FifteenHounds-フィフティーン・ハウンズ-(プレイ前用)

FifteenHounds-フィフティーン・ハウンズ-

(執筆:2010/04/08, 2010/04/10微修正)

製作

MUYM
(新興の同人サークル。本作で2作目。)


属性

発売時期:2010年2月
ジャンル:ビジュアルノベル
用途:読み物
舞台:近未来の札幌およびその周辺地域
顕著な属性:
プレイのきっかけ:公式サイトのあらすじにシビれた(プレイ前の期待得点…7点)
プレイ進捗状況:CG94%解放、感覚として全テキスト量の95%以上は終わらせたと思います


テキスト:6

あらすじ:タイムマシンの発明により、未来は複数発生してしまった。どの未来が残るかを決めるため、時間の管理者である富豪の水島家は、未来人達に「鵺」という生物を殺したチームを勝者とする、とルールを定め、約束を守る人質として水島家長男である主人公を差し出す。
かくて、3つの未来から選ばれた各5名の精鋭、計15名が殺し合いの争いをする。
その抗争の中、何者かに主人公の元恋人が殺害される。主人公は3チームの間を人質として行き来しながら、犯人を見つけ出すことを誓う。

…一言で説明するなら、SFアクションサスペンス、でしょうか。
各未来の最先端技術を携えてやって来た精鋭達が殺し合いの争いをする。よって本作のメインは未来人達によるサドンデス的様相を呈した争いです。勝利条件であり目標である謎の生物"鵺"もまた極めて強力であるため、他時間軸と争いながらの鵺との戦いで、次々と脱落していく未来人。誰が生き残り、どのチームが勝者となるのか、息を呑みながら"傍観者である主人公視点で観戦"する、SFアクションとしての愉しみが一つ。
その中で主人公は、必死に元恋人を殺害した犯人を見つけるという独自の目的のため行動します。口コミで情報収集をするのですが、未来人達は何故か互いに矛盾する証言をします。誰が正しく、誰が嘘を言っているのか。それを突き止めていく中、張り巡らされた伏線が次第に明らかになっていく…という、SFサスペンスとしての愉しみが一つ。
本作は、この両輪で成り立つ、純粋なエンターテイメントものです。
二重の要素それぞれが全く先が読めず、長い物語ながら常に一定以上の緊迫感があります。この辺りこそが本作の肝で、かなり良く出来ていると言えます。

が、一方で、粗探しにこれほど苦労しない作品というのも珍しい。不安定なテキスト、共感/シンクロできない主人公、ぶっちゃけ主人公にとって重大事でない勝敗の行方、ヲタク的時事ネタ盛り込みまくりなギャグ、ツッコミどころ満載のキャラ・舞台・世界観設定…
順番に書いていきますが、まずテキスト、15人の未来人がわらわらと登場する序盤が割と酷かったです。呼び名も安定しないし何が起こっているのかもよく分からない。ただこの問題は序盤以降解消されており、概ね問題ないレベルでした。少々場面の切り替わりが急だと感じることが多かったくらいですか。
で、次の主人公問題。これは大きいと思いますね…。養育環境が酷いせい、ということなのでしょうが基本的にパッとしません。行動的で物怖じしないのは立派ですが、可愛げというものが全く無く、自分がやると決めたらそれを曲げないのも立派なのですが、「それにしてももう少し頭使え、状況を把握しろ」と思うことしきり。主人公は主人公で独自の行動指針を持って動きますが、その辺はあくまでおまけ、期待してはいけません。闘いを見届ける傍観者的存在でしかないと思っておいた方がいいです。
そして物語のメインとなる未来人達の死闘ですが、どの未来軸にも肩入れはないため、 闘いのシーンにも今ひとつ熱が入りきらない。応援チーム無しに野球観戦する感じ、でしょうか。選手達の立ち回りや美技に魅せられる、くらいしか見所がない。
ギャグについては、打率は低めとは言え何度か笑ったのでまぁいいでしょう。ただ覚悟はしておいた方がいいですよと事前に申しておきます。
そして最後、設定について。序盤が山です。序盤がかなりしんどいです。新キャラはあれよあれという間にわらわらでてきて個体識別にこちらはてんやわんやになるわ、その間になにやら重要イベントがどんどん進んでいくわ、状況の説明もどっと出てきて理解もおっつかないわ、などなど…。序盤だけはリテイク求めたい。
そしてなんとか消化した設定が、これまた突っ込みどころというか疑問というか、とにかく釈然としないのですよ。が、これは(私が現在記憶している限りでは)後々でそれぞれ説明がされます。
以上より、序盤のうちは「そういうものだ」「なんとなくそういう感じなのか」と我慢・納得してプレイを続ける必要があります。元々、プレイヤーをして推理させるようなタイプのものではありませんので、その辺は問題ないと思います。あと、SFSFとは申しておりますが、リアリティについてはあまり配慮してないSFです。色々と根幹部分は「突っ込んだら負け」的なポイントも多いです。未来人達が各人持っている秘密兵器も、真面目に突っ込んでは駄目です。ドラえもんの道具みたいに、「そういうものだ」と受け入れましょう。ドラえもんはSF!

…全体的に、シビアな視線で見れば突っ込みどころは割と色々あるので、いちいち細かいところ気にしないでサクサクプレイする、というのが全体的に望まれるプレイスタイルでしょう。逆に言うとそういうのに向かない人にはお勧めできません。

…と、ボロクソに書いてきましたが。
これだけけなしておいてなお、本作を一言で評価するなら「先の読めない展開が魅力的だった」と、こうなるのです。
大小の粗は無数にあるのですが、そして逆に際立った高評価ポイントというのにも乏しいのですが、それでも、ライターの「先が読めない展開」構築技術は素晴らしい。
「あらすじ」に書いた通り、基本設定からして割と奇抜かつ複雑な物語ですが、シナリオもそれに負けないくらい奇抜です。奇抜といっても超展開というわけではなく、与えられた設定の中で無理無くシナリオが展開します。しかも、その展開の仕方がほとんど読めない。ライターが、物語をどう運び、どこに着地させるのか、さっぱり予想がつかない。
はっきり申しまして、本作テキストの要所要所を見れば、それぞれ割と重症な弱点・問題点を抱えています。しかし、それらを全てまるごと力押しで押し切り「なおかつ魅力的な作品」にするだけのパワーを持ったシナリオです。

高尚さのかけらもなく、メッセージ性などといったものも無し。ただただプレイヤーを翻弄し、楽しませるだけの純粋な娯楽もの。しかし本作に潜在するエンターテイメント性というのものは、なかなかたいしたものだと、素直に感心いたしました。


ゲーム性:3

選択肢が非常に多いです。即死選択肢も有り。
こういう、緊迫したシナリオとの親和性はとても高いですね。
が、それにしても少々やりすぎな気もします。システムの脆弱性も相合わさって、CGコンプ、全エンド到達が割と面倒。
大まかにシナリオを追う分にはそう問題ないのですが、細部まで拘ると大変ですね。
…けれど、大まかにシナリオを追うだけでは非常に消化不良感を感じ、他の個別エンドも見たくなるのですよ本作は!
私は適当なところで投げ出しましたが、正直胸がモヤモヤします。そう、間違いなく恋です。

実用性:2

全年齢対象作品です。

が、割と過激な発言、シーン、CGも、有ります。
ただし、繰り返しますが全年齢対象作品です。

音楽:8

音楽がいい!本作で唯一、手放しに褒められるのが音楽です!
BGMは偉大ですね。シナリオの面白さをかなり底上げしてます。これは間違いない。サントラが欲しいレベル。曲数がなんと44曲!そして私の好きな曲多数。
特にアクションシーンを彩る多彩なBGMは、アクションものでもある本作にとって極めて強力な援護射撃となったでしょう。
割と泥臭い感じの、とにかくキャッチーかつムーディな直球勝負の曲ばかりですが、いや、だからこそ私には非常に好印象。ちなみに私は耳音痴。

ボーカル曲:2曲

キャラ:6

主人公:「蓮梧」(名前変更不可),テキスト項で触れた通り

エロゲではないので、メインヒロイン的なのはいません。その代わり、サブヒロイン多数。
キャラ設定については男女ともによく練られており、最初のうちこそそのトリッキーさにやや引いてしまうこともあるでしょうが、色々なものに慣れてくる物語中盤以降は、ほとんど皆が魅力的に見えてきます。男女ともに。
きっと、お気に入りキャラの一人や二人はできるのではないでしょうか。
キャラクターの魅力が物語の魅力に直結するというのは嘘でないですね。本作は、アクション&サスペンスとしても上々ですが、それを支えるキャラ達の魅力を忘れてはいけないでしょう。
ただ、キャラ萌え的な何かとは少々方向が違います。


声:無

声一切無し。SEだけです。


時間:5

このお値段でこのボリューム…。
つくづく、同人ゲーというのは当たり外れが激しいものだと痛感します。ハズレは目も当てられない状況ですが、当たりになると商業ゲーも真っ青。本作のボリュームはまさにこの「真っ青」状態。最低でもフルプライス並のボリュームが有ります。
ここで書くのはちょっと違うかも知れませんが、何よりも、それだけのボリュームを持ちながら途中の中だるみがほとんど発生しない。ずっと同じようなことをやっているので食傷気味にはなるとはいえ、これだけのボリュームで中だるみ無しというのは、本当に評価できる部分です。

その他

システム:かなり脆弱です。プレイ前に修正パッチ入れましょう。入れても改善されない箇所多し。例えばメッセージスキップの遅さ。かなり遅いです。具体的に言うと、画面効果もSEもスキップしませんできません。ユーザビリティも低いです。大小のバグがあります。私がプレイした限り、一つのエンドではなぜかエンディング中の特定箇所で必ずシステムがフリーズしたためエンドが確認できませんでした。バグじゃなくて演出でした!教えて下さった方、ありがとうございます

演出:演出というか…テキスト項でも触れましたが、もうちょっと、各キャラについてプレイヤーが理解しやすいように、キャラ一覧がどこでも確認できるとか、そういう小技が効いてると良かったのになぁと思いました。とりあえず、序盤プレイ中は公式サイトが必携アイテムです。(公式サイトといえば、キャラ一覧で各キャラの名前分かるようになってればいいのになぁ…)
あと、効果音がちょっとしょぼい感じのも…。まぁこれは仕方ないか。
が。その、しょぼいのもまざってる効果音の使い方は、バッチリでした。そしてCGカットイン。アクションものということで、最低限の演出方法でしかないのですが、その最低限の中では優秀な働き。テキストと演出の組み合わせ方は絶妙でした。
そしてなにより、これは忘れてはいけない、背景画像が非常に多かったのは大変好印象でした。デジカメ写真の加工なので数を揃えられる、という利点はあるでしょうが、めまぐるしく変わっていく場面に合わせて、次から次に新背景が登場していたのは、作品世界の広がりを感じさせる良いコストだったのではないでしょうか。私みたいに、エロゲプレイ中も「ああ、ここでこの背景CG使い回してコスト削減してるのね…」とか思ってしまう身としては、このうなるほど豊富な背景には脱帽の一言でした。

CG:…などなど、効果音や背景CGについてべた褒めした後ですが、なぜ作画崩壊するのだ一部の一枚絵CG…。
絵師さんが何人もいるということでやむを得ないという面もあるのでしょうが、そしてほとんどの場面では問題ないのですが、一部CGに、「これはないぜ…」ってのが混じってたのが残念。
カットインの方は文句無しなのですけどね。一枚絵になると、時々…。

お勧め度:7

無数の粗を抱え込みつつも、それでも「先の読めない展開」という主力、良BGM、圧倒的ボリュームで全てをねじ伏せる、正真正銘の力作。
緊迫感のある先の読めない展開、というのがお好きな方には超お勧めです。ただ、カッコいい主人公にシンクロしたい人、カタルシスに酔いたい人、最後には何もかもが解明・解決してすっきりじゃないと嫌な人、テキスト項でも書きましたが細かい設定の粗が気になる人、そういう人にはお勧めできません。不条理展開が苦手な人にも。

…ただ…
そうは言っても、このお値段でこのボリューム、粗も多いとは言えこのクオリティ。
お世辞にも一流作品とは言えないけれど、かなり高位のB級作品(ある意味この上もないB級作品)であるのは間違いないと思いますよ。
今なら、某ひぐらしよろしく最初のシナリオ全編が体験版で公開中ですので、試しに触れてみてもいいかもです。

気に入り度:6

どうにもこうにも、最近とみにパッとしないエロゲ業界の作品群を見ていると、本作のような若いパワーに溢れた作品の出てくる同人業界を羨んでしまいます。小さく無難にまとまるのではなく、欠点も難点も内にはらみながらも個性と勢いとパワーのある作品、そういうのをこそエロゲ業界でも出してくれればいいなと、思ってしまうのは、遥かに時代遅れの叶わぬ夢なのでしょうか。
…言うまでもないですが、本作がまさにそれ。作品から、「俺達の作品でプレイヤーを楽しませてやる」という気概がふつふつと感じられました。
私としては、メッセージ性重視でテキスト系エロゲやってるところがあるので、その辺一切無しな辺りが少々残念、あと、もうちょっと主人公が利口に立ちまわっても良かったんじゃないかなと思った点も微妙に減点、ですね。
あと、私とライターさんの思考回路がかけ離れているのでしょうか。先が全く読めないというメリットもありましたが、何でここでこのキャラがこうするのか分からない、あるいはもっとこうすればいいと思うことをなぜしない、など、シナリオ力で押し切られつつも、心の隅で常に小さな疑問符が出ていた感じがします。
なんというか… 「そういうもの」と言ってしまえばそれまでなのですが、キャラ達の思考にキレを感じず、代わりにライターの人物像が透けて見えるような感じがしたのも、少々の減点ポイントでしたね。これで心理戦的なコクもプラスされていれば文句なく素晴らしかったのですが。

などなど、色々と思うところもありますが、それでも物語を進行し、プレイヤーの注意を釘付けにするシナリオ、それを支える演出や音楽、CG、どれもたいしたものでした。
色々と煮え切らないところもあるけれど、総じて面白かった!音楽も良かったしキャラも良かった!という作品でした。今ひとつ煮え切らないレビューですみません。
また記憶が曖昧になってきた頃に再プレイしたいですね。

(この作品については、プレイ後レビューでも触れております。)

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