していたので…。
というわけで今も昔も千夏派です。
…多くの方は、Dive.1プレイすればレイン(一部千夏)を気に入るんじゃないでしょうか。多分。
これでいいのかDive.2。



声:男女

男女フルボイスです。
皆さん良かったんじゃないですかね。無難とも言えるが。
主人公うめき声がいちいちでかい…。



時間:7

かなりの時間楽しめると思います。普通に全ルート見るだけでも50時間はかかるでしょう。そしておそらく、そこまでに飽きるということは多分ないと思います。アクション、シナリオともに魅力的なので。
サバイバルモードも実装されているので、ハマれば100時間以上楽しめるかと。



その他

システム:痒いところまで手が届く作りかと。ただし注意!推奨スペックを確認しておきましょう!私の場合、最初メモリ512MBでプレイした時は地獄を見ました(ちなみにそれ以外のスペックは推奨クリアでした)
演出:やはり、バルドシリーズ独特の画面構成や演出がいいですね。バルドフォースより落ち着いたデザインになった気がします。大小本当にさまざまな演出が素敵です。



お勧め度:8

・シナリオが、どうしても足回り重く、特に序盤は説得力に欠ける
・アクションパート、雑魚敵の比率高すぎ

以上2点が、大きな不満点であり、批判ポイント。逆に言うと、それ以外は完璧と言っていいでしょう。全てが高水準で安定しています。
特にアクションパートは、業界随一と言って過言ではない。問題は2002年のバルフォの時点でそれがほぼ完成しており、あまり大きな進歩というのは確認できないことくらいでしょうか。これはバルフォがそれだけ凄かったという意味です。




気に入り度:7

バルフォのキャラ達、そしてシナリオが強烈すぎて、あの個性に比べるとどうしても綺麗&お上品(&少々小粒)にまとまってる印象が…。あと、バルフォを彷彿とさせるようなキャラやキャラ設定が多すぎるのも…。もうちょっと言うとDive.2の展開がおおよそ読めてしまうような気がするのも、(蓋を開けてみないと分からないですが)なんとも…。

など、不満点はそれなりにあります。特に立ち上がりで。
しかし、気が付いたら計12周もしておいて「楽しめませんでした」なんてハッタリ100%ですからね。
項で書いた通り、物語も中盤・終盤とテキスト進むほど面白みがまして行きましたし、特にBad Endは最強すぎた。明らかにバルフォを越えてる。お気に入りシーン・キャラが幾つかあったのもポイント。
ぜひぜひDive.2では、その才能をふんだんに盛り込んだ、私の予想展開を見事裏切ってくれるようなパワー溢れるシナリオを期待しています。
本作Dive.1は、単体で見ても評価できるところは多数あるのですが、しかしやはり立ち上がりということで評価できない面も幾つかあり、7点止まりとさせていただきます。が、Dive.2への期待度は明らかに高まりました。前編にふさわしい、素晴らしい前哨戦だったということでしょう。



(この作品については、プレイ後レビューでも触れております)



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